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第1部   科学技術発展の展望
第3章  社会開発における科学技術への期待
1  社会開発と技術革新


前章でも述べたとおり,科学技術の進展は社会・経済を大きく変貌させ,国民生活の改善と向上を図るとともに,生活を合理化し,豊かにする面で寄与してきたことは明らかである。

しかし,ともすれば,今日まで,製品性能の向上,生産工程の合理化,産業構造の高度化など産業の発展という面を優先した技術の普及,科学技術の振興に重点が置かれざるを得なかつた。その結果,当然のこととはいえ,社会・経済の発展に伴うマイナス面を予測し,これを解決するための研究開発は立ち遅れ,社会開発の面で科学技術が十分に活用され,寄与する度合が,産業発展の面と比較して,小さかつたことが指摘される。

第1-25図 国立試験研究機関における社会開発関係研究予算および課題数の割合

これは,国立試験研究機関における研究状況,企業における研究水準,技術水準の低さ,技術導入の相対的な遅れなどに端的にあらわれている。

たとえば,国の社会開発関連技術に関する研究は,そのほとんどが国立試験研究機関で行なわれているが,これらの機関の重点研究費(特別研究費等)に占める医療保健,公害防止,交通安全等,とくに国民の生活に密着した社会開発関連技術の研究費は年々約20%の割合で増加しているが,その全体の研究費に占める割合は約30%で推移してきている (第1-25図参照)

しかし,これらの研究テーマは,問題の発生が予測できないも〜のもあつたであろうが,そのほとんどが問題が表面化してから採択されており,研究の成果が活用されるまでに相当の時間を要することを考えると,問題解決にあたつてすぐに間に合わない場合が見受けられる。

また,企業の研究については,研究の全体を把握することは困難であるが,技術導入時点での企業の受入れ体制から研究水準,技術水準を推測してみると, 第1-26図 に示すように,社会開発関連技術に関しては,技術導入時迄において基礎研究も行なつていない技術が28%もある。

第1-27図 は,導入時点と現時点の技術的格差を示したものであるが,導入時では圧倒的に遅れていたものが全体の37%も占めており,現時点においても,なおその格差はあまり縮少していない。これを一般産業技術と比較すると,明らかに社会開発関連技術の方が遅れていることが認められる。

さらに,社会開発関連技術の導入の実態をみると, 第1-28図 および 1-29図 に示すとおり,導入件数は年々増加の傾向にあるが,本格的に導入されだしたのは最近になつてからであり,とくに,このことは,公害防止技術に顕著に表われている。公害問題が顕在化し,法的に規制が行なわれたのは,水質汚濁関係が昭和33年,大気汚染関係が昭和37年であつたが技術導入はこれよりもかなり遅れて行なわれている。このようなことは,これらに関する優秀な技術が外国において存在することが少なかつたことにも一因があろうが,公害問題に対する認識が不足していたことも指摘されるべきであろう。

第1-26図 技術導入時点における導入会社の研究開発

以上のことは,先に述べたように,わが国の科学技術は主として産業の発展に重点を置いて進歩してきたために,社会開発関連技術が十分に発達しなかつたことを物語つている。

今後とも産業発展の原動力となる技術開発を積極的に推進しなければならないことは当然であるが,技術を現実に適用する場合には,国民生活に悪影響を及ぼすおそれのあるものについては十分に検討し,その安全性の向上を図る等の対策を講ずべきである。また従来社会開発関連技術の多くは,企業の採算にのらないため,放置されたり,遅れがちになる傾向があつた。しかし,今後は,社会開発関連技術の振興は,国が中心となり,民間との協力のもとに推進することが望まれる。以下,社会開発について,分野別の問題点の解決にあたつて,科学技術に期待されている課題,技術の現状と問題点などについて概観する。

第1-27図 導入技術に関する技術的格差

第1-28図 社会開発関連技術の導入件数の推移(甲種)

第1-29図 社会開発関連技術の導入技術に占める割合


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