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第2章  研究活動
1  わが国の研究水準


本節では,一般的に,わが国の研究水準が,海外と比較してどのように考えられているかを概観するとともに,主としてわが国における研究成果の水準をいくつかの尺度によつて考察する。

研究成果の水準の測定においては,その対象がひろがるほど困難の度合が増し,尺度として何を採用するかが問題になる。対象が個々の研究課題であれば,その成果を海外の同種の研究と比較することは,かなりの程度可能である。また,比較的狭い技術分野においては,大部分の研究が一つの目的に結集され,したがつて,一つの指標によつてその分野の水準を代表させることができる場合もある(鉄道における実用最高時速,ロケットにおける到達高度,誘導精度など)。しかし,分野をひろくとつた場合,特に科学的な研究分野について,客観性のある尺度を求め.ることは,非常に困難になり,それぞれの尺度は,水準のかぎられた面だけを表わすものにならざるをえない。

技術的な研究の場合には,その成果は,ほとんどの場合経済的な効果につながつており,その意味で,経済面からみた技術水準の尺度と共通な指標を,研究成果の尺度としても利用することができよう。技術水準を論ずる場合には,これらの経済指標が技術以外の要素から受ける影響が吟味されるが,研究水準の場合には,さらに,技術水準における研究以外の要素(たとえば技術導入など)を除去するような考慮を必要とする。このような考え方は,基本的には,わが国の技術水準と,それにおける技術導入などの影響とをあわせ考えて,研究成果水準(特に技術面での水準),ひいては研究水準を考察しようという態度である。

一方,研究成果の多くは,特許あるいは論文の形で公表される。したがつて,これらの発表数とその質的内容の検討からも研究成果の水準を論ずることが可能である。これらのうち,特許は,まつたく技術的な研究の成果であり,研究論文は,科学と技術の両者を含むものと考えられる。ただし,のちに述べるように,研究成果のうちには,発表されないものも相当数にのぼることを考慮しなければならない。

また,これらのような客観的な数値によらず,各分野における権威者の判断に基づいて,研究水準の比較を行なうことも極めて有意義なことである。このような,個人あるいはグループによる判断は,当然主観的要素の強いことに注意しなければならないが,個々の尺度による判断からは得がたい総合的性格を持ち,研究水準を概観するうえに大きな価値を有するものと考えられる。

研究水準の尺度あるいは判断の方法は,もとより上に述べたものに限られるわけではなく,また,上述の尺度によつても,現在は,資料の欠除その他多くの制約から,十分に論ずることはできない。しかし,最初に述べたように,研究水準の測定は,長期研究計画に不可欠のものであり,今後検討を重ねることによつて,より有効な方法を見出していくことが要請されている。そのための一つの出発点として,すでに述べたような考え方にしたがつて,研究水準の現状について,検討を行なうこととする。


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