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第5章  技術の交流

技術の発展段階をながめると,過去においてはすぐれた発明の創出が,個人的な業績に負うことが多くみられたのに対し,近年になるにしたがい,革新的な新技術や新製品の多くが,研究機関あるいは研究グループなどの組織化された単位から生れる傾向がみられる。

これは,科学技術の発展に伴つて研究分野の専門化,細分化が進むとともに,研究開発に当たつて,各分野を結ぶ総合的な知識が必要とされるようになつた結果,個人間の知識の交換を図る組織化された開発体制の必要性が高まつたことによるものと考えられる。

このような傾向が進むにつれて,さらに,研究機関,企業体などを単位とする技術開発のグループの間で知識を交換し合う必要性が生じてくる。このグループ間の知識の交換,すなわち技術の交流は,以上のごとき科学技術の発展段階からみても,科学技術の進歩発展に欠かせないものであろう。

最近のわが国における国内技術交流は活発化しつつあり,技術の提供,受入れ件数とも年々増加の一途をたどつているが,他方,国外との技術交流の状況をみると,昭和40年度における技術導入は,甲種,乙種 )あわせた導入件数が958件と,前年より83件の減少を示し,昭和33年度以来急激な伸長をみせた技術導入もここ2年間停滞状態をみせているとはいえ,なお,盛んなものがある。これに対して技術輸出の状況をみると,年々大きな伸び率をみせているとはいえ,技術導入との比率は,為替収支によると昭和40年7.6%にすぎず,ほとんど一方的な導入超過を示している。


注) 甲種技術導入とは「外資に関する法律」により認可されるもので契約期間または対価の支払期間が1年をこえるもの,乙種技術導入とは「外国為替および外国貿易管理法」により許可されるもので,契約期間および対価支払期間が1年以内のもの。

また,外国技術導入に対する安易な依存は技術開発にいたる基礎的な技術研究の機会を失わせることになり,したがつて新たな技術開発の潜在能力の育成を阻害する結果を生み,技術導入への依存度をますます高めるおそれがあることから,今後自主技術の開発を図るうえで,検討されなければならない問題となつている。

しかしながら,最近の技術開発は,総合的,多角的に行なわなければならないすう勢にあるため,莫大な開発資金,完備した研究設備,多数の研究者や技術者を背景とした大規模な開発体制が有利になつてきている,という現状からみれば,わが国においてすべての分野において超一流であることは望みえず,この面からいえば技術導入もわが国科学技術の調和のとれた発展のための有効な手段である面もあると考えられる。

このような技術交流をめぐるわが国の環境をみると,わが国の開放経済体制への移行は資本取引の自由化の段階に向おうとしており,これに対処して国際競争力の一層の強化を図ることが急務となつている。欧米においては激化する国際競争に対処するため,すでに各国政府が科学技術政策の強化,産業体制の整備促進を図つており,産業界も合同,合併などによつて企業規模の大型化を進めるなどして競争力の強化に努めている。しかしながら,わが国においては,国の財政規模,企業規模等からみて,欧米諸国に比して研究や技術開発に対する資金的余力が乏しく,今後の国際競争に対処して技術水準をさらに上昇させるためには欧米諸国以上の努力が要請されている。

このためには,国内における共同研究の推進,企業内における研究分野の重点化,研究努力の集中化等を行ない,各企業内の技術的蓄積を有効に生かし,かつ企業間における重複研究をさけることが重要となろう。このような重点化,集中化は,他分野の必要技術を外部に依存するという事態も生ぜしめるが,今後はこのような効率的な自己開発による技術を裏付けとして技術の交流を行なうことによつて科学技術の発展に対処することが必要となろう。

国外との技術交流は,わが国の研究開発活動のバロメーターであると同時に,今後の技術開発に大きな影響を与えるものであるだけに,その適切な活用がますます重要になるとともに,効率的な研究活動を行なうためには,国内における技術交流が極めて重要なものとなろう。


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