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第3章  科学技術人材

第2次大戦によつて,諸外国との技術交流がとだえていたわが国にとつて,戦後の新しい科学技術の波は,経済的社会的構造に激しい変革をもたらせた。わが国は,これら海外の新しい科学技術を速やかに消化吸収することにより過去の空白を短期間に埋めるとともに,戦後の飛躍的発展をとげる大きな基礎を築いたのであつた。この革新的とも思える新技術を受け止め,わが国の経済,社会のなかに一つの技術体系を作り上げることを可能にしたのは,ほかならぬ高い素質をもつたわが国の研究者,技術者であつた。

これら研究者,技術者の努力の結果は,先進国との技術較差を急速に縮めて来たが,今後とも,世界的な科学技術水準を維持するためには消化吸収型の研究者,技術者のみでは不可能で,創造力の豊かな人材を確保し,世界的に未開発の分野へ勇敢に進んでいく新しいタイプの人材を社会は強く要求するようになつてきている。

技術の進歩は,一分野と,他分野との関係をますます広く深くしているが,これにともない,その研究も,組織された研究機関における組織された研究者の集団によつて遂行されるようになつてきた。すなわち従来の研究には,往々にして天才的な研究者の手によつて行なわれる個人的な研究活動が見られたわけであるが,現在は,専門家集団の手によつてなされるのが多くなつてきている。

しかし,あくまでもこれらの組織を構成しているのは,個々の研究者であり,新しい科学の原理の発展や新技術の開発は,最終的には,これら個人の創造的な能力と努力によつてもたらされるものであり,これら個人個人の才能をフルに発揮させるための集団が組織であり,しかもこの組織の運営は,個人の努力によつて維持されていくものである。

すなわち,ここに新しいタイプの研究者一十分な創造力を持ち,しかも,組織の一員としてその能力を発揮させることのできる研究者一の必要性が高まつてきたわけである。

また,生産技術に携わる技術者においても,最新の技術を支え,さらにそれを発展させていくためには従来にも増して高いレベルの知識が要求されるようになつた。経済環境の異なる国の技術を導入し,それをわが国に有利な技術に改良するためには,忍耐強い試行や試験が必要であろうし,新しい技術を打ちたてるためにはさらに多くの努力を必要とすることはいうまでもない。そうして,これらの分野で活躍する技術者にとつて最も必要なものは,ひろい基礎知識の上に積み上げられた豊かな創造性であり,新しい原理や技術を理解し,開発していく能力であろう。

従来,わが国の研究者や技術者は導入技術の消化に追われていた一面もあり,未完成技術,既成技術の部分的改良に長じていると一般にいわれてきたが,これだけでは世界的な水準を越す新しい技術の確立は望み得ないわけで,世界をリードしていくような科学技術の発展を望むためには,独創的な才能を育てる必要があり,今後の人材の養成に関しては,この面からの検討が必要であろう。


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