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第1部   科学技術発展の展望
第3章  社会開発における科学技術への期待
4  社会開発基盤の強化と技術開発
(1)  交通輸送の高度化


経済の高度成長に伴い,社会・経済の活動は活発化し,輸送需要は大巾に増大し,内外の輸送量は,近年著しい伸びを示している。 第1-38図 は,昭和34年度から昭和43年度までの国内旅客人キロおよび貨物トンキロと国民総生産との関係を表わしたものである。

第1-38図 国民総生産と国内旅客人キロ,国内貨物トンキロとの関係

交通輸送技術の発達により,社会・経済の活動の場は広域化し,一日生活圏や一日行動圏は拡大され,大都市やメガロポリスの形成を可能とした。さらに,今後増大する人的,物的流通の迅速化,円滑化を図り,狭い国土を有効に活用し,わが国の産業経済の発展を支えていくためには,全国的に航空機,鉄道,自動車などによる高速交通輸送体系を確立するとともに,これらを有機的に結合させることによつて,各地域間の一層の緊密化を図ることが要請されている。

一方,急速に進展する都市化に対処して,過密化する大都市において都市の機能を最大限に発揮させるためには,都市機能の純化と分化を図り,都市機能を合理的に配置し,これらを有機的に結合させることが重要であり,このため大量高速輸送網の整備を強力に推進することが要請されている。

また,経済の国際化により,国際交流もますます活発化し,人的,物的流通の増大が予想されるため,国際間の交通輸送の合理的な整備を図り,これに対処していくことが望まれる。

将来の輸送需要の見通しをみると,昭和60年度の輸送需要は,昭和40年度に比べて,総旅客人キロが2.8倍ないし3.5倍,総貨物トンキロで2.7倍ないし3.2倍と,それぞれ大幅に増加することが予想されている。

将来このように増大する輸送需要量に対処していくためには,科学技術の果たす役割はきわめて大きく,なかでも,高速化,大量化のための技術開発を推進していくことが必要であろう。


(1) 技術の動向

最近の交通輸送における技術発展の傾向は,高速化と大量化である。高速化は,活動の効率化と時間価値の増大を図ることが主な目的であり,大量化は大量輸送による輸送コストの低減を図ることにある。

このような技術発展の傾向についてみてみると,航空機では第1-39図にみると,おり,ここ10年余で高速化,大量化が急速に進展し,昭和45年には,巡航速度マツハ0.86,最大座席数490席を有するB-747が就航するに至つた。

鉄道では,前掲 第1-11図 にみるとおり,大幅に高速化が図られるとともに,列車編成両数の増加などにより,大容量化されてきた。

また,船舶についても同様な傾向がみられるが,とくに大容量化が顕著であり,タンカーでは,昭和46年に37万2,400重量トンの超大型タンカーが建造される予定である。

今後,さらに各分野において高速化,大量化の傾向は進展することが予想される。

第1-39図 航空機の高速化と大型化の傾向


(2) 技術的課題

次に,今後,解決しなければならない技術的課題について概観する。

航空機では,増大する国内輸送需要に対処するため,全国に空港ネットワークを張りめぐらさなければならないが,国土の狭隘なわが国では,空港の拡張あるいは大規模な空港の新設には困難が伴う。

そこで,滑走距離が短く,かつ騒音の少ないYS-11より大型の中短距離用ジェット輸送機の開発を行なう必要がある。さらに,わが国の国情に適した輸送機開発のための高性能のファン・ジェット・エンジンの開発が必要である。

また,滑走路のまつたくいらない垂直離陸は航空機の開発の一つの目標となつており,郊外の空港と都心部などとの連絡の一層の迅速化を図るためにも,現在のヘリコプターより大量輸送の可能な経済性のある垂直離陸機(VTOL機)の開発が必要となろう。

鉄道では,現在の新幹線の2倍に近い高速化を可能とする超高速鉄道の開発が必要である。

しかし,現在の駆動方式で得られる最高速度は,車両や線路の条件によつて違うが,大体,300〜350 km/hが限度と考えられている。これ以上の高速を得るには粘着力に頼らない駆動方式を採用しなければならない。この非粘着駆動としては,リニア・モータ,プロペラ,ジェットなどが考えられるが,このうちリニア・モータが最も有望視されておりその開発が必要となる (第1-40図参照)

第1-40図 速度に対する車両の支持方式,駆動方式および集電方式の適応範囲

このほか,350km/h以上の超高速鉄道を開発するためには,磁気浮上方式などの車体支持方式の研究,ガイド・ウエイ,集電方式など各種の問題点を解決しなければならない。

さらに,海上輸送においては,船舶の専用化が進み,タンカー,鉱石船,自動車運搬船,コンテナ船などの高速化,大容量化が進むため,原子力の動力利用,大出力機関の開発等の高速超大型船舶技術の開発が必要となる。また航空機,船舶などの航行の安全性の向上を期するため,航行衛星の開発や高度の電子航法技術の開発などもあわせて推進する必要があろう。

以上,各分野における交通輸送技術の開発すべき主な技術的課題について述べたが,交通輸送については,各分野ごとに安全かつ経済的な形態に整備することはもとより,交通輸送体系全体を一つのシステムとしてとらえて,それぞれの交通輸送機関を有機的に結合させた最も合理的な交通輸送体系を確立することが主要な課題となろう。


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