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第1部   科学技術発展の展望
第2章  技術発展の動向
2  技術発展と国民生活
(1)  生活の多様化


科学技術の進歩は,衣,食,住生活や保健・衛生,知識・余暇などの面で高度化,多様化を進め,種々の生活手段を提供した。

その結果,われわれは,各自の好みに応じて自由に選択することができるほどに,豊かな生活を営むことができるようになつた。

衣生活の多様化について合成繊維を例にとつてみると,昭和21年にナイロンが初めて登場して以来,今日に至るまで,種々の性能,特徴をもつた各種の合成繊維が開発され,広汎な分野で用いられるようになつた。

合成繊維は,最初,天然繊維の代用として登場したものであるが,その後,高分子化学や製造技術の進歩により,天然繊維よりはるかにすぐれた特性,あるいは天然繊維にはない特質をもたせることが可能となり,代用の域を脱して合成繊維独自の分野を築くに至つた。また,国民生活および産業活動の高度化につれて,生産量が拡大し,その種類も多様化した。すなわち,まずナイロンが下着や靴下などの衣料用に,また,耐水性,耐薬品性のビニロンや塩化ビニリデンなどが,カーペット,カーテンなどのインテリア用に用いられ始めた。ついで,吸湿性,弾力性に富んだ,アクリルニトリル,迅乾性に富んだポリエステルなどが開発されるに至つて,合成繊維は,綿や羊毛に代り,肌着からワイシャツ,セーター,紳士服などのほとんどすべての衣料品に用いられるようになり,日常生活で合成繊維は不可欠のものとなるに至つた。

食生活では,従来,米を中心とした農水産物が主であつたが,最近は肉,乳,卵類等を多く摂取する食事へと変わり,同時に果物や飲料などのし好食品の増加によるバラエティに富んだ食生活へと変化してきた。

これには,国民の所得水準の向上などいくつかの要因があるが,科学技術の果たした役割も見逃すことはできない。

すなわち,食品加工技術の向上,包装資材の開発,包装工程の機械化の進展などにより,多種類の加工食品が生産できるようになつた。また,合成樹脂による被覆保温資材などの開発改良により,環境調節技術が進歩し,施設栽培が可能となり,従来,収穫の季節が定まつていたトマト,いちごなどの野菜類も,近年では一年を通じて常時栽培できるようになつた。そして,保存技術の進歩などによつて,新鮮な加工食品や野菜,果物類が食卓にのぼるようになり,バラエティに富んだ食生活ができるようになつた。

保健衛生での多様化は,医薬品について多くみられ,一つの疾病についても,多種類の医薬品が開発され,その症状に応じて最適のものを選んだり,いくつかの薬の組合せにより,有効な治療手段をうることが可能となつた。

これは,治療可能な疾病についてはほとんどすべてみられる傾向である。

たとえば,結核の制圧を可能とした抗結核剤についてみると, 第1-16図 に示すとおり,1940年以降多種類の抗結核剤が出現した。なかでも,,第1次抗結核薬として,ストレプトマイシン,バス,イソニアジドが用いられている点は従来と変わりはないが,近年,第二次抗結核薬として,サイクロセリン,エチオナミド,カナマイシンなどの組合せが多く用いられている。さらに,エタンブトール,カプレオマイシン等の登場は,抗結核薬がきわめて充実してきたことを示している。情報活動の面における多様化を,通信方式を例にとりみてみると,電信の実用化によつて,郵便に比べて迅速な通信が可能となつたが,これは自動電信から印刷電信へと発展し,さらに新聞ファクシミリなどの出現をみるに至つた。

第1-16図 抗結核薬における多様化

また,電話については,回線の多重使用や自動交換などの技術向上により,現在では全国の主要都市間のほとんどが即時通話できるようになつた。

さらに,電子技術の発達に伴い,音声のみならず画面をも同時に送ることも可能となり,昭和28年にはテレビ放送も開始され,最近では通信衛星を利用して遠隔の地の出来事を即座に見聞することが可能となつた。そして現在ではテレビ電話が実用化されようとしている。

第1-4表 電機通信方式の多様化

近年,ますます多量の情報流通が要請されるにつれ,データ通信の開発が活発化し,密度が高く,かつ複雑多様な情報の処理が迅速,正確,かつ経済的に行なうことができるようになり,座席予約業務や銀行業務など,各方面で使用され,事務処理の効率化が促進されている。

このように,情報の伝達方式も多種多様になり,われわれは,最適条件の伝達方式を選択し,効率的な活動を行なうことができるようになつた (第1-4表参照)

また,科学技術の進歩に伴い,新しい機能をもつて合成樹脂が続々と開発され,成形技術の進歩と相まつて,多種多様の製品を生産することが可能となり,従来の金属,。木材などによる製品に代わつて,住生活をはじめ日常生活のあらゆる面で広く利用されるようになつた。

初めて登場した合成樹脂は,フェノール樹脂であり,その後ユリア樹脂,メタクリル樹脂などが開発され,これに加えて塩化ビニール樹脂の大量生産が開始されるに及び,合成樹脂が急速に日常生活にはいり込んできた。さらに,ポリスチレン,ポリエチレン,ポリプロピレンなどのいわゆる石油化学系樹脂が開発され,従来の合成樹脂に比べて,機械的強度,耐薬品性,加工特性などの面での向上が図られ,諸種の成形技術の進歩とともに,種々の高品質の製品が生産できるようになり,その用途は著しく多様化した。

その使用範囲は,食器,玩具などの日用雑貨の分野,波板,浴槽,床材などの建材,住宅部属品分野をはじめ,容器,緩衝材などの包装資材分野,農業漁業資材,医療機器の分野などに及び,最近では合成紙などへの進出の可能性もでてきた。

このように,合成樹脂は,われわれの日常生活のあらゆる分野で使用されるようになり,豊かな生活が可能となつた (第1-5表参照)

また,知識・余暇などの生活機能の面についても,情報伝達手段の多様化,労働時間の短縮による自由時間の増大などにより,われわれは,豊富な知識を容易に吸収できるようになつた。

第1-5表 合成樹脂の開発と用途の拡大


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