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第3章  科学技術人材
3.  人材の確保とその需給
(1)  大学院における人材供給


わが国の高等教育機関は,戦後,学制改革とともに,新制大学,短期大学とも,その学校数,学生数が非常に増加し,さらに,生活水準の向上は,大学への進学率を高め,将来は,同年令人口層に対して約30%が大学入学者となることが一般に予想されており,戦前少数の人材養成が行なわれていた大学とはその性格を大きく異にしてきた。このような大学生数の増加は,わが国の知的水準の向上等国力発展に寄与する面が大きいことは否定し得ないところである。一方,それとともに,最近のような進歩のはげしい科学技術を十分理解吸収し,駆使する能力を培うためには,現在の教育年限では短かすぎるとし,高級科学技術者の養成機関としての大学院の存在が最近大きくクローズアップされてきた。すなわち,科学技術庁の調査においても 注1 )研究開発を推進すべき方策として研究者の資質の向上が最も強く要求されているが,その解決の具体策としては,大学院教育の充実に期待するむきが強い。また,技術者についても大学院卒の需要見込みを非常に高いものとしており,5年後は現在の2倍の需要が見込まれ,産業別には,4倍を越すものと見られる。基礎科学の振興,新領域の開拓,新技術の創出等のためには,高い研究能力のある科学技術者が必要であるが,その人材の養成を組織的,体系的に行なう機関は大学院であり大学の学部とは異なつた意味で,その機能の発揮が望まれる次第である。このことについては,昭和41年8月に出された科学技術会議の「科学技術振興の総合的基本的方策に関する意見」においても大学院教員組織の改善充実,施設の整備充実,研究,研修経費の増加,学生の他機関における研修の検討,奨学制度の充実等の諸方策が述べられており,科学技術の高い水準を維持していくためにも大学院の役割はますます重要性を増しつつあるといえる。

以上をわが国の大学院卒業生の就職状況 注2 )について,この分野の人材の需要構造をみると,昭和39年度の理,工,農,医学の大学院卒業生の就職率(修了者からの就職を希望しない者を除いた数に対する就職者の率)は,修士課程修了者で94%,博士課程修了者で74%であり,専攻別では,工学関係専攻者の就職率が,修士課程修了者で99%,博士課程修了者で97%と最も高い率を示している。

そ就職先は,修了課程によりかなりの相違がみられ,修士課程修了者はその63%が民間企業に就職しているのに対して,博士課程修了者では,わずか12%であり,残りのほとんどは学校,官公庁である。民間企業に最も高い率で就職しているのは,修士課程の工学関係であり,最も低いのは,博士課程の理学関係である。


注1)「科学技術振興に関する基礎調査」昭和41年,科学技術庁


注2) 「大学院実態調査報告書」;昭和41年,文部省

次に,就職者の産業別分布をみると,第3-23図のごとく両課程の間にはかなりの差異がみられ,修士課程修了者では,製造業に対し薬学の68%,工学65%等全体で57%が就職しているのに対し,博士課修了者は製造業にわずか6%とそのほとんどが教育機関,研究所等へ就職している。

第3-23図 就職者の産業別分布(昭和39年度)

第3-24図,就職者の職業別分布(昭和39年度)

第3-25図 教員として就職したものの学校種別分布(昭和39年度)

職業別分布においては,第3-24図のごとく修士課程,博士課程修了者を問わず,教員,研究者,技術者等の専門的,技術的職業に就職しているものが大部分で,博士課程はこの傾向が特に著しい。まず,修士課程修了者においては,この3職種に就職しているものはその率で理学関係99%,工学関係96%,農学関係97%薬学関係95%となつている。しかし,その内容をみると学問分野によつてかなりの相違がみられ,理学関係は全就職者の50%が教員になつているのに対し,工学関係は,技術者が69%と非常に多い。農学,薬学関係は,特に一職種に集中する傾向はみられない。一方,博士課程の方は,当然のこととはいえ,これら3職種に就職したものが圧倒的に多く,理学関係99%,工学関係97%,農,医,歯,薬学関係それぞれ100%となつており,これをさらにくわしくみると農学関係の修了者は研究者への就職が他の専攻の者より比率が高く,工学関係は前の修士課程とは逆に技術者はわずか13%で,教員および研究者にそのほとんどが就職しており,同じ大学院でも両課程の間にはかなり性格的な相違があることがわかる。

この博士課程では,一般に教員への就職が多く,理学関係の76%を最高に,医,歯,薬学関係の39%までこの分野の需要が非常に高いことを示している。

医,歯,薬学関係は,医療,保健従事者が56%と最も高い率となつている。両課程を通じて,教員として就職したものは665人,32%となり,技術者にはやや及ばないものの,各学問分野において平均した就職者数がいることが特徴である。この教員をさらに細分してみると第3-25図のごとく,そのほとんどは大学に就職しており,理,工,農,医学全体では,修士課程で82%,博士課程で98%となり圧倒的である。この大学の教員になつたものは,教育的業務に従事するのはもちろんであるが,研究的業務もまた非常に重要な仕事であり,研究者であるとみなして差支えないと考えられる。そこで大学の教員と研究者を合計してその比較をだすと,修士課程修了者で36%,博士課程修了者で60%と最も高い率の職種となつている。

第3-26図 昭和40年度博士課程最高年次在学生の希望職業(上段)と昭和39年度博士課程修了者の就職した職業(下段)の比較

また,この職業の分布と,博士課程最高年次在学者の希望職種の分布とを比較 注) することにより,本人の希望と,その需要の差を大体把握することができる。( 第3-26図 参照)まず,いずれの専攻に関しても,教員についてはこれを志望するものの率よりも実際に就職した率が高く,これに反し,研究者についてはこれを志望する者の率より実際に就職した者の率の方が低い。しかし,先にも述べたように,大学の教員を研究者とみなした場合には,かなりその希望はかなえられているとみるべきであろう。

就職した職業と専攻との関連性については第3-27図にみるごとく,あまり関連性のないものが,修士課程修了者では農業関係が5.5%であるほかは大体13〜15%である。これに対して,博士課程修了者に関しては,農学関係が11.1%と逆に多くなつているが,その他はいずれも低くなつており,かなり関連性が高いことがうかがわれる。また。職業別では博士課程修了者に比べれば修士課程修了者の研究者,技術者関連性の薄いものが相当高い。


注)調査は,就職希望をした学生が実際に就職した職種について追跡調査を行なつたものではなく,最高年次在学者とぞの前の年に卒業して就職した者と比較したものである。

第3-27図 就職した職業と専攻との関連性(昭和39年度)

以上のごとく人材養成の機関としての大学院の実態就職状況からみると,同じ大学院であつても,修士課程の修了者と,博士課程の修了者とではその性格がかなり異なつていることがわかる。一般に,修士課程の場合は,大学の延長的な性格が多分にみられ,特に工学関係では技術者として就職するものが多く,また,民間企業への就職もかなりの率を占めるが,これに反して,博士課程の方は,そのほとんどが研究関係に従事している。


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