ここからサイトの主なメニューです
前(節)へ  次(節)へ
第1部   科学技術発展の展望
第3章  社会開発における科学技術への期待
2  生活環境の改善と技術開発
(2)  交通事故対策


交通事故防止は,生活環境整備の一つとして政府の重要政策になつているが,モータリーゼーションの進展,交通の過密化など交通輸送事情の悪化に伴い,交通事故による死傷者数は急増しており,きわめて憂慮すべき状態にある。

とくに,道路交通事故は, 第1-7表 に示すように,交通事故の大半を占め,自動車保有台数の急激な増加に伴つて,死傷者数も急増している (第1-32図参照)

第1-7表 輸送機関別交通事故発生状況(昭和43年)

第1-32図 自動車保有台数および交通事故死傷者数の推移

昭和44年における交通事故による死傷者は,967,800人に達したが,これは,国民100人に対し,1人という恐るべき数字であり,交通戦争といわれているほど問題が深刻化している現在,これら防止対策の確立は,焦眉の急といわなければならない。

また,最近は,交通が過密化しているとともに,交通手段が高速化しているために,運転者の注意に期待する等の安易な対策では事故防止に万全を期することはできない。

したがつて,運転者の能力の機械,装置などによる補完,または運転者の能力を有効に発揮するような環境の整備などが必要である。そして,これらを可能にする科学技術の推進が強く要望されている。

以下,自動車事故防止対策を主体に,交通事故防止対策の現状および問題点について,技術の側面から眺めてみることにする。

自動車事故防止対策は,人に対する対策,道路交通対策,車両対策に大別することができる。

これら事故防止対策は,本来科学的な基盤に立脚することが肝要であるが,必ずしも資料が十分でないため,科学的な防止対策の推進という面で不都合をきたしているものが見受けられ,事故防止に関する科学技術の振興が切望されている。すなわち,

1) 人に対する対策では,運転者対策と被害者の救急対策の確立に必要な科学技術の推進が重要であり,前者については,運転不適格者の精神医学的診断技術の確立,アルコール,向精神薬などによる運転機能障害の究明,事故ひん発者の早期発見法の確立,高速運転に合致したトレーニングマシンの開発などである。 後者については,交通事故の後遺症に及ぼす影響(とくに,むち打ち症)の解明と事故後の身体機能障害を軽減するための救急医療法の確立などである。
2) 道路交通対策では,交通渋滞の緩和対策の確立,道路交通環境の改善などに必要な科学技術の推進が重要課題となつている。 前者については,交通渋滞の自動検知法の確立,交通渋滞に即した信号制御用プログラムの開発などである。 後者については,高速道路における道路交通環境が運転者に及ぼす影響の解明,道路交通環境の表示方式の確立,防護さく,照明装置等道路安全施設の適正評価,道路の走行性向上のための試験調査などである。
3) 車両対策では,事故予防対策,事故時被害軽減対策,事故の処理対策などがあげられる。

これらの安全対策については,道路運送車両の安全基準の設定などによつて充実されつつあるが,さらに歩行者,乗員の安全性を確保するため,操作ミスを防止する設計条件の究明,ブレーキ,タイヤ等自動車部品の安全性の追求,空間の安全構造,事故後のドア開き構造等事故時の被害軽減防止装置の開発,自動運転方式,車体の形態改善などについて積極的な研究開発の推進が望まれている。

このほか,以上の対策を効果的に推進するために必要なものとしては,交通事故の発生実態および被害実態の解析,交通実態,交通環境および安全施設等,事故発生に関与する要因の分析など交通事故に関する調査分析が必要とされている。

また,自動車事故防止以外の交通事故防止分野においても,一層の推進が要請されている課題がある。すなわち,航空管制用方向探知機の開発,大型タンカー等大型船の安全基準に関する研究などである。

以上に述べたように,交通事故防止対策,とくに自動車交通事故防止対策については,緒についたばかりといつても過言ではなく,今後,自動車の増加,高速道路網の整備等に伴つて,従来の形態の事故に加えて,車両相互間等の事故の増加が予想され,科学的な事故防止のための対策の確立と,それに必要な技術の開発に積極的に取り組むことが肝要であろう。


前(節)へ  次(節)へ

ページの先頭へ   文部科学省ホームページのトップへ