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第7章  諸外国の動向
4  ドイツ


ドイツは1965年秋,総選挙により第2次エアハルト内閣が成立したが,これに伴つて科学研究相の更迭が行なわれた。現在までに明らかにされた新科学研究相の主要な政策は,科学研究予算の増額と長期計画の作成である。後者に対する裏付けとして特に予算制度の改革を重視し,現行の単年度予算を長期予算制度に切りかえるため,当面2カ年予算制度の実施を表明しており,大蔵省との交渉が行なわれているが,その実現には問題も多く,今後の動向が注目されている。

科学研究省は1963年には原子力省を母体として設立され,以来総合的科学技術行政体制の確立に努めてきたが,大臣の更迭を期として,いま機構的な整備および長期計画のための基礎資料の準備段階をおえ,発展期に入つたと考えることができる。

現在の科学技術行政についてみれば,連邦政府においては,基礎研究を主体とする一般科学技術振興および原子力宇宙関係の科学技術促進を科学研究省が所管し,各省の行政関連研究の調整には科学研究各省委員会が1962年以来その任にあたつてきたが,さらに1966年の初めから首相を議長,科学研究相を副議長とする科学閣僚会議が新設され,現在政府研究機関の再編成等の問題を閣僚レベルで検討中である。しかし基礎研究については,その主力である大学が基本法(憲法)により各州政府に所管されており,マックス・プランク協会等大学に準ずる研究機関は連邦,州の共管と定められているため,州政府の権限は強い。連邦,各州政府間の調整のためには科学会議があるが,このほか行政レベルでは科学および研究の促進に関する連邦・州間行政協定が1964年に締結されて,連邦・州間連絡調整委員会が設立されている。

一方,科学研究相の権限拡大の動きもまた今次内閣の成立を機に起つた。

その一つは国会議員から提出,された同省改組要望であり,基本法の改正によつて大学に対する連邦政府の発言権を拡大しようとするものである。いまひとつは産業界からの要望である。学術研究促進に対する熱意はこの国の伝統として民間産業界においても高いものがあり,学術後援財団を通ずる寄付金等により多大な資金援助を行なつているが,産業界による提案は,同省を科学技術省に改組し,エレクトロニクス,エネルギー転換等,原子力や宇宙以外の一般産業技術にも積極的な振興方策を講ずべきであるとするものであつた。

ドイツ研究協会が1963年に行なつた“今日のドイツの科学技術水準に関する調査”によれば,戦後出現した新しい研究分野,サイバネティックス,分子生物学,エレクトロニクス等において国際的に立遅れがあるとしており,新分野を中心とする研究振興の声が,企業の国際競争力強化の問題にも関連させて関係者間に高まりはじめていた。

これに対し,連邦政府の当面明らかにした見解は,同国の経済政策の原則から特定の産業部門を国が援助することは最後の手段としてのみ認められるべきであり,技術と基礎科学の関連の高まつた今日,むしろすべての技術の基盤となる基礎研究の振興にこそ力を注ぐべきであり,また大学にたいしても現在の連邦・州間行政協定で効果的な援助を行ない得るというものであつた。しかし,ドイツの当面の競争相手であるイギリス,フランス等が産業技術の開発に強力な国家的体制を整備しつつある現在,今後も科学技術行政の対象の拡大と整備の問題は折にふれ論議の焦点となるものと思われる。

最近における重要な行政上の動きとしては,このほか全国家的な科学政策諮問機関である科学会議による研究機関に関する勧告と,大学の学業期間短縮に関する提案がある。前者はマックス・プランク協会,連邦政府研究所等の整備充実に関するものであるが,重要な事項としては,政府の財政援助方式について,研究機関の自主性を尊重するため従来のテーマ別補助金交付をー括補助金に切りかえ,かつこれを長期的見通しのもとに実施すること,また連邦政府研究所について,行政に直接の関係をもたぬものは科学研究省に移管するか,もしくは政府機関と別個の組織形態を考慮することであつた。

