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第1章  政府の施策
3  研究および技術開発の助成・促進


政府は,国立試験研究機関や国立大学等の研究活動の強化に努めるとともに,民間企業および公立試験研究機関ならびに公私立大学等の研究および技術開発活動を盛んにするため補助金・委託費等による直接的な助成および金融・税制面における優遇措置などの間接的な助成を進めている。さらに,新技術開発事業団による新技術の開発委託・あつ旋の推進,日本科学技術情報センター等による情報サービス活動による研究活動の促進など各種の施策の推進にあたつている。その他国際的な技術交流を一層盛んにし,わが国産業の技術水準の向上に資する技術導入の審査を通じて優れた外国技術の導入を図るとともに,税制面の優遇措置を講じて国産新技術の輸出を盛んにするように努めている。

わが国の研究活動は,研究の目的や性格に応じて国,地方公共団体,大学,企業等の試験研究機関によつてそれぞれ分担して推進されており,国が特定の研究を一層促進しようとする場合,国自身の研究活動を強化するほか,企業等に対して補助金,委託費を交付するとか,金融上の優遇措置を講ずるなど企業等の研究活動の側面援助の強化を図つている。

第1-16表 研究関係補助金・委託費等の省庁別推移

政府が支出した科学技術振興関係の補助金,委託費の最近の推移を省庁別に示したのが 第1-16表 である。昭和39年度は総額で87億円であつたものが40年度は,94億円程度に増加し,41年度には123億円に達している。省庁別にみると文部省,通商産業省,農林省,科学技術庁等の順になつているが,文部省関係の補助金は主に国・公・私立大学等の学術研究の振興を図ることを目的としており,農林省関係の補助金等には都道府県の試験研究機関に対するものが多い。現在各省庁から交付されている主な研究関係の補助金,委託費は, 第1-17表 に示すとおりである。そのうち最も大きいのは,文部省から交付されている科学研究費補助金である。昭和39年度の29億円から40年度は31億円とわずかな増加であつたが,41年度は38億円に達している。わが国の学術振興を目的とする科学研究費補助金は従来の科学研究費交付金,科学試験研究費補助金および研究成果刊行費補助金の3つを昭和40年度から統合したものであり,補助金の配分の基本方針については日本学術会議からの,意見を取り入れている。科学研究費補助金のうち1)科学研究費は,大学等の経常的研究ではまかなえないような多額の経費を要する研究に重点的かつ計画的に交付されており,昭和40年度は放射線影響,核融合,災害科学,超高層物理,がん,ウイルス,脳,大気汚染,水質汚濁,などが取り上げられた。2)科学試験研究費は,重要な応用的共同研究で基礎的なものに交付されており,さらに,3)研究成果刊行費は,重要な研究成果および学術資料の刊行を援助するものである。このほか,日本学術振興会の行なう流動研究員制度に対する助成などを含む民間学術研究団体の補助,公立大学等の研究設備助成,私立大学の基礎研究に必要な機械器具等の設備に対する助成,私立大学理科系実習用設備に対する特別助成などが行なわれた。

第1-17表 主な科学研究補助金・委託費等

産業技術を対象とするものでは,通商産業省が交付している鉱工業技術試験研究費補助金が金額としても最も大きい。この制度が創設された昭和25年度から40年度まで総額85億円の補助金が交付されており,これが戦後のわが国の研究開発を助長し,ひいては企業の合理化促進に大きく貢献して今日にいたつている。昭和40年度は,産業構造の高度化または国際競争力め強化に寄与する重要な技術の試験研究のうち指定課題に該当する106件について,7億4,700万円の補助金を交付した。指定部門は,エネルギー開発利用,工業材料,電子機器,制御・管理技術,計測技術,生産加工,高分子化学,自動車の高速性能性および耐久性向上,V/STOL,宇宙開発用機器,プレハブ用部材,産業公害防止,産業保安などである。なお,助成の面で特に促進が図られている共同研究のうち,昭和40年度において注目すべきものは,高性能大型電子計算機の試作研究,超小型電子回路の応用に関する試作研究,高性能演算制御装置によるデータ処理システムの試作研究,ビス(β-ヒドロキシエチル)テレフタレートの製造に関する工業化試験,複雑硫化鉱の加圧浸出に関する応用研究等がある。また,国として重要な研究のうち国で行なうことが困難なものについて,民間に委託してその研究の効果的な推進を図ることを主なねらいとして創設された重要鉱工業試験研究委託費については,昭和39年度にMHD発電に関する研究について委託費が交付されたが,40年度はこのほか宇宙環境を地上で再現するためのスペース・チエンバー(宇宙環境実験室)の開発研究の2件が取り上げられ推進が図られた。なお,この委託制度は,昭和41年度から新たに創設された大型工業技術研究開発制度に引き継がれ,発展的に解消することになつた。

