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第1章  政府の施策
2  国の研究活動
(3)  特殊法人研究機関等の研究


国立試験研究機関と並んで国の研究活動の一環として大きな役割を果たしているものに,日本原子力研究所や理化学研究所などの特殊法人組織の研究機関および日本国有鉄道や日本電信電話公社等の政府関係機関の研究所などの行なう研究活動がある。

主な特殊法人組織の研究機関等は, 第1-15表 に示すとおりであるが,この表に明らかなように,これらの機関に対する政府出資金は,年々増加する 傾向を示している。もつとも昭和40年度は,政府出資金が補助金に切り替わつたり,年度当初成立予算についてかなりの補正減額がみられたことなどのため,前年度よりも若干減少したが,41年度においては,前年度予算を大幅に上まわる伸びを示した。多くの特殊法人は,政府出資金のほかに補助金の交付を受けたり,これに民間の出資や寄附金などをあわせる等により積極的に研究開発を推進しており,今後の国の研究活動に重要な位置を占めるものと期待されている。

第1-15表 特殊法人研究機関等に対する政府出資金の推移

理化学研究所では,研究設備の近代化を図るとともに,農薬研究体制の強化を図るため,生物試験室を設置した。また,サイクロトロンの建設および研究所本館の移転事業も年次計画にしたがつて実施された。

日本原子力研究所では,昭和40年度においては,在来型動力炉の国産化技術の確立および国産動力炉等の開発に必要な材料試験炉の建設の推進,国産動力炉開発のための設計研究の推進などをはじめ,高速増殖炉臨界実験装置の建設,プルトニウム特別研究室の整備,原子炉の整備運転,放射線化学中間規模試験施設の整備等を推進した。

原子燃料公社では,わが国におけるウラン資源の把握を目的として探鉱を行なうとともに,プルトニウム燃料開発および使用済燃料の再処理の準備を進めた。日本原子力船開発事業団では第1船の建造着手は若干延期されたが,各種の関連調査および実験研究を関係機関との協力のもとに引き続き実施した。日本てん菜振興会では,優良品種育成のための試験研究を強化するほか,新たに奨励品種決定事業を行なうことにした。農業機械化研究所では,稲麦用の施肥播種機,移植機,収獲調整機,乾燥機および飼料作物用,果樹用,野菜用の移植,収獲機等の開発改良のための研究の推進を図つた。なお,日本科学技術情報センターおよび新技術開発事業団の事業については後述する。

上述の機関のほか政府関係機関は,企業的な採算と公共性ある事業を行なう経営形態のもとに,その事業の円滑な遂行のために積極的な研究活動を進めている。最近の日本国有鉄道の総合的な技術開発の成果として,東海道新幹線の建設があげられるが,昭和40年度からは7年間に総額約3兆円に達する投資を予定する第3次長期計画を発足させることになり,そのため40年度は技術開発の長期構想を策定し,技術の発展の動向に対する適確な見通しもとに,新技術の開発導入を計画的に推進することになつた。この長期構想で保安防災,輸送の近代化,工事および保守の近代化および職員保金の4項目に関する技術開発を重点項目として取り上げ,ぞの推進を図ることになつた。このため鉄道技術研究所と鉄道労働科学研究所を中心として,基礎的研究,開発研究が進められた。日本電信電話公社ではエレクドニクスの最先端をゆく技術などを取り入れ,4号および600形電話機,クロスバ交換方式,マイクロウエーブ通信方式,同軸ケーブル方式,電報中継機械など薪しい技術の実用化に成功してきたが,研究活動に関しては基礎から実用化にわたる「研究実用化第2次5カ年計画」(昭和38〜42年度)に基づく研究が電気通信研究所を中心として進められている。電気通信研究所においては,昭和40年度は引き続き現在の通信方式について研究実用化を進めるとともに,将来を見通した新しい通信方式に関連する技術として電子交換方式などを対象とする電子制御技術,PCM通信方式などを対象とするパルス技術,ミリ波通信方式などを対象とする高周波技術,端末機器などを対象とする機械機構等の研究に重点が置かれた。日本専売公社では,たばこ部門における葉たばこおよび製造たばこの品質の向上と生産・製造方法の合理化に重点が置かれ,塩部門においては塩の原価低減と商品価値の向上に重点を置いて,中央研究所が中心となつて試験研究が進められた。このほか,日本放送協会の総合技術研究所等においても,UHF(極超短波)放送技術,FMステレオ放送と受信,テレビ国際中継,放送装置の自動化,新しいテレビ技術,カラーテレビの改善などの研究を中心として公共放送事業に関連する各種の技術課題について引き続き研究が進められた。さらに,昭和39年に放送科学基礎研究所を設立し,視聴科学および物性等に関する研究を中心に将来の放送技術に寄与する研究の推進にあたつている。