後者は従来特に理工系において非常に長かつた学業期間を,学生数の増大と民間企業の要望から短縮しようとするものである。

1966年の連邦予算案は総額691億マルク(6兆2,190億円)で前年の8%増であつたが,′64年以降予算編成の重点項目とされている科学研究関係予算は,24億4,000万マルク(2,493億円)で国防関係を除けば22%の大巾な増大を示した。主要分野別にみれば,第7-15表のとおりとなり,宇宙および原子力関係の伸びが非常に大きく,大学関係がこれに次ぐ。一般科学技術関係はあまり伸びていないが,これは連邦研究所関係および研究委託費からなり,内容はイギリス,フランス等と異なり行政関連研究に限られた性質のものである。また国防研究の大巾な減少が特に目立つ。内訳については,大学および一般科学技術関係では大学拡張補助金3億5,000万マルク(315億円)(前年は3億マルク),マックス・スプランク協会への補助金8,450万マルク(76億500万円)(前年7,200万マルク)は相当の増額であり,大学新設補助金2,200万マルク(19億8,000万円)は1966年度はじめて計上されたものである。このほか国の研究予算や研究投資の最適規模,研究組織の問題等,科学技術政策の基礎資料提供を主目的とする社会科学者グループへの補助金(65万マルク,15,850万円),および在外ドイツ科学者帰国促進費(15万マルク,1,350万円)が計上されていることが注目されよう。原子力関係の23%増は,原子力開発計画に示された毎年20%の予算増額に見合うものであり,宇宙関係では60%の大巾な増額となつたが,予算の半ば以上はELDO, ESROへの分担金や米国航空宇宙局との共同研究等の国際共同研究で占められており,国内研究とのアンバランが問題であるといわれている。

第7-15表 ドイツ連邦政府の科学研究関係予算

ドイツ全体の研究開発費は,1965年において94億2,700万マルク(8,484億3,000万円)と推定され,国民総生産に対する比率では2.1%となる。科学研究省第1回研究報告書によれば,同比率3%を1970年までに到達すべき目標として掲げており,第7-16表の示すように1966年度の連邦政府科学技術研究支出目標は32億マルク(2,880億円)と試算しているが,上記のように1966年度予算案は24億4,000万マルク(2,196億円)であつた。1961年以降の実績推移は第7-17表のとおりである。連邦政府と州政府とをあわせた政府支出分の国全体に占める構成比率は,1965年においては約6割に達し,イギリス,フランス等と同等の水準であるといつてよい。連邦政府の支出分は,1965年では23%と低下しているが,これは国防研究の減少によるものとみてよい。アメリカをはじめイギリス,フランス等の国家支出は,国防研究が大きな比率を占め,ことにアメリカにおいては民間の研究活動にも決定的な力を持つが,ドイツにおいては国防研究費が小規模であることが大きな特色である。国防研究費実績は’64年7億1,200万マルク(640億8,000万円)から’65年は6億5,500万マルク(589億5,000万円)となり,連邦政府研究支出総額中に占める比率は32%にすぎず,′66年予算では前述のようにさらに大巾な削減により25%と低下することとなる。したがつて,政府支出分6割という構成は,支出内容において,この国の政府投資水準の高さを示すものといえよう。一般産業技術の開発に関しては,連邦としては民間企業の自主的な投資に多くを期待していると思われるが,民間企業の側からの要望も,企業の自主性を拘束する補助金の増額よりも税制面の特典を与えよといつたものが強く,この面の改善がイギリス,フランス等に刺戟されて最近行なわれた。すなわち従来なかつた特別償却制度の採用であり,1965年から研究用施設設備に対し,固定設備については30%,非固定設備については50%までの特別償却を認めることとした。

第7-16表 連邦政府の科学研究支出目標

第7-17表 ドイツにおける研究費の推移,財源別1961〜 ′65年


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