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第3章  科学技術人材
2.  研究者と研究活動
(1)  研究活動の多様化と研究者


企業において,新しい技術の採用,新原材料の利用,新分野への進出等従来考えられなかつたような技術的な展開が行なわれている今日,これを支える研究者もまた量的,質的に大きく変化している。

これを産業別,専門別に研究者の配置状況でみると,あらゆる産業に“化学”分野の研究者が進出していることが目立つている。例えば,建設業,機械工業等従来あまり化学とは関係のなかつた産業にも進出しており,しかもその割合は年々増加の傾向にある。すなわち,各産業の研究者のうちに占める化学部門の研究者の率を昭和36年と40年とで比較すると,第3-18図のごとく建設業は7%から18%へ,機械工業は5%から7%へと,その数値に高低はあるもののいずれも増加の傾向にある。また,これとは逆に,化学工業に属する“化学”の研究者は絶対数の増加はあるものの,その率では70%から64%へと減少の傾向にあり,他の専門部門の研究者が増加したことを示している。このように,その産業の専門分野の研究者の割合が減じ,他部門の研究者が増加している例は,鉄鋼業,金属製品等の各産業における“冶金”部門の研究者,機械工業,電気機械工業における“機械”部門の研究者の減少等にもみられるようになつた。

これをさらに,主要産業について資本金規模別にみると,一般に大企業ほど,一分野の研究者の集中度が低い。例えば,化学工業における“化学”部門の研究者の構成比は,資本金10億円以上6%,同1億円以上10億円未満71%,同1,000万以上1億円未満72%となり,繊維工業における“繊維”部門の研究者については,資本金10億円以上22%,同1億円以上10億円未満58%同1,000万以上1億円未満54%,同100万以上1,000万円未満84%,電気機械工業における,“電気・通信”は,資本金10億円以上52%,同1億円以上10億円未満64%,同1,000万円以上1億円未満72%となつている。また, 一般に,大企業においてその構成比が増加傾向にある専門分野としては“数学・物理”があげられる。

学問分野別の,研究者の配置先を産業別にみると,一産業に集中していく分野と,逆に拡散していくものとに分類できる。例えば“数学・物理”は,電気機械工業に5年間にこの専門分野の研究者数の35%から41%へ,“化学”は化学工業に41%から47%へ,“電気,通信”は電気機械工業に68%から70%へとその配置が集中化の傾向にある。これに対し,拡散しているものとしては“冶金”の鉄鋼業への配置が35%から31%へ,“繊維”の繊維工業が69%から51%へ等が例としてあげられる。この傾向は,先に述べた産業における専門分野研究者の比率減少と相反するようであるが,例えば化学工業においては,“化学”の研究者の絶対数が増加して,専門分野における比率は上昇しても,産業内では他の分野の研究者の減少といつた結果となつて表われたもので特に矛盾したものではない。

第3-18図 主要産業研究者のうちに占める化学分野の研究者の比率の推移

また,研究活動が大企業に集中する傾向にあることはくりかえし述べたが,この傾向は,一定規模の研究を進めていくためにはやむを得ないとしても,だからといつて小企業の研究活動を無視することは出来ない。小企業の場合,その研究活動は非常に狭い分野でなされる場合が多く,しかもその結果はただちに企業の経営活動に結びつく例が多々ある。したがつて小企業においては,1産業に1分野の研究者が集まる傾向が高いのは当然のことであり,今後もこの傾向は続くものと思われる。小企業においても企業の発展のための研究活動の重要性は大企業と何ら変るところはなく,また,その研究活動が小規模であるからといつて,その研究を過小評価することは非常に危険であり,中小企業の研究者の減少は好ましい現象とはいえない。また,今後,小企業が研究活動を推進していくためには,国立研究機関やコンサルタントの利用等を積極的に考慮すべきであろう。


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