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第6章  科学技術情報活動
1  わが国の科学技術情報活動
(1)  科学技術情報活動


科学技術情報活動は,科学技術活動のなかで人体における血液ともいうべき機能を果たすもので,科学技術の発展に対するその役割の重要性は近年強く認識され,各国ともその機能の整備充実,拡大強化に多大の努力をはらつている。わが国においても,未だ不十分とはいえ,情報活動の整備充実のため種々の施策が講じられてきた。

わが国が科学技術政策のなかで情報の問題を取り上げたのはかなり早く,情報サービス活動の中枢機関としての日本科学技術情報センターが発足したのは昭和32年であり,以来同センターは着実に発展し,昭和40年からは,従来の活動に加えて新たに中小企業向けの「中小企業海外技術情報」の編さんをはじめた。

わが国の情報活動に関する施策は,主として日本科学技術情報センターの育成や,国立国会図書館の科学技術部門の強化といつたことに重点が置かれているが,近年の情報量の増大,情報の多面的利用に対する要請などから,情報流通体系を格段に整備充実する必要が生じてきた。そこで科学技術会議は,昭和39年,国内の情報流通体系整備の参考に資するため,諸外国の科学技術情報活動の現状を調査する海外調査団を派遣した。他方,日米科学委員会の第2パネルである科学情報,資料分科会は,昭和40年3月の一次刊行物編集者会議に引き続いて,9月に物理科学系研究物質に関する交換促進計画会議などが開かれ,また同年10月には,アメリカにおける情報処理機械化の現状に関する調査が行なわれた,そのほか近年は,国立試験研究機関などに専門領域に関するデータあるいは物質を収集,整理しようとする動きも出てきた。このようにひろい意味の情報活動に関する施策は種々講じられてきてはいるが,未だ情報網の整備は十分とはいえず,解決すべき問題が数多くあることから,昭和41年8月科学技術会議は,「科学技術振興の総合的基本的方策に関する意見」で,特に科学技術情報活動の強化という一章を設けて改善すべき問題点,整備の方針などを明らかにした。

情報活動を情報の流れという面からとらえるならば,情報活動とは,情報流通の過程のなかでその流通機構を構成し運営するための諸活動ということができる。情報流通機構を一般的にみて,上述のような概念で整理すれば,情報源,情報サービス機構,情報利用者の3つに分けられる。

現在,わが国で生産されている科学技術情報量は,刊行物に発表されるオリジナルな研究論文だけでも年間4万件程度と推定されており,未公刊の論文あるいはその他の科学技術に関する文献などをあわせると,これをはるかに上回る量の情報が生産されていると思われる,この.ぼう大な情報を種々の形で処理して流しているのが情報サービス機関であるが,これには,種々の情報サービス・センター,図書館,研究機関,学・協会などがあり,これらは,情報の収集,一次情報の伝達,収集した情報の二次情報化(抄録,索引の作成など),一次情報の複写,ほん訳サービス,あるいは情報の入手方法に関する情報の提供といつた機能を果たし,情報流通のかなめとなつているもである。この種々の機関のなかで,もつとも総合的で枢要な役割を果たしているのは,日本科学技術情報センターである。この機関の活動および国立国会図書館の活動については後述する。

わが国の科学技術関係の学・協会は約600あり,それぞれ専門誌の刊行を行なつているが,その一部については,文部省の科学研究費補助金により,学術文献刊行に対する補助金が交付されており,昭和41年度の予算は8,300万円である。また,掲載論文の一部について抄録や索引を行なつているところもあるが,その他の情報サービスはあまり活発ではないようである。

近年,限定された専門領域に関する情報資料を収集,整理しようという動きが活発になつてきているが,その種のものとしては,科学技術庁防災センターの企画室が防災関係の資料を収集しはじめており,また海上保安庁水路部の海洋資料センターが昭和40年から発足した。また農林省の農業技術研究所では,昭和40年度から研究ならびに配布用の種子の長期保存のための種子貯蔵庫を設置した。日本原子力研究所の図書館は,原子力関係の資料センターを目的としたものである。そのほか化学関係では,炭化水素類の純度を検定し,標準炭化水素類を供給している標準炭化水素協議会,純物質の赤外スペクトルを測定し,データ・カードを作成している日本赤外データ委員会,あるいはガスクロマトグラフイー・データ委員会,ポーラログラフイー・データ委員会などがある。財団法人がん研究所のがん化学療法情報センターは,がん化学療法に関する公刊情報の収集と伝達を行なつている。その他一部の化学関係の企業のための情報サービスを行なつている財団法人野口研究所の情報センターがある。

以上のような情報流通体系の整備にあたつて問題となるのは,ぼう大な情報を迅速,適確に処理するための処理方式と,情報処理の専門家の確保ということである。情報処理については,最近電子計算機を用いた処理方式の研究が大きな課題として取り上げられてきており,また,情報専門家の養成については,現在,主として図書館司書の養成を目的としている慶応義塾大学の図書館学科と,昭和39年に設置された図書館短期大学があるだけであり,今後要求される情報専門家の養成という点では不十分なので,そのための専門コースの設置が望まれている。

以上のような現状に対し,科学技術情報活動をさらに強化,拡充する必要を感じた科学技術会議は,わが国の科学技術情報活動の強化について次のような意見を提出した。まず,情報源については,論文の質の確保,発表形式の標準化,また学術文献刊行の助成の強化の必要性を述べ,次に公共的情報処理機関の整備強化については,1)日本科学技術情報センターのような総合センターをさらに充実するとともに,2)細密さなどの点で総合センターのカバーすることのできない専門領域については,専門センターを設けることが必要であるとし,3)大量の観測,測定データ,物質などを収集,整理しておく各種データ・センターの整備を要請している。さらに,4)必要な情報の入手方法に関する情報を提供する情報案内所ともいうべきクリアリング機構の確立の必要性を述べ,また,5)図書館も近代的な情報活動に即した整備が必要であると強調し,これら5者の有機的な連けいによりわが国の情報流通体系を構成する方針を示している。

さらに,これら機関の整備にあたつて重要な課題である情報処理機械化の問題については,日本語という伝達媒体に関する独自な研究の不可欠なことを述べ,研究体制および研究者の確保については何らかの措置が講じられることを要望し,また,情報専門家の養成については,大学の学部過程にドクメンテーシヨン・コースを設置すること,大学院に情報処理の専門コースを設置して情報専門家,研究者の養成を行なうべきことを述べている。


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