(4)国立大学の研究

1 研究の組織

大学はわが国の学問の中枢的機関であり,自然科学関係の基礎的研究の多くの部分は大学の研究として行なわれている。大学は,本来,高等教育機関として社会各層の指導的人材を教育し養成する任務を負つていることはもちろんであるが,それと同時に上述のように学問の推進と発展をになう研究機関としての大きな使命をもつている。大学の構成は,国立,公立,私立の別,あるいはそれぞれの大学の性格を反映してさまざまであるが,一般に管理事務部局,学部,学部付属研究施設,大学付置研究所,大学図書館等および大学院などからなつている。昭和40年5月現在の国立大学は73大学であるが,そのうち理科系学部を有するものは56大学であり,これを学部数でみると学部総数265のうち理科系学部は60%を占めている。

第1-9図 国立大学の研究の組織

大学の教育研究上の組織のうち学部および大学院は,学生の教育および研究を行なう組織であるのに対し,国立大学の学部付属研究施設および付置研究所は,研究を行なう組織ということができる。大学組織の根幹をなすものは学部であり,これは主として学問分野別に形成されているが,なかには幾つかの分野を複合した学部もみられ,現在では大きく次の三つの系統に分かれている。すなわち,理,工,農,医等の理科系学部と法,文,経等の文科系学部および音楽,美術,体育等のその他の学部である。

大学の学部の講座のほかにより大きな研究組織として付置研究所がある。東京大学伝染病研究所(明治25年創立,大正5年東大付置)などの初期の付置研究所には,全国的視野のもとにわが国科学研究の最高水準をゆく独創的な研究を行うために設立されたものが多いが,大学との密接な協力関係を維持するため,大学付置という形がとられた。第2次大戦中に国家的要請から多くの研究所が設立されたが,戦後新制大学の発足にあたつて,その多くは国立大学の付置研究所となり,大学の構成において講座の範囲を越える総合的研究課題や学部にまたがる新しい境界領域などを担当研究する機関としての性格が付与された。昭和40年現在,この年に新設された静岡大学電子工学研究所を加えて国立大学付置研究所総数は67機関であるが,その半数以上は昭和20年以降に設立されたものである。これらのうち自然科学関係のものは57機関,人文科学関係のものは10機関である。昭和41年度においては大阪大学社会経済研究所と東京医科歯科大学医用器材研究所(旧歯科材料研究所の改組によるもの)が設けられ,これによつて,付置研究所の総数は68機関となつた ( 巻末付表1-3 参照)。

最近における研究の進展に伴つて,各大学にまたがつた研究者の共同研究や多額の経費を要する大規模な施設装置の共同利用の必要性が増している。このような必要性から共同利用研究所が設けられるようになつた。この共同利用研究所は,昭和41年4日現在で11機関に達しており,自然科学関係10機関と人文科学関係1機関となつている ( 巻末付表1-3 参照)。

また,多くの大学において,農場,演習林,練習船などの付属教育施設を置いており,大学によつては,講座の単位を越えるややひろい領域を研究する組織として,各種の研究施設を付設している。

国立大学付属病院は,現在,大学医学部に付属する21の病院,歯学部に付属する2つの病院,その他分院および大学付置研究所付属の病院などからなつており,一般患者の診療を通じて基礎から臨床にわたる医学関係の研究がひろく行なわれている。このため,大学病院には学用患者の制度があり,また研究医療のための経費も特に計上されている。