農林水産関係の技術分野については,農林省から指定試験事業委託費を都道府県に交付して国の試験研究の推進に分担協力を得るとともに,都道府県の農業改良研究員の配置や総合助成試験事業に対して都道府県農業関係試験場費補助金を交付している。また基礎的応用的試験研究の推進を図るために農林水産特別試験研究費補助金を大学,民間などに,農林畜水産企業の技術向上を図るために農林水産企業合理化試験研究費補助金を関連企業にそれぞれ交付している。このほか,都道府県の林業試験指導機関,水産試験場等に対して試験研究費補助金が交付される。このように農林省所管の補助金等では,都道府県の試験研究機関に対する補助金等が最も多く,全体の80%近くを占めているが,これは,従来農林水産関係の研究の多くが国および地方公共団体等によつて推進されてきたためである。

また運輸技術については,輸送機関の事故防止および公害防止,高経済性船舶の建造,航空機の航行安全確保のための管制および援助施設近代化,鉄道施設および車両の近代化,港湾建設および港湾荷役の近代化,人工衛星を利用した航行援助施設の開発ならびに新型輸送機関の開発の7研究課題について,民間に対して試験研究費補助金の交付を行なつた。建設技術については,建設省から国土計画,地方計画,都市計画,下水道,河川,砂防,道路,住宅,建築,建設機械,土地測量等に関する研究ならびに建設事業の企業合理化に資するための研究に対して建設技術研究費補助金の交付を行なつた。厚生省関係では,医療研究,,厚生科学研究,事業合理化,新医療技術研究などをはじめ原爆症調査研究,エルトールコレラ防疫対策研究,麻薬中毒患者診断治療研究などの広範囲にわたる医療,社会福祉関係の補助金,委託費が交付されたが,特にがん研究助成については大幅な増額が図られた。

以上のほか,各省に共通する基礎的,総合的な研究分野例えば水質汚濁防止,凍結乾燥,人工降雨などを対象として科学技術庁から補助金・委託費が交付された。さらに発明実施化試験費補助金,資源総合利用方策調査委託費および原子力平和利用研究補助金,委託費などが科学技術庁から交付された。特に原子力平和利用研究の補助金,委託費は動力炉開発,放射線利用,安全対策,放射線防護等の各分野にわたつて支出されている。昭和40年度は動力炉とくに在来型炉の製作技術および燃料材料の照射に関する試験研究に重点をおいて補助金を交付し,委託費についてはひきつづき原子炉施設などの安全性に関する試験研究に,重点をおくとともに,新たに改良型舶用炉の設計研究および高速増殖炉の関連技術を対象として実施した。

また昭和41年度からは,資源総合利用の見地から,新たに生鮮食料品の品質保持や需給安定などに役立つと期待される低温流通機構(コールド・チェーン)の推進を目的として,1)その本格的展開の手順を形成するための総合調査と,2)主として技術的問題点を解明するための事例的実験調査を委託等により実施し,食料流通体系の近代化に資することとなつた。

民間企業が自ら研究資金を確保して自主的研究活動を展開しうるよう税制において側面的援助を考慮することは,補助金等による直接援助に劣らず重要である。すでにわが国においては,開発研究用,機械設備等の特別償却をはじめ,新技術企業化設備の特別償却,国産一号機の特別償却,科学技術振興にかかわる寄付金についての特別控除,技術輸出所得に対する特別控除など種々の税制上の優遇措置がとられ年々改善されてきている。昭和40年度において,企業における試験研究の継続性と安定性を確保するための試験研究準備金制度の創設,新技術開発促進のための所得控除制度の創設などについて検討を行なつたが,その結果,昭和41年度において改善が図られることになつた事項は,1)寄付金の控除制度の範囲拡大および2)新技術企業化用機械設備等の特別償却制度の期限延長の2点である。前者により個人が科学技術の振興を目的とする試験研究法人等に対してなした寄付金について控除限度が従来の20%から30%に引き上げられ,後者については企業合理化促進法第5条による新技術企業化用機械設備等の特別償却制度について,その期限が当分の間延長されることとなつた。

