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第5章  技術の交流
1  技術導入
(4)  導入技術の部門別概況


1 電気関係

40年度の電気関係の導入は,前年のほぼ横ばいの80件で,ほとんどが弱電関係であつた。

弱電部門では,特許実施権契約のみというものが68件あり,圧倒的な比率を占めている。これらはRCA,フィリップス,WE等に原理的な特許をとられていることによるもので,ラジオ,テレビ,テープレコーダー,ブラウン管等に関する技術が多い。

電子計算機では,IBMから情報処理装置の特許契約が1件結ばれたのみであつた。

2  金属関係

金属関係は,前年度の40件に対して34件と減少したが,部門別にみると,鉄綱の基礎部門はこれといつた導入はみられなかつたが,特殊綱関係ではかなり新しい技術導入がみられた。そのーつは,焼結ステンレス合金の製造技術で,極めて耐蝕性の高い,機械的性能のよい合金が得られるものである。金属加工技術にも,高エネルギー高速金属成型機あるいはスパイラルパイプの製造などにみるべきものがある。

3  機械関係

40年度の導入は182件と,前年度を10%下まわり,38年度をピークに2年連続減少をみた。

機種別にみると,前年度に比べて車両と船舶が増加したのに対し,工作機械,化学機械の減少が目立つている。一般に基礎部門の機械の導入はほぼ一巡して減少傾向にあり,特殊機械あるいは機械部品等の技術導入が増加傾向にある。

船舶の導入範囲については,基礎部門から部分品,塔載品等のあらゆる面にわたつている。特に本年は部品,荷役関係が多く,新しいものの一つに,木材のかわりにゴムシーリングを用いた推進軸の軸受がある。船舶は荷役設備の改革期に入つたためか,荷役関係の技術導入も部品に劣らず多い。

車両関係は20件を数え,機種別導入件数のなかでは昨年に続いて第1位を占めている。そのなかでも本年は部品に関する技術が多く自動車関係では相対的に遅れたところであることを考えると今後も導入が続くことが予想される。

建設関係では,従来バワーショベル,プルドーザー等の汎用建設機械の導入が多かつたが,本年は数件で,この種の技術はほぼ導入しつくされた感がある。これにかわつて,湿地用作業車,トンネル掘進機等の特殊機械の増加が特徴的である。

合成樹脂成型機の技術導入は,合成樹脂の使用量の増大に伴つて,ここ数年来非常に盛んであつたが,昨年頃から特殊用途用のものが目立つており,本年も合成樹脂瓶成型機,発泡成型機等小型の専用機が中心になつてきた。

化学機械,工作機械などは,過去の実績を大幅に下まわり,特に工作機械は2件に止まつた。本年は特に各種食品用機械の増加が著しく,今後も消費財に関連する機械はますます増加を続けることと思われる。

4  化学関係

40年度の件数は81件で,前年の95件に比べ14%の減少である。

まず,化学プラントに関するエンジニアリング技術の導入は28件を数え,化学関係のなかで最も件数の多い部門であつた。これは,前年に引き続き肥料工業ならびに石油化学工業の新増設計画があつたことを反映しているものであろう。

合成樹脂関係では,放射線によるグラフト重合など新しい技術の導入が行なわれた。その他ブロー用塩ビコンパウンド,塩ビの塊状重合技術などが導入された。

合成樹脂加工ではFRP,ポリウレンタンモールド,弗素樹脂軸受等比較的末端資材に直結した特殊加工技術が多かつた。

その他化学関係では,例年のごとく塗料,接着剤の技術導入が本年も多く,水溶性電着塗料,船舶塗料等の6件を数えた。このほか非電解メッキ法によるプリント配線技術,塩安分解技術等の新しい技術が二,三みられた。

5 繊維関係

生活水準の向上に伴つて,繊維関係の技術導入は前年に引き続き増加している。紡糸,肪績あるいは織布の加工技術も相変らず導入されているが,最近は縫製,服飾デザイン等最終製品に密着した技術の増加に特徴がみられる。これら服飾デザイン等の技術導入は,一昨年初めて認可されたが,本年は8件を数え,ファンデーション,ワイシャツ,水着,スポーツウエア等の技術導入もみられるようになつた。また,本年はファンデーションに関しての合弁会社が初めて認可された(外資比率50%)。

6  その他部分

その他部門の導入は,39年度から急激に増加しはじめており,40年度は31件を示したが,特に食品加工関係が,39年度が3件に対し40年度は10件と急増したのが目立つている。

この分野は,外国企業にとつても魅力ある市場とみえるらしく,すでに円ベース等の形式で企業進出を試みているケースが少なからずあり,今後も増加を示すことが考えられる。

(5)今後の技術導入

1962年頃における日米の技術,資本提携を行なつた会社をまわつて,技術交流や資本提携に関する経験や政策,直面している問題や未来の政策等について調査したアベグレンレポートによると,アメリカの企業が日本の企業と技術提携を行なう場合,もはや独自性もなく,最新でもない技術について特許やノウハウを与えるのが最も成功を収めているとし,さらに,競争をよびおこす危険を避け,利潤を極大化するためには,日本市場が狭すぎて直接投資が成り立たないような商品や生産方法に技術提携を限定するのが一番であるとしている。また,日本の技術発展をフオローするための有効なメカニズムを確立することをねらつてクロスライセンスを考慮する企業がふえていると述べている。