わが国の高等教育機関としては以上のほかに,,短期大学と高等専門学校がある。当初は暫定的な制度として発足した短期大学は,昭和39年に,大学の一種として,深く専門の学芸を教授研究し,職業または実際生活に必要な能力を育成することを主な目的とする高等教育機関として制度的に確立された。昭和39年4月現在の国立短期大学は29校であつたが,40年度には,28校となり,41年4月現在では24校となつている。工業短期大学(電気通信短期大学1校を含む)がその半数近く(昭和41年4月現在で24校中11校が工業系である。)を占めている。

また高等専門学校は,中学校卒業者に対し,深く専門の学芸を教授し,5年制の一貫教育により専門職業人として必要な能力を養成することを目的とする高等教育機関として,昭和37年から発足した。高等専門学校は,職業に必要な能力を授けることに重点を置き,研究はその教育活動に必要な範囲で行なわれることとなつている。現在高等専門学校は工業に関する学科のみを置くこととされており,将来のわが国の中堅的な技術者養成機関として期待されている。国立高等専門学校は,昭和39年4月現在36校あつたものが,40年に43校となり現在にいたつている。高等専門学校は公・私立あわせて54校設置されているが,その80%近くが国立で占められていることが他の高等教育機関に対して特徴的である。

2 昭和40年度の施策

国立の大学,高等専門学校,大学付属病院および大学付置研究所等の管理運営に必要な経費とこれらの施設整備に必要な経費は,昭和39年度から新たに国立学校特別会計として,一般会計から独立し,会計の弾力的な運営によつて国立学校の拡充整備を促進し,より一層円滑な運営を図ることになつた。

昭和40年度は同会計には,一般会計から,1,356億円の繰り入れを行なうほか,資金運用部から35億円の借り入れを行なつて運営された。総額1,687億円(補正後予算額)のうち,科学技術振興関係費と考えられるものを抽出すると約626億円になる。昭和39年度541億円に対して約85億円の増加である。それは主に教官当積算校費(教官研究費)等の基準的諸経費が増額されたほか,昭和41年度から予想される大学入学志願者の急増に対処して,過去数年に比べ相当大幅な入学定員の増を図つたことに伴う経費増によるものである。すなわち,教育研究の経常経費の中核をなしている教官当積算校費について前年度単価の10%増を行なうとともに,学部の創設(自然科学系6),学科の新設(自然科学系15)および拡充改組(自然科学系6),既存の大学院専攻課程の増設(自然科学系29),前年度に引き続き理学,工学系,薬学,農学の分野で充実された16の新制大学における修士課程の大学院の設置,その他講座・学科目専攻科ならびに研究施設の新設整備,国立高等専門学校の新設(7)等を行なつた。また大学入学志願者急増対策の一環として昭和40年度は,理工系,医歯薬系等を中心に学生の増募を行なつた。

大学付置研究所については,静岡大学にオプトエレクトロニクスに関する研究を中心とする電子工学研究所を創設した。また既設の海洋研究所,宇宙航空研究所,数理解析研究所,原子炉実験所等について研究部門の増加(30)のを行ない,その総数は623研究部門となつた。

またロケット観測経費の大幅増額を行ない研究開発の促進を図つたほか,海洋研究所において研究船の建造に着手した。さらに特に防災科学,宇宙科学を中心に付属研究施設の新設,整備が行なわれた。

また国立大学付属病院の学用患者関係経費の増額と教官および研究生当積算校費の単価の引き上げが行なわれた。

なお,国立大学等における研究について,重要な基礎研究で大学等の経常的研究費ではまかなえないような多額の経費を要するものについては文部省科学研究費補助金などの重点的な交付がなされている(昭和40年度31億円)。

以上,国立大学等の研究活動について概説したが,公立大学,私立大学における基礎研究も重要な位置を占めており,これらを含めた大学全般をとおしての研究活動については第2章においてふれることとする。


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