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第5章  技術の交流
4  特許と技術貿易


特許権,実用新案権などの工業所有権制度の本来の機能は,一定期間独占権を与えて発明者を保護すると同時に,その内容を公開し,これを基盤としで技術の進歩を図ろうとするものである。この制度により,発明者は特許権等を新製品,新技術の分野における独占的地位確保の手段としたり,特許実施権を商品化して収入を得ることができる。新製品製造実施の独占による利益は大きく,企業の利益率を高水準で維持するためには新製品をつぎつぎに開発していくことが必要になつており,そのために研究投資とともにその成果としての特許権取得の必要性が高まつている。

このように特許権等の工業所有権は,企業の成長力を維持するために必要なエネルギーとして絶えず補給されることが求められる重要な権利であるだけに,特許に関する企業間の競争も激しいものとなる。

その結果,防衛特許(実用化を目的とせずに同様な特許を他に取られないことを目的とするもの)的なものが増加しており,近年の特許出願件数の増加をさらに著しくしている。

1 特許と研究貿易

研究交流における特許の位置は大きく,工業技術院の調査によれば,37〜39年度の技術導入認可件数の74%,技術輸出の24%,国内技術交流の80%近くが特許の実施権を含んでおり,昭和40年度の甲種の技術導入では64%が特許権を含んで契約を行なつている。

また,日本銀行の資料である「技術援助契約による外国為替収支内訳表」(付表5-2表参照)によれば,この割合はさらに高まり,技術導入に対する支払いは,昭和40年において164百万ドル,このうち特許権使用料が146百万ドルと約90%を占め,技術輸出においては,13百万ドルのうち特許使用料が5百万ドルと約43%を占めている。

第5-9表 特許,実用新案の出願件数

最近における特許および実用新案の出願状況をみると,第5-9表のとおりで年々増加の一途をたどつているが,このなかで占める外国人出願もそれとともに増加し,特許出願についてはその26%前後,実用新案についてはその1.7%前後を上下している。しかしながら先進諸国における状況をみると,外国人出願の比率はわが国におけるよりも大きく,ほとんどの国において増加する傾向を示している。

このような特許の国外出願は,出願国からみた出願相手国の経済的,技術的水準に対する評価を表わすものとみられるとともに,出願国の出願相手国に対する技術輸出の潜在力を生みつつあるといえるものであろう。

前述したごとく技術交流に占める特許の位置は大きく,技術的格差が縮少するにつれ,特許実施権の供与のみを目的とする導入がふえることが予想される。また技術輸出については,わが国の輸出がノウハウ中心であることは特許権の対外国出願件数の少ないことと関係があることと思われる。

第5-10表 主要国の外国人出願(特許及び実用新案)の内訳(1964年)

各国における外国人出願件数を示すと第5-10表のとおりである。

これをみると,アメリカにおいては対自国出願67,013件に対し外国出願が87,256件となり,自国出願に対する外国出願の割合は130%と自国出願より外国出願の件数が多くなつている。これに対しわが国は5%となつている。

しかしながらこの差異は,アメリカが高いというよりも,日本が極端に低いというほうが適切になろう。

先進諸国ではほとんどが自国出願より外国出願の数が多く,オランダにおいては46.4倍を示しており,先進諸国で自国出願の多い国はドイツの56%のみとなつている。

第5-15図 全特許出願数中の主要特許類 別占有率の変化

対外国出願率は,特許が外国出願に値するという特許の質の問題と外国市場に対する期待の相違によるものと考えられる。オランダの比率が高いのは,国内市場の狭さから,またドイツの低さは,自国の経済成長率の高さから自国市場に関心が高かつたことによつたものであろう。わが国の場合も,地理的条件に加えて,高い成長率にささえられた自国市場の拡大が企業の伸びを吸収したため,企業家の目が外国市場にさほど向いていなかつたことも大きな原因であろうが,今後わが国企業の外国に対する関心が高まり,技術水準の向上に伴つて,対外国出願は増えていくものと思われる。このような外国特許は,将来の技術輸出,商品輸出の増大の潜在力となるものだけに,これらの出願がより以上に盛んに行なわれることが期待される。

2  特許出願状況

ここで,昭和40年における特許の出願および処理状況をみてみよう。昭和40年における出願件数は81,923件,うち外国人出願21,127件となつており,全体の26%となつている。さらに出願総数を部門別にみると,化学が22,634件で総数の30.8%,ついで多いのが機械の15,633件で19%,日用品,家具,繊維,雑貨が10,435件で14%という順になつている。

また最近における特許出願状況を特許分類別にみると第5-15図のごとくであり,これは,昭和26年〜39年に出願数が1〜10位に入つたことのあるもの(計19種)の全出願数中における占有率の変化を示したものである。これは,おおむね三つの群すなわち,占有率が増大しつつあるもの,減少しつつあるものおよびある範囲内にとどまつているものに分けることができる。第1の群に属するものは,有機化合物,ゴム,可塑物,高分子および電気的諸装置(トランジスタ類を含む。特に,近年はこの分野ではトランジスタ類が主体であり,昭和40年には,この分野のうちの75%を占める。)で,このうち前2者は,常に1,  2位を占め,かつ占有率の急速な伸びを示している。後2者は,極めて小さな割合から,急速に占有率を増大してきたもので,その研究活動が急激に活発になつたことを示している。

第2の群には,紡績・ねん糸・糸条処理および塗料・顔料・塗装・接着が属し,両者とも絶対数としては年々増大しているが,相対的には研究成果水準の停滞をきたしていると考えられる。第3の群には,残り13分野が属し,前2群の中間的傾向をもち,そのうちでは金属加工に関する分野がやや高い占有率を示している。

一方このような出願の増加に対して審査処理件数は59,775件,このうち特許査定は28,325件で47%,拒絶査定は29,589件で50%,無効365件で1%,取り下げ1,263件で2%,変更233件となつている。

このような年々増大する出願はこれらの処理能力に不足をもたらした結果,特許出願内容の高度化ともあいまつて審査を遅延させており,現在特許,実用新案の審査に要する期間は,1件あたり3年半に達している。

このような実情では,発明者に対して迅速的確に独占権を付与し,それを保護することは不可能になるとともに,すみやかな出願内容の公開を基礎とした技術進歩が阻害される結果,特許公開までの間の重複研究が行なわれることとなり,わが国産業界全体にとつても大きなマイナスになつている。この解決のために事務処理の迅速化などを含む種々の方策が検討されている。


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