この調査時以来のわが国のアメリカからの技術導入はこの報告の懐疑的表現とは別に,相変らずの伸びをみせたわけであるが,現在の日本に対して技術輸出を行なつた海外企業が持つている考え方の一端を示しているものとみることができる。日本側からみれば,戦後における活発な技術導入が種々の問題はあるにしても,わが国の高い経済成長をもたらした大きな原因の一つであるということができるが,反対側のアメリカからみる場合,経営参加を伴わない技術輸出は,日本の経済成長をもたらし競争相手として浮び上らせるにすぎないと認識しだしてきた現れとも考えられる。このような認識の高まりは,今後の技術交流に対する海外企業の態度に徐々に変化をもたらすことになるわけで,技術導入についての安易な考え方にも一考を要する問題となろう。

わが国の戦後における技術導入は,昭和24年に制定された「外国為替及び外国貿易管理法」と昭和25年に制定された「外資に関する法律」に基づいて政府の管理下におかれてきた。前者による技術導入を乙種,後者によるものを甲種の技術導入といつているが,わけても大きな影響を与えたものは後者の「外資に関する法律」(以下,外資法と呼ぶ)によるものである。

外資法は戦後,外資事情が著しく不安定なため為替管理のもとに対外送金を厳しく規制していた状況下で,荒廃したわが国経済再建の一方途として積極的に外資導入を促進するため優良な外資についてはその投資収益および元本の対外送金を保証する措置を講ずることを目的として制定されたものである。この間に,導入技術に関してはわが国の経済発展に必要な技術と,必要でない技術を区別し,必要な技術についてはその企業化を援助するかたわら,過当競争をもたらすような新規の導入はこれをおさえるなどの政策をとることによつてわが国の経済成長に大きな影響を与えてきたものである。その後の外資法は何回か改正されたが,その運用にあたつては,当初は送金保証を行なうに足りる良質の外資のみが認可されていた。その後,わが国の経済の順調な発展に伴つて,外国企業の対日投資意欲が増大し,他方わが国産業の国際競争力が強化されて,外資の受入れ体制も次第に整備されるとともに,外資法の運用も次第に緩和され悪影響を与えるものでなければ認可するという基準に変つていつた。

このように,外資法は制度面,さらに運用面にわたつて緩和措置が,逐次とられてきたが,それでもなお欧米先進国と比較すれば,OECDの資本自由化コードに対する留保数も18項目と,加盟国中最も多い国から数えて第3番目に位しており,それだけに,諸外国の日本に対する自由化圧力は絶えずかけられている。

第5-4表 経営参加的株式取得認可件数推移

第5-5表 技術導入を伴う経営参加的株式取得の外資別持株比率別 件数

このような状況にあつて,41年6月の日米経済委員会を契機とじて,政府は資本取引自由化のスケジュールを具体的に検討するということになつた。

今後の資本取引自由化の具体的範囲,スケジュールは今後の検討をまつことになるわけであるが,このような動きは,技術導入のかたちにも少なからぬ影響を与えることが予想される。

その影響の第1は経営参加の増加である。

現在までの経営参加的株式取得の認可件数の推移は,日本銀行の資料によると第5-4表に示すとおり,40年度は前年度より減少はみせているが,大局的には増加傾向を示している。またさらに,これらの認可されたもののうち技術導入を伴うものの外資側の持株比率別の割合を経年別に比べてみると,その変化は大きく,第5-5表に示すとおり,昭和37年度の実績では外国投資家の持株比率30%以上のものが約78%であつたのが,昭和40年度の認可件数34件中での比率は94%と大幅な上昇をみせている。

このような合弁形式による導入形態の増加,持株比率の増加傾向は,日本経済の成長とともに,単なる技術輸出よりは,合併形式による技術輸出によつて今後日本の経済に参加する機会を得たいと願つている外国企業が多いことを示している。

このような外国企業の要求は,日本経済の成長とともに高まつてきたものであるが,日本側としては経営権の確保をねらいとして,導入技術の重要度に応じて持株比率に,多少の制限を加えてきたものである。最近にいたり,企業の競争力の充実と国際的な自由化要求に応じて,前述のような導入基準の緩和を行なつたことにより,持株比率の上昇シフトが急激に進んでいるわけであるが,外国企業の,さらに一層の自由化を求める声は依然として強いことを考えれば,現在の自由化の動きが今後の技術導入に与える影響について留意しておくことが必要であろう。

第2の影響として,外国企業の直接投資の緩和が行なわれた場合,国内の技術水準,技術開発力の弱い分野の企業においては,日本に進出した同分野の外国企業との技術的格差がそのまま国内に持ち込まれることが考えられ,大きな影響を受けるところがでてこよう。

このような事態にそなえて,わが国の産業体制の整備とともに,国内の技術開発力の育成がますます重要になつている。


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