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第1部   科学技術発展の展望
第2章  技術発展の動向
1  発展形態からみた技術の動向
(4)  新機能の創出


科学技術の発展は,従来存在しなかつたもの,まつたく新しい機能をもつものを生みだしていく。

とくに,この傾向は,化学製品,医薬品,農薬などに顕著にあらわれている。

化学製品では,ビニロン,アクリルニトリル系合成繊維,クロロプレン,グルタミン酸ソーダ,イノシン酸ソーダ,グアニル酸ソーダなどがあり,医薬品では,カナマイシン,ロイコマイシン,マイトマイシン,プレオマイシン,はしかワクチン,農薬では,ブラストサイジンS,ポリオキシン,カスガマイシン,セロサイジン,植物の生長を制御する化学物質では,ジベレリン,デナポン,245 TPなどがあげられよう。

第1-7図連続鋳造法

ビニロンは,わが国で発明された代表的な合成繊維であつて,比較的耐熱性,対薬品性が良く,感触が持つとももめんに近いなど,すぐれた性質をもつている。

ポリビニールアルコールは,水溶性であるため繊維として使用できなかつたが,熱処理,ホルマリン処理によつてこの問題を解決し,ビニロン繊維が開発されたのである。

アクリルニトリル系合成繊維は,ピリング(毛玉)が少なく,外観が美しく,型くずれやしわ,虫,かびなどに強く,染色性にもすぐれ,日光に強いなど数多くのすぐれた性質をもつている。アクリル繊維の工業化にあたつての最も重要な開発課題は,アクリルニトリルのポリマーを溶解する用剤の開発にあつた。現在ではジメチルホルムアミド,ジメチルアセトアミド,硝酸,ロダン塩,塩化亜鉛などの数多くの用剤が実用化されている。

イノシン酸ソーダ(I.M.P),グアニル酸ソーダ(G.M.P)などは,酵母リボ核酸を酵素的に分解して製造される。これらは,従来の化学調味料であるグルタミン酸ソーダと混合して用いられており,両者の相乗効果によつて呈味性が著しく増加する。

カナマイシンは,結核だけでなく,一般化膿性疾患,感染症に著名な効果を示すとともに,耐性菌の最も少ないきわめてすぐれた抗生物質である。このカナマイシンの開発には,工業的培養技術および精製技術が重要な鍵であつた。

マイトマイシンは,広範囲な抗がん作用をもつ優秀な抗生物質である。もちろん,現在のところ,がんに対して絶対的な薬効をもつものはないが,マイトマイシンの化学構造と生物活性の関係を明らかにし,よりよい抗がん剤,抗菌剤を探索するために,マイトマイシンのいろいろな誘導体の開発が行なわれているまた,ブレオマイシンは,皮膚の上皮だけに集中するという特異な性質があり,このため皮膚がん,舌がんこう頭がん,陰のうがんなどにすばらしい効力を発揮している。

ジベレリン,稲の馬鹿苗病菌から抽出され,ぶどうの早熟化や種なしぶどうの栽培に使用されている。

また,デナポンは,果実育成の抑制剤であり,りんごの摘花作業の省力化に貢献しているばかりでなく,害虫防除に役立ち,殺虫剤としての機能もあわせもつている。さらに,245TPは,りんごの落果防止用に用いられている。

このように,科学技術は,以前には存在を知られなかつたような,あるいは存在しなかつたような新しい物質新しい製品を生み出し,社会・経済に広く影響を与えながら,科学技術そのものの新しい展開を導いていく。

今後,新しい合成繊維,合成樹脂の開発,抗がん剤などの新しい医薬品の開発,新しい農薬用抗生物質の開発,ホーバークラフト,テレビ電話,ミリ波通信,レーザー通信などの開発が予想され,新機能の創出という発展方向は,多くの分野で促進されていくことになろう。


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