ここからサイトの主なメニューです
前(節)へ  次(節)へ
第1部   科学技術発展の展望
第3章  社会開発における科学技術への期待
3  国民生活の向上と技術開発
(3)  住生活の改善


国民生活の調和ある発展が強く要請されている今日,とりわけ生活を構成する衣,食,住三大要素のうち最も遅れている住生活について,その充実を図ることは国民の最も要望するところである。建設省調べ「住宅需要実態調査」によると,昭和35年において住宅に何らかの意味で不満をもつ世帯は全体の約36%であつたが,昭和41年の調査では住宅難世帯はむしろ減少しているとみられるにもかかわらず約44%が不満をもつに至つており,むしろ増大している状態にある。このことは,居住水準の不均衡な立遅れが国民の意識面において漸次顕在化してきていることを示すものといえよう。これらの住宅の供給に関しては,木材,骨材等の天然材料価格の上昇,労務費の値上げによる建築コストの上昇,また都市周辺における地価の高騰化等多くの問題があり,これらが,国民の良好な住宅の取得,住生活環境の改善を困難にしている。

さらに,今後国民生活の向上とともに,住宅設備の充実への要請もますます増大するであろう。

住宅問題の解決には,住宅供給を容易にするため住宅の量産化を図るとともに,都市全体のシステムと環境の整備を実現するための調査研究が進められていかなければならない。コスト低減化のための住宅の量産化は,住宅の特殊性を考慮すると,他の製品の量産化より技術的な困難さが大きい。

このため,需要の動向を適切に把握し,住宅を構成する材料設備などについて工場生産の前提となる標準化の推進,住宅性能の標準化の推進を行ない,将来の技術開発の方向を示すことが必要である。

以下,当面研究開発が要請されており,解決を迫られている技術的課題について述べる。


(1) 中高層住宅の建設工法の開発

東京,大阪,名古屋等を中心とする大都市圏においては,地価の高騰がますます顕著にあらわれてきている。このため,土地の高度利用と職住近接住宅の低廉大量供給の観点から,簡易化された中高層住宅建設技術の開発が必要である。プレハブ方式の高層住宅生産等の技術の開発と,工法の確立により,高層住宅を量産化し,また高層住宅向けの防火,空調等の設備の生産技術が開発されてはじめてコスト低下がもたらされるものであり,これらの技術革新が急がれる。

また,都市地域における住宅建設は,敷地条件,道路事情,都市計画規制等が,その立地により非常に異なるので,画一的な工法を採用することは困難である。そこで,既成市街地の住宅建設に関係ある諸条件を整理し,どのような場合にどのような工法が最も合理的であるかを技術的,経済的に検討するため,早急に研究開発を実施することが必要である。


(2) 住宅用部品の開発およびユニット化

住宅の量産化の前提は,部品段階における工場生産にあり,とくに個別的な需要に対応する部品の開発および標準化が重要な課題である。現状では,住宅建設に必要な労務や天然資材の確保は,次第にむずかしくなる一方であり,このため,高性能住宅資材および部品の開発が労務や天然資材を節減する見地から必要であり,さらに,住宅工業生産を促進し,住宅建設コストの低廉化のためにも有益である。

また,台所,浴室,便所などをユニット化し,現場で居室と組立て接合する研究が必要である。これらのユニットは,住宅の核ともなる部分であり,住宅を一つのシステムとして開発する必要がある。また,ユニット化により部品の大型化,重量化が進むので,住宅建設用クレーン等の機械や建設技術の開発も進める必要がある。

さらに,このようなユニット化を推進するにあたつては,工場生産の前提となる標準化を推進し,適正な品質,寸法を日本工業規格(JIS)として定めることが必要とされており,このための調査研究を進めることが要請されている。

また,生産技術面においても,すでに自動車産業で採用されているようなオートメーション方式や電子計算機による管理技術を取り入れ,将来住宅産業がシステム産業として発展するよう技術開発を進めていく必要がある。

もちろん,これらの技術開発にあたつては,単に住宅不足解消のため,量的に拡大すれば十分というものではなく,個人のし好,安全性,居住性を十分考慮したうえで進めていくことが重要である。

このほか,都市における住生活環境は,住宅をとりまく道路,上下水道,緑地帯等の公共施設や,商店施設等のありかたと密接な関係があり,これらが,住生活にとつて最も効率の良いシステムとして構成されることが重要であり,土地の高度利用とともに,これらの面を重視した都市計画技術の確立が期待される。

このように,国民の日常生活の向上のためには,科学技術の推進を図らなければならない。

健康の保持増進,食生活,住生活は,われわれ日常生活の基盤として最も重要なものであり,国が主体となつて民間,大学の協力のもとに研究開発を推進することが肝要である。とくに,医療技術面においては,大学における基礎研究を十分活用する方向で,国および地方公共団体の研究体制を充実することが望まれる。


前(節)へ  次(節)へ

ページの先頭へ   文部科学省ホームページのトップへ