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第1部   科学技術発展の展望
第2章  技術発展の動向
2  技術発展と国民生活
(5)  経済性の向上


前述したように大容量化,自動化,直接化などの技術進歩は生産工程の大幅な合理化をもたらし,生産コストの低下を可能とした。さらに,輸送,保管,荷役,包装などの流通機構の合理化により,流通コストを低減させることができ,われわれの消費生活の安定に寄与しつつある。

たとえば,電灯料金をみても,ほとんど値上げがなく横ばい傾向で推移してきたが,これは,発電所の規模を大型化する技術や火力発電の燃料費の低減などによるところがきわめて大きい。大型化による利点は,規模拡大による建設コストの減少や,自動化装置の採用による保守人員の削減に伴う管理費の節約などである。

第1-22図 大型化による発電コストの低下の状況

発電所の規模と発電コストの低廉化の関係は, 第1-22図 に示すとおりであり,大型化の傾向を火力発電についてみると,昭和35年頃には単機出力でせいぜい175〜265 MWのものであつたが,最近では600 MWという大容量発電機も出現するに至つた。

その結果,電灯料金は,昭和35年度と比べると,平均値上げ率3.4%の料金改訂を行なつただけで,約10年間,人件費や諸原料費の上昇をも吸収して,大幅な値上げを押えることができた (第1-22図)

このことは,今後の発展が期待される原子力発電についても同様である。

今後技術の発展によつて発電所の大型化を進めることができればコストの上昇を押えることができよう。

また, 第1-23図 に示すように,タンカーの大型化により,単位当たりの建設コストの低減が可能となつた。

たとえば6万重量トンから20万重量トンへと約3倍に大型化すると,約30%の輸送コストの低減を図ることができる。

また,石油精製の規模が拡大され,大量生産が可能となり,この面からも,石油コストの低下に寄与した。

第1-23図 タンカーの大型化に輸送コストの低下の状況

その結果,灯油の価格低減に寄与し,さらに安価な石油化学製品の購入を可能とした (第1-24図参照)

一方,自転車,テレビ,ラジオ,電気冷蔵庫,電気洗濯機などの耐久消費財は,一般に漸次高級化されてきたにもかかわらず,その価格は,ここ数年値下がりもしくは横ばいの安定した状態が続き,安価な製品を購入することができるようになつた。これは,自動化の採用による大量生産方式新加工技術の採用,包装,荷役の機械化などの合理化により,達成されたといえよう。

たとえば,自転車についてみると,人件費や原材料費などの上昇を吸収しつつ,ここ10年,価格の値上がりを押え,安定した推移を示した (第1-24図参照)

これは,冷間鍛造や液圧バルジ加工などの加工技術や諸機械の自動化の採用による生産合理化で,生産コストを15%以上も低下させることが可能となつたことが大きな理由である。

農水産物のなかで鶏卵の価格は,年々わずかな変動をくり返しながらもきわめて安定した動きを示してきた (第1-24図) 。これは,自動給餌水装置,鶏糞処理機械,集・洗・選卵機などの自動化機械の導入や新包装資材などの開発などの技術進歩により,大規模養鶏が可能となつたこと,品種の改良,環境調節などにより産卵率が高まつたことなどが大きな要因と考えられる。

以上のように科学技術の国民生活への寄与は多方面にわたつて,はかり知れないほどのものがあり,国民生活を一段と高度化させることができた。しかし社会・経済のアンバランスな発達は,公害,交通事故などの増加となつてあらわれ,われわれの生活環境を悪化させ,大きな社会問題を発生させるに至つた。

第1-24図 諸物価の推移 (35年= 100)

今後,真に豊かな国民生活を実現させるためには,これらの問題を科学技術をもつて早急に解決するとともに,諸分野で科学技術を一層発展させることが必要であろう。


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