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第3章  科学技術人材
3.  人材の確保とその需給
(2)  民間企業における科学技術者の充足状況


わが国では,科学技術者の呼称も必ずしもはつきりとしたものではなく,この言葉は使用されるところによりかなり内容の異なつたものになつている。したがつて,一概に,“科学技術者”と呼ばれても相当な範囲のひろがりをもつことが予想され,各種調査において科学技術者数にかなりの差異がみられるのも,それぞれの調査方法,範囲等に相違あることも原因であろうが,この定義の相違にも大きい原因があると思われる。

科学技術者を幅ひろく定義すれば,科学技術の推進にたずさわる人々であり,そこには一定の能力が要求され,その人の素質,独創性,潜在的能力などがその行動に最も密接に結びついている職種であるといえよう。

文部省が昭和38年に行なつた「職場における学歴構成調査」によれば,技術者は約95万人であり,全就職者の約2%を占めている。学歴別では,このうち高等教育卒業者は34万3,000人で,全高等教育卒就職者の約1割を占め,大学理工学系卒業者にとつては,技術者はその教育の内容を最も効果的に表わすことのできる職種の一つであると考えられる。この技術者数は,その後の需要が引き続き高いために,現在ではさらに増加しているものと思われる。

一般に,技術者は,直接,間接的に生産工程における技術的職務に従事し,その生産活動を助長するものであるが,産業界においては,一般労働力とはまた異なつた意味において質的,量的な充足に頭を悩ましているわけである。

科学技術庁の調査においても研究者,技術者の5年後の需要はそれぞれ現在の53%,26%増であるとしており,産業別資本金,規模別では需要にかなりの格差がみられるにせよ,技術者が今後も増大していくことは疑いのないところであろう。この傾向と機械振興協会経済研究所の調査結果 )により過去の技術者の充足状況についてみると,まず,その構成では製造業20種平均では,職員 注1 )10人に対して約2人,従業員 注2 )10人に対しては0.7〜0.8人の割合で技術者が存在しており,第3-28,3-29図のごとく,全体では昭和34年度以降漸増の形をとつている。しかし,これを資本金規模別にみると50億円以上の大企業では,一貫してかなり高い増加を示しており,意欲的に技術者の増員が進められているのに対し,それ以下の階層では34年度以降37年度までは減少し,38年度に致つて始めて増加しており,かなりの相違がみられる。これは,最初は事務系職員の増加があり,相対的に技術系職員構成率の低下をもたらしたが,その後技術者の増加対策の効果が現われ,その構成率の上昇となつて表われて来たものとみられる。このように,一般には,技術者は増加の傾向となつているが,しかし,その質に関しては,科学技術庁調査においても,大学教育の充実等,技術者の資質の向上に関しては企業側も強い関心をよせており,企業意識としては必ずしも現在の陣容では満足は示しておらない。その状況を先の経済研究所の調査により資本金規模別に技術者の量的,質的不足状況についてみると第3-13表のごとく,特に資本金1億円以下の小企業において技術者の不足が著しく,これに対して,大企業になるほどその不足感は減少し,50億円以上の企業では量的,質的ともに不足を感じていない企業が47.9%と約半分を占め,また,不足を感じている企業においても質的な要素が非常に強くなつてきている。また,このデータに各企業の規模別段階の技術者数ウエイトをかけると,第3-30図のごとく大企業における質的不足が大きくクローズ・アップされる結果となり,少なくとも産業界においては,量的な拡充とならんで,質的な充実に大きな関心をもつていることがわかり技術者充足の問題点は量的な面よりも,質的な面に重点が移つて来たものと思われ,新技術開発の推進という点からみても,人的面の質的な不足が今後の大きなあい路となり,少なからざる影響を受けるものと思われる。


注)わが国産業界における技術者の充足状況に関する調査報告書:昭和40年,財団法人機械振興協会経済研究所,中核技術研究会


注1)職員とは従業員のうち作業員を除いたものをいう。


注2)従業員とは当該企業に所属する職員,作業員の合計で雇用期間1ヶ月未満の従業員は含まれない。

第3-28図 職員中の技術者構成率の推移

第3-13表 技術者の充足状況

第3-29図 従業員中の技術者構成率の推移

第3-30図 技術者の充足状況

第3-31図 技術者の部門別構成

第3-14表 能力別にみた技術者の不足状況

それでは,この質的の不足の内容はどの段階であるかをみると,能力的には中級技術者の不足をうつたえる企業が各段層とも圧倒的に多く,この分野の充実が今後に課せられた人材養成の大きな課題であるといえよう。( 第3-14表 , 第3-32図 参照)

部門別では,その不足が研究,設計,製造の3部門に(集中化の傾向にある。( 第3-15表 参照)一方,技術者の部門別構成では,第3-31図のように製造に約1/3が配置され,続いて,設計,研究,管理の順であり,これでなおかつ,上記3部門の不足をうつたえていることからして,今後の充足状況を考えれば,その構成比率はこの3部門を中心として,今後大きく変化していくものと予想される。

第3-32図 能力別にみた技術者の不足状況

次に,専門分野別にみた技術者の充足状況については,「やや不足している」のは,機械が最高で,ついで電気,通信,応用化学,土木,建築,精密機械;化学機械の順となつている。「非常に不足している」のは,やはり機械が最高で,ついで電気,通信,化学機械,応用化学がほぼ同一水準で続いている。

これを資本金規模別にみると,大企業では,機械,化学機械,応用物理などがあげられ,資本金50億円未満では,これ以外に電気,通信,応用化学などがある。特に応用物理の不足を表明しているのは,資本金50億円以上の大企業のみである。これを技術者の専門分野別構成(第3-16表)と対比してみると,基本的には,今後の技術者の需要はやはり,現在の構成ベースの高い専門分野において大きいといえる。しかし,なかには一部カイ離の傾向もみられるが,化学機械の場合は,この専門分野の内容が比較的最近に変化したこととともに,近年の石油化学プラント,あるいは化学工業関係のエンジニアリングに関する企業の急激な増加による需要増加が重なつたため,この分野の専門技術者の不足が著しくなつたものとみられる。また,応用物理の場合は,近年の企業における技術向上の必要性から比較的基礎分野の人材を多く要求し,一方,この専門分野は,その能力要求が非常に高度なものであり,要員の採用にあたつては大学院修士課程以上のものが要求されるなど,これらの点がその不足的傾向を高める原因となつていると考えられる。

第3-15表 部門別にみた技術者の不足状況

第3-16表 技術者の専門分野別構成

第3-33図 技術者不足の原因

以上のごとく,わが国の企業の大部分は,何らかの形で技術者の不足を意識しているわけであるが,これを人的面に起因するものと,企業面に起因するも,のとにわけ,技術者不足の原因をみると,第3-33図のようになり,人的面においては,小企業にいくほど,“採用の困難”を唱えているものが多い。また,その困難度も,小企業になるほど著しい。これの原因としては,給与等労働条件が悪いこともあり,また大学卒業者の大企業への指向性なども考えられる。次に,企業面の原因としては,企業の規模の拡大があげられ,また,大企業においては新分野への進出,新規技術の採用があげられ,また,一般に“企業規模の拡大”と“新規分野への進出”により,技術者の需要は増大したが,これの充足手段としての新しい技術者の採用は困難な傾向にあるといえよう。


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