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第1部   科学技術発展の展望
第3章  社会開発における科学技術への期待
3  国民生活の向上と技術開発
(2)  食生活の向上


近年,所得の増大,生活構造の変化等に伴つて,食生活においても,穀類摂取量の漸減,動物性食品,油脂類および青果物の摂取量の増加等によつて,国民の栄養水準は徐々に改善されつつある。

また,このような食糧消費の高度化は,食品の加工面に大きな変化をもたらし,今日,食品の品質保持や流通システムの整備が重要となつてきている。

他方,最近,残留農薬,微生物,その他有害物質等による食物の汚染が大きな社会問題となつている。このため,今後さらに食生活の多様化,栄養水準の向上,低廉で高品質な食品の供給の面において科学技術に対する期待は一層大きくなるものと予想され,安全性を十分考慮して研究開発が進められなければならない。ここでは当面とくに研究の推進が望まれている重点的課題として,食品の保存加工技術,食品の安全性に関する技術および食糧資源に関する技術開発について述べる。


(1) 食品の保存加工技術

食品の保存および加工は,生活やし好の変化に応じて,年を追うごとに改良されており,塩漬,乾燥など従来の一般的な食品保存方法に加えて,栄養価,風味等をそのまま保持する技術や,インスタント食品のように調理に時間を費さないですむような食品をつくる技術が必要となつてきた。このため,真空凍結乾燥や,冷凍による技術および放射線照射による保存技術の開発に期待がもたれている。

真空凍結乾燥法により,製造された食品は,これに水を加えるだけで,もとの新鮮な状態とほぼ同じような状態にかえり,長期間保存してもその風味を保つことができる利点を有している。この技術は,すでに一部の食品の加工に利用されているが,わが国においては,まだ食生活の向上に寄与しうるほど,実用化されてはいない。しかし,みかん等の果汁については,この方式による連続式大量生産技術の開発が期待されている。

冷蔵,冷凍に関する技術は,昭和40年度から,科学技術庁および関係各省において行なわれてきたいわゆるコールドチェーンに関する調査研究によつて促進されてきた。この技術については,経済性の問題が解決されることによつて大きく伸びていくことが期待されるので,今後の積極的な開発が望まれる。

放射線照射による食品の殺菌および農作物の発芽抑制に関する研究は,諸外国においても広く行なわれており,その効果は,かなり期待できるものといわれている。しかしながら,その実用化については,今後照射による成分の変化とその人体に及ぼす影響が十分研究されなければならない問題である。

このほか保存技術の1分野としてプラスチックフイルム等,包装材料の開発とその理化学的性質,人体に対する安全性および内容食品の成分変化に関する研究も必要とされている。


(2) 食品の安全性に関する技術

食品の安全性に関しては,近年FAO(国連食糧農業機構)およびWHOを中心に検討が行なわれている。とくに,昭和37年から発足した食品規格の国際統一の計画は,わが国を含む主要諸外国の協力のもとで食品添加物,残留農薬等の安全性について,種々の角度から検討を進めており,その重要性が著しく増大してきている。

これら安全性に寄与する科学技術としては,まず,食品による危害防止に関して,1)食品添加物,食品残留農薬等化学物質に関する毒性の調査研究,2)食品添加物,飼料中の抗生物質,農薬等の安全に関する研究,3)食品中の重金属等の微量有害物質の許容限度に関する研究,4)微生物による食中毒の防止に関する研究を重点的に推進する必要がある。

また,食品の安全性評価の基盤として,分析技術,とくに,微量物質の分析技術の開発が重要である。最近の化学分析は,分析機器の発達により飛躍的な発展を逐げ,複雑な組成をもつた食品についても分析が可能となつているがまだ十分とはいえない場合がある。さらに,食品中の残留農薬や抗生物質など安全性に直接関係ある問題が年々多く発生してきているので,なお高精度な分析技術の発展が望まれている。


(3) 食糧資源に関する技術開発

将来,食品の需要は,一層量的に増大し,質的に向上する傾向にあるが,食糧に関して近年価格の上昇が著しい状勢にあり,安価でしかも高品質な食品を供給するため,食糧資源の有効利用と新しい資源の開発が要望されるようになつている。なかでも,たんぱく質資源の確保ということについて,未利用資源の開発技術,資源の効率的利用技術などの開発が必要とされている。

その一つとして,石油から得られるノルマルーパラフィンを利用して増殖する微生物は,将来のたんぱく質資源として注目されている。ここで得られる高たんぱく質含有微生物(乾燥酵母)は,家畜,魚類等の飼料としての利用に有用とされているが,しかし,原料石油中に含まれる有害物質による危害の可能性が予測されるため,その利用にあたつては,とくに安全性の面からの十分な検討が必要とされている。


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