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第7章  諸外国の動向
1  アメリカ


近年のアメリカにおける研究開発活動は,国防,宇宙あるいは原子力等の国家計画に基づく連邦政府の巨額の投資にリードされるところに特色がある。

最近においても国家計画に基本的な変更はなく,かえつて上記分野への優先性が強化されているところから,こうした特色はいよいよ顕著となつている。これらの大規模な国家計画の実施は,この国の経済に大きな需要造成効果を持つといわれるが,研究開発の面においても他の産業の技術に対する波及効果は大きなものがあり,一方において国防,宇宙等の分野への偏向や産業部門間での政府資金分布状況のアンバランス,大企業へのその集中といつた問題を生み出しながら,他方ではこれらの研究の成果やその過程における蓄積を一般産業技術へ積極的に利用しようとする動きもみられるといわれている。

このように,政府と産業界あるいは大学との間にも緊密な依存,協力関係が確立されているが,連邦政府の最近における研究開発投資は第7-1表のとおりである。すなわち省庁別にみれば,約90%が国防総省,航空宇宙局,原子力委員会の三者によつて占められ,国防総省だけでは約半ばという比率を示す。こうした巨額の政府資金は,研究開発契約(委託)制度により,大部分民間へ投下されるが,1963年におけるアメリカ全体の研究開発規模のなかでその状況を概観すれば次のごとくである。

同年における連邦政府研究開発資金は86%が外部へ支出されており,国立研究機関で実施された分は14%にすぎない。実施主体は,産業界,大学その他の研究機関にあるが,これらの研究開発は,産業界における研究開発実施分の約60%,大学におけるそれの65%を占めるにいたり,アメリカ全体の研究開発実施分についてみれば,ほぼ6割であつた。産業界へ委託された政府研究開発を研究の段階別に分類すれば,産業界における基礎研究実施分の30係,応用研究のそれの40%,開発についてはその65%を占める。大学に対する委託および補助金は,大学の実施した基礎研究の55%,応用研究の85%であつた。政府の委託は開発を主体とするものであるから,特に開発については,アメリカ全体の開発分の約7割という非常に高い比率を占めることになる。同年におけるアメリカ全体の研究開発の研究段階別分布は,基礎研究10係,応用研究24%,開発66%となつており,この比率は数年来ほぼ安定しているが,前述のように国家計画に基本的変化がなかつたこと,特に宇宙および国防関係の分野の開発に大きな投資を要請するプロジェクトを主体とする事情を反映するものである。

第7-1表 アメリカ政府の研究開発投資(債務負担権限額)

アメリカ全体の研究開発費総額は1963年で約174億ドル(6兆2,640億円)であり,これは同年の国民総生産の2.97%に相当するが,これを財源別および実施機関別に集計したのが第7-2表である。研究開発費の分布比率はここ数年ほとんど変化がないといつてよい。資金供給者としての連邦政府は,113億ドル(4兆680億円)を支出しており,このうち73億ドル(2兆6,280億円)が産業界へ流入している。他方実施機関では,産業界が127億ドル(4兆5,720億円)で全体で7割以上を実施している。

このようにアメリカの研究開発実施主体は産業界にあるといつていいが,これを1964年の実績について分析すれば次のとおりとなる。すなわち,産業界が実施した研究開発の規模は134億ドルであり,これは同年のアメリカ全体の研究開発規模が,190億ドル(6兆8,400億円)と推計されるから,その約3/4に相当し,絶対額において対前年5%増を示す。そのうち基礎研究については5億8,200万ドル(2,095億2,000万円)で同じく対前年比8%増,応用研究26億ドル(9,360億円)6%増,開発102億ドル(3兆6,720億円)で研究開発費総額の76優を占め,対前年5%増を示した。財源別にみると連邦政府が76億ドル(2兆7,360億円),すなわち産業界研究開発の約6割を支出して対前年4%の伸びを示し,1953年に比べるとじつに5倍半に近い膨張となる。特に航究機・ミサイル産業と電気機器・通信機器産業がその大部分を占めるのがここ数年の顕著な傾向であるが,1964年でもこれらの産業部門が政府支出分の82%という比率を示した。一方,会社自身の支出した研究開発費は58億ドル(2兆880億円)で,対前年6%増,1953年からの推移では161%増,すなわち約2倍半の成長にとどまり;連邦政府資金の膨張と対照的である。

第7-2表 アメリカの資金源別,実施機関別研究開発費 1963年

業種別では,第7-3表のように,最高は航空機・ミサイル産業の51億ドル(1兆8,360億円)である。これに次ぐものは電機・通信の26億ドル(9,360億円),化学・関連製品の13億ドル(4,680億円),自動車その他輸送用機器12億ドル(4,320億円),機械10億ドル(3,600億円)となり,これらの5産業で1964年における産業界研究開発の84%を占める。対前年で1億ドル以上の増加を示したのは航空機・ミサイル(2億5,100万ドル),電機・通信(1億5,900万ドル)の2産業であるが,両者とも連邦政府資金の増加が最も大きかつた産業である。第7-4表の示すとおり,航空機・ミサイルは2億3,400万ドルの増で絶対額において最も大きく,政府資金は46億ドル(1兆6,560億円)に達し,同産業の研究開発費総額の90優を占めた。電機,通信の政府資金増加は7,000万ドル増でこれにつぎ,政府資金16億ドル(5,760億円)が同産業の研究開発費に占める比率は62%となつた。逆に政府資金が減少を示したのは化学・関連製品産業が,3,300万ドル減,次いで理科学器械の1,300万ドル減である。

他方,会社自身の研究投資は,対前年6%,3億4,700万ドル増とやや活発であり,どの産業においても増大を示した。最も増加率の高かつたのはゴム製品産業の13%で,次いで電機・通信の10%,機械の9%である。絶対額において自己投資の最も大きかつたのは化学・関連製品で約11億ドル(3,960億円)であるが,増加率には鈍化が目立つ。また研究開発費の対売上高比率の動向をみれぱ第7-5表のとおりとなる。特に航空機・ミサイルが著しく高比率を示すが,この高比率は,政府資金が大きく流入していること,および高価な特殊設備・機器を必要とするプロジェクトが大部分であるという事情の反映がある。

第7-3表アメリカ産業界研究開発費の動向,業種別

第7-4表 アメリカ産業界研究開発費の資金源別構成

第7-5表 アメリカの製造業における研究開発費の対売上高比率


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