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第3章  科学技術人材
2.  研究者と研究活動
(2)  研究者等の質的な問題


研究活動の組織化,総合化は,研究者の量的な需要を増大したが,研究活動は個人の努力に負うところが極めて大であり,他の分野のように量的な拡大によつてのみ当初の目的を達成しようとすることははなはだ困難である。

ここに,研究者の質的な向上が,量的な増加とともに強く要求されるようになつた。

最近の研究活動は,昔のように天才的な一個人の手によつて進められていくよりは,組織化された集団で進められる傾向が強くようになつたが,この結果,研究者に要求される質も昔とはかなり異なつたものになつてきていると想像される。研究者等について要求される質的な面についてみると,科学技術庁の調査では研究所長とか研究部長のような研究管理者については「研究の方針と計画をたてる能力」が最も数が多く,続いて「研究面で指導できる学識」となつている。すなわち,研究管理者としては,計画力,指導力と学識を持つことが要求されており,これらの事項は一般に長い経験によつて得られるものであり,しかもその一つ一つが研究環境の形成に深く関係しており,新しい研究者を育てるためにもゆるがせにできない問題である。これらの事項を勘案した場合この研究管理者は最も高い能力が要求される職種であり,また逆に最も不足の懸念される職種でもある。一方,研究者から研究管理者に対する質的な要求としては,以上の諸要素のほかに,「適切な研究結果の評価」を期待している。年令別階層でこれをみると,第3-9表のごとく,計画力,指導力,適切な評価等の期待が最も強いのは,35才から39才で,中堅研究員,研究リーダー等,研究成果の取りまとめの能力を要求される年代で,それだけに研究方針を最も敏感にうける階層であり,また,研究管理者と直接接触する機会が多いだけに管理者への期待も高いものとみることができる。以上のごとく研究活動の質的変化は,研究管理者に高い素質を要求する結果となり,その役割はわが国の研究活動推進の上にますます重要性を増している。

第3-9表 研究管理者に要望する適性(年令別)

第3‐19図 研究管理者の適性として必要 なこと

第3-20図 研究リーダーの適性として必要なこと

第3-21図 研究者の適性として必要なこと。

次に,実際に研究活動に従事し,しかも多くの研究者を指導してゆく研究リーダーに対しては人事院の調査によれば,第3-20図のごとく学識が最も強く要求され,「研究面で指導できる学識」をほとんどの研究者が要求しており,続いて「研究の方針と計画をたてる能力」 「研究職員の気持を理解する力」「自分でも研究を行なう意欲」「研究結果の評価ができる力」「研究のアイデアを見出す才能」があり,そこには,研究管理者と研究者の双方の特性を備えた人材が要請されている。

研究者については,何よりも独創性が強く要求されている。科学技術庁の調査によれば,第3-21図のごとく調査数の約半分にあたる43.5%は,この独創力を研究者における最も重要な適性であると考えており,さらにこれを地位別にみると,研究管理者が最も強くこの適性を要望しており,導入型より創造型へと大きく転換しつつあるわが国の研究活動で,最も強く求められるものは何よりもこの独創力であると考えられる。研究段階別にみると,基礎研究がこの最点をも重視しており,以下,応用研究,開発,技術サービスの順になつている。この独創力についで重視されているものには,「理論的なものの考え方をすること」がある。これについては,その研究階段に関係なく似たような割合を示している。これらの諸点について専門別にみると,物理系基礎学の研究関係者はその54.O%が独創力を最も重要なものであると考えており,物理系応用学が最も低い数値を示しているが,それでも40.O%の割合を示し,いかに研究者の独創性が尊ばれるかがうかがわれる。また,この独創性の発揮できる分野としては,第一に「斬新なテーマの発案」があり,続いて「基礎研究の成果をあげる」がある。

次には逆に,研究者が研究を進めていくためには,最も妨げになるものとして考えられるものには,第3-22図のごとく「同僚との協調性がなく孤高的である」 「自分の立場のみから考えたり行動したりする」があげられており,一先に述べた独創力が研究者にとつて基礎的な要件であるならば,研究活動を組織として進めてくいためには,この協調性も研究者に要求される新しい質的な要素であろう。

次に,研究補助者については,研究業務の複雑化,大規模化とともに,その必要性が増大し,研究活動の良否は補助者の援助にも左右されることが多くなつてきた。この補助者に対する質的な要求も見逃しえないものがある。

すなわち,人事院調査によれば学歴については,高校卒以上を希望するものが一般的で,なかには短大卒を希望する分野もあつた。性別では男子の方がやや多い。性別を特に考慮しない分野も多い。しかし,鉱山や,土木のごとく男子を強く希望する分野があることはもちろんである。希望年令としては,全体的には若い方を良とするのが圧倒的であり,農学部門にあまり年令にこだわらない分野が多少みられる。さて,補助者として必要な能力,性格としては,  「研究心に富んでいる」が最も高く,以下「責任感がある」「協調性がある」「体が丈夫である」「将来研究者としてたてる素質がある」「誠実である」 「手先が器用である」が続いており,一面においては,研究心,責任感等研究者に似た性格が強く要求され,他面では,協調性,誠実等研究協力者としての性格,また,体が丈夫であることや手先の器用等,技能者的な性格もあわせて要求されている。

第3-22図 研究者として好ましくないこと。

前述のように,研究者の質的な面については,個人としての面と組織としての面とが同時に要求されるようになつた。

研究活動が個人の努力の成果の集積である以上,そこには,やはり個人の研究者の基礎的学力や,独創性,創造性等に頼るほかはなく,また,,同時に研究活動が組織的な集団による研究に移つてきた今日,協調性を基調とした多数の研究者が必要になつたのも当然であろう。ここにはじめて,多様性に富んだ研究が進められ,同時に,それには,これらの研究をリードする新しいタイプの研究管理者と,高い技術と能力を備えた研究補助者があり,あらゆる業務,専門職種等の合理的な組合せのもとにはじめて独創的な研究の成果が期待されるわけである。


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