また,効率的な共同研究の促進の見地から鉱工業技術研究組合の行なう試験研究に対する組合員の賦課金については,初年度100%あるいは,次年度以降の任意償却が認められている。

わが国で開発された試験研究の成果を企業化に直結させるための措置としては,上述の新技術企業化用機械設備等の特別償却制度があるが,より積極的な助成策として日本開発銀行ならびに中小企業金融公庫に対し,新技術の企業化に際し必要な設備資金ならびに長期運転資金(中小企業金融公庫のみ)について融資のあつ旋を行なう制度がある。本制度による融資の対象は,国産技術であつて同種の技術が国内で未だ企業化されておらず,企業化の目的が新規製品の開発,新製造法の採用,品質または性能の著しい改善,生産性の著しい向上,未利用資源の活用であるなどの条件を備えるべきものとされている。昭和40年度における開銀融資のあつ旋状況は,申請件数7件同金額17億8,000万円に対し,あつせん件数7件,同金額15億1,500万円である。

なお,農業においては,新しい能率的な農業技術の採用により農業経営の改善を図るため,農業改良資金制度に技術導入資金があり,昭和40年度においては,かんきつ異常落葉防止事業の新規追加などを含めて拡充を行ない,技術導入資金の貸付枠を42億円(前年度35億円)に増加した。

国産新技術の企業化に伴う危険負担の軽減と新技術の企業化の円滑な仲介を図ることを主な狙いとして,昭和36年7月に設立された新技術開発事業団は,新技術の委託開発,開発した新技術の普及,新技術の開発のあつ旋等の業務の推進にあたつている。新技術の委託開発については,理化学研究所開発部当時のものを含めて昭和41年1月までに総計35件にのぼつており,委託料の総額は約19億5,000万円,開発の終了したものは18件で開発成功は16件という成果を収めている。これらの開発成果は,逐次企業ベースにのつて本格的生産に移されている。特に人口水晶の製造技術は,年約5t(わが国の水晶消費量の約60%)に達しており,また松川地域における地熱発電用蒸気の生産技術は,この程わが国初の実用規模での発電を開始するに至り,本技術の開発成功の見通しは極めて明るくなつた。さらに,固体分析用二重集束質量分析装置は昭和40年にスイスおよびアメリカに,またアミノ酸迅速自動分析器は中共にそれぞれ輸出されることになつている。このほかにも最近は,多層薄膜光学製品の製造技術などについて海外からの引き合いがあり,技術輸出について交渉が進められている。一方,開発成果の普及については,開発受注会社に対する独占実施期間の設定などのために未だ十分活用されるにいたつていないが,昭和40年にラバープレス法による粉体の加圧成型品の製造技術について2社によつて実施に移されるはこびとなつた。新技術を企業にあつ旋する制度については,これまで二成分合成上下振動台の製造技術,いくい式半導体流速計の製造技術など3件についてあつ旋の成立をみている。

限られた資本,技術スタッフを有効に活用し鉱工業技術の効率的な向上を図るために共同研究を盛んにすることを狙いとして昭和36年に鉱工業技術研究組合制度が設けられたが,高分子原料技術研究組合が同年10月に設立認可されて以来これまでに12組合の設立認可がみられたが,うち1組合が解散したため現在11組合となつている。昭和40年度には石灰重油焼成技術組合の設立が認可された。研究組合については諸種の税制上の優遇措置がとられるほか,鉱工業技術研究費補助金の優先交付が行なわれており,昭和40年度までに補助金総額5億8,400万円の交付を受けている。昭和40年度は電子計算機技術研究組合等の4組合に対して総額2,560万円の補助金が交付された。

今日,科学技術に関する情報活動は研究活動を円滑に遂行するうえにますます重要性を増してきており,昭和32年設立以来,日本科学技術情報センターは総合センターとしての機能の充実をはかり,また総合センターと補完関係にある専門センターもしくはデータ・センターとして国立防災科学技術センター等の機構の整備が進められている。他方,国立国会図書館等においても近代的情報処理活動に即して体制の整備に努め,また全国的な視野での相互の総合的な協力関係の確立のために努力を重ねている。これら情報活動の内外の動向に関しては,第6章において述べる。


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