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第1部   科学技術発展の展望
第3章  社会開発における科学技術への期待
4  社会開発基盤の強化と技術開発
(4)  教育技術の向上


社会・経済の発展や科学技術のめざましい進展に伴つて,新しい知識や情報量は著しく増大している。このような時代において,すべての人がその適性に応じた職業につき,その能力を有効に発揮することができるようにするためには,従来の教育技術をもつてしては不十分な面も多いので,これに対応する新しい教育技術の開発が強く要請されている。

近年,とくにスライド,テレビ,テープレコーダ等の視聴覚機器の発展に伴い,これが教育面に積極的にとり入れられ,教育の効率化に大きな役割を果たしている。

また,  一方では大脳生理学,行動心理学等に基礎をおいた教育技術として,プログラム学習方式の開発がなされ,さらに最近ではサイバネティックス理論,人間工学および電子計算機をはじめとした電子技術の進歩とあいまつて,教育方式の自動化,個別化をめざしたティーチングマシンを使用する教育技術が発達してきた。

これらの新しい教育技術の開発は,教育・訓練の迅速性,正確性および思考力の培養の観点から,企業内教育および学校教育にきわめて有効とされ,アメリカ,ソ連等においては,早くからこれらの研究開発が行なわれ,その進歩は著しく,わが国においても,これらの技術の開発によせる期待は非常に大きいものがある。

プログラム学習およびティーチングマシンに関する新しい教育技術の研究開発は,わが国においては,これまで小規模ながら大学および研究機関等で行なわれていたが,昭和40年度から科学技術庁の「特別研究促進調整費」により,科学技術者および技能者に対する教育訓練技術の高度化を目的として計画的な研究開発が行なわれたこともあつて,その一部については,すでに実用化の段階にまで達し,この新しい方式の展開については,次第に産業内の教育および学校教育の面において,とり入れられつつある。また,引き続いて,昭和43年度から,これまでの研究の成果を基盤として電子計算機技術を利用する高度な教育訓練システムC.A.I.(Computer Assisted Instruction)の研究開発が3年計画で実施されているが,この成果については,各方面から非常に期待されている。

しかし,これらを広く適用していくためには,これらの汎用化を目的とした技術の研究開発を行なう必要がある。

また,わが国においては,これら教育技術の研究開発はまだ小規模であり,従来の方式に代わる高能率な新しい教育訓練技術を確立していくためには,さらに広範囲にわたつて基礎的ならびに応用に関する研究を一層促進する必要がある。

以下,最近,飛躍的な発展をとげつつあり,研究開発が要請されている課題として,プログラム学習方式の確立,ティーチングマシン等の開発およびC.A.I.システムの確立について述べる。


(1) プログラム学習方式の確立

プログラム学習は,学習内容を学習理論に基づいていくつかのフレームに小さく分割し,体系的に配列し学習させる方式であり,学習者は,自己の能力に応じて学習目標に到達できるものである。この学習理論は大脳生理学的研究,行動心理学的研究などの研究成果を取り入れ,学習方式を効果的に構成したものである。今後,プログラムテキストの作成については,フレームの大きさ,フレームの配列の方法(単線型,枝分れ型など),教材の内容(知識を主体としたもの,技術訓練を主体としたもの)などについて,いくつかのパターンを設定し,プログラム学習の標準的手法の研究など広範囲にわたる研究が必要である。


(2) ティーチングマシン等の開発

ティーチングマシンは,プログラム学習を能率的,かつ効果的に進めるための手段であつて,これは個人用と集団用のものに類別される。個人用ティーチングマシンに関する研究としては,プログラム学習の効率化とあいまつて,学習意欲がもてるように操作が簡便で人間工学的見地を入れて設計され,しかも低廉な機器を開発することが要請されている。また,集団用のものについては,電子計算機を利用する教育訓練システム(CAIシステム)の研究が,とくに重要視されている。

プログラム学習方式による技術,技能指導のための教育訓練用シミュレータについては,人間一機械システムにおけるオペレータの教育訓練用シミュレータの研究が,特定分野において行なわれているが,最近の著しい技術革新によつて,とくに産業界の生産システムが高度化しつつあるので,広い分野にも適用できる教育訓練用シミュレータの開発の必要性が増大している。


(3) C.A.I.(Computer Assisted Instruction)システムの確立

C.A.I.システムは,プログラム学習方式によつて電子計算機を用いて,多人数を同時に個別的に教える方式から,学習者の能力に応じて学習内容を提示する自動プログラミング方式に至る多くのものがある。このようなシステムは,すでにアメリカでは実用化の段階にあるといわれているが,わが国におけるC.A.I.システムの研究開発は,その緒についたところであり,目下鋭意努力されている。

現在行なわれている研究には,「学習プログラムをコンピュータ用に再構成する方法に関する研究」,「学習者とコンピュータのコミュニケーションシステムに関する研究」,「学習用コンピュータ言語に関する研究」などがあり,研究の対象とする教育訓練システムは,知識付与を目的とする知的理解行動から,技術,技能の付与としてオートメーションに対応する行動,そして自動車のような高速運転などの環境変化の著しいものに即応できる反射行動を育成するシステムまでも対象としているので,これらの研究成果は,今後の技術革新に対応できる人材能力の開発に大きく貢献しよう。

以上のような研究開発の成果は,産業界における教育訓練に寄与するばかりでなく,学校教育にも非常に効率的に用いられる段階に至つている。現在,文部省中央教育審議会において,高等教育の改革の問題とあいまつて,教育方法の改善についても検討が行なわれているが指導形態によつては,これまでに述べたような教育工学的な方法を積極的に活用すべきであるといわれている。今日においては,技術革新と同様,教育革新も世界的なすう勢となつており,わが国においても今後の教育技術の向上のため,この方面の研究開発は,より一層積極的に推進されなければならない。

また,最近の通信技術の高度化に伴い,テレビ,ラジオその他の通信技術を十分に活用し,教育の広域化を目的とした効率的な,新しい教育訓練システムの確立も各方面から期待され,その実現が強く望まれている。

以上のように,社会開発基盤を強化していく上で必要な技術的課題は山積しており,その多くは,公共性が強く,かつ広汎な分野にまたがるものであるので,民間,学界の協力のもとに国が主体となつて推進することが肝要であろう。


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