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第1章  政府の施策
2  国の研究活動
(1)  研究の総合的推進


最近科学技術の研究対象が複雑多岐にわたり,いわゆる専門化と総合化のプロセスを経ながら,他方多くの重要な境界領域が開拓され,さらには巨額の資金と多方面の人材を動員する大規模研究などが多くなるにつれて,不断に継続して行なわれる経常的な研究の一層の強化が図られるとともに,適切に選定された研究分野および研究課題について,期間を定めて計画的に実施される特別研究がますます重視されるすう勢にある。

このような情勢に対して,政府は,多数部門の協力を要する重要な総合的分野を重要総合研究としてとりあげ,その総合的・計画的な推進にあたつている。また,これらの研究の効率的かつ円滑な推進を図るため,特別研究促進調整費および科学研究費補助金などの研究の内容や社会の要請に応じて重点的に配分する経費の充実に努めている。各省庁においても,これらの重要課題を特別研究ないし総合研究として指定し,年次計画的な研究の推進にあたつている。特に,通商産業省においては,わが国の技術開発の緊要性にかんがみ,昭和41年度から,将来の産業技術の中核となる大規模な研究開発について,国・大学・民間の協力のもとに,かつ国の負担において行なう大型工業技術開発制度を設け,これを推進することとなつた。

昭和41年8月の科学技術会議の意見においても,この点につき,すべての研究活動の基盤であり,またその潜在能力を育成する経常的な研究について,必要な研究費・研究旅費を確保するとともに,近代的な設備等の充実を図るべきことを指摘すると同時に,関連する研究分野の総合的な調和のとれた進展および境界領域における研究,大規模で組織的な研究,国際共同研究等については,総合的・組織的研究として計画的・重点的にその推進に努める必要のある旨を強調している。さらに,総合的・組織的研究の推進にあたつては,その分野,課題に応じた適切な計画のもとに,計画に即応した研究組織,機構を確立し,研究施設設備の計画的整備を図り,関係機関の緊密な協力体制を確立することが望ましいとしている。なお,ここでは,これに関連して,重点的,効率的な研究費の使用と充実,大規模研究補助機能の整備および研究者の流動性の確保等が必要であることが指摘されている。

次に,昭和41年度の科学技術振興費によつて,具体的に国立試験研究機関の経費の内容をみると,まず前掲の 第1-3図 に示されるごとく,現在科学技術振興費は,試験研究機関経費,原子力関係費,補助金等,行政費その他の4つに分類される。なお,原子力関係費も内容的には試験研究機関経費,補助金等,行政費その他の3つに分類することが可能であるが,原子力利用の重要性と予算編成上の便宜などの理由により,独立の分類がなされているものであつて,欧米先進諸国の予算などにおいても,原子力,宇宙,国防などの研究費を一般の研究費とは別に掲げている例が多い。

そのうち,試験研究機関経費の内訳は, 第1-7図 に示すとおりであるが,研究者の俸給などの人件費が全体の43%,研究施設などの施設費が17%を占めており,研究費などの試験研究機関庁費は,37%を占めている。この試験研究機関庁費を一般研究庁費,特別研究庁費などに分けたものが 第1-8図 で,前者が65%を占め後者は24%となつている。さらに,一般研究庁費(68億円)の67%は研究員当積算庁費(人当研究費)であり,このほか設備整備費が17%程度となつている。

第1-7図 国立試験研究機関経費の内訳

他方,特別研究庁費(26億円)については,委託費,施設費その他が3%程度を占めるほか,そのほとんど(97%)が研究費となつている。以上の一般研究庁費,特別研究庁費の分け方は,原子力関係費が含まないことなどかなり便宜的な面もあるが,特別研究費の使用の現状について一応の目安を与えるものと考えられる。

第1-8図 試験研究機関庁費の内訳

試験研究機関については,一般研究費の充実の観点から,研究員当積算庁費(人当研究費)の増額が年々図られており,昭和40年度は,実験関係の研究機関で平均10%41年度も実験関係で10%近くの引上げが行なわれるとともに,設備および施設の整備が図られた。特別研究の推進については,各省庁とも重点的に課題を選び,計画的な研究促進にあたつている。

科学技術庁においては,国立試験研究機関の行なう業務のうち,特に総合的に推進すべき研究分野の促進を図るため,毎年予算の見積方針調整などによつて,経費の確保に努めている。また,重要総合研究分野に対しては,各省の特別研究費・補助金・委託費および特別研究促進調整費などが重点的に充当されている。特別研究促進調整費は,昭和39年度の3.9億円から,40年度は4.7億円,41年度は5.7億円と年々増額されている。なお,重要総合研究分野は,防災科学技術,環境科学技術,海洋科学技術,電子技術,人間科学,都市工学,水高度利用,産業保安技術,生物科学,医療科学技術,航空技術および宇宙科学技術の12部門に,昭和40年度から新たに追加された食品保管輸送技術および交通事故防止技術の2分野とあわせて14分野があり,これに原子力利用技術を加えるととができよう。これら各分野とも各省との緊密な協力体制のもとに計画的な推進が図られている。

なお,前記の科学技術会議の意見においては,総合的,組織的な研究活動を必要とする研究分野および研究課題について,当面推進すべき研究として学術的要請に基づいて行なわれる研究13分野,社会的経済的要請に基づいて行なわれる研究102課題および国際共同研究6課題を指定している( 別冊付属資料参照 )。

重要総合研究関係の研究費支出状況は, 第1-5表 に示されるとおりであるが,これには国立大学関係の研究費は含まれておらず,また,研究に関連する人件費,一般研究費なども除かれており,主として各省庁の特別研究関係の支出額が示されている。昭和41年度の分野別の総合研究課題の一覧表は, 巻末付表1-4 のとおりである。

第1-5表 重要総合研究関係の研究費

これらの総合分野の研究のうち,特に最近注目されている宇宙科学技術および原子力利用ならびにがん対策関係の研究について,以下にその現状を概述する。

最近,アメリカ,ソ連をはじめ各国とも力を注いでいる宇宙科学技術の分野について,大学関係の研究費を含めた研究費総額は, 第1-6表 に示すとおりであり,参考までに各国の関連研究予算を 第1-7表 に示す。これらの表から明らかなように,最近わが国においても,文部省(大学関係),科学技術庁などを中心として,宇宙科学技術の開発が強力に進められている。科学技術庁では,宇宙開発推進本部や航空宇宙技術研究所において人工衛星の各種の開発研究委託,各種ロケットの研究などが進められ,また,文部省関係では,東京大学宇宙航空研究所等の施設の整備とロケット観測研究の強化が図られている。通商産業省においては,重点的な研究の推進と民間の研究の助成に努めており,運輸省では,気象ロケットによる高層気象観測の業務化,人工衛星を利用した気象観測技術の開発および測地技術の導入等について研究を重ねるほか,人工衛星を利用した航法の開発研究を進めている。また,郵政省では,宇宙通信の実験研究およびATS(応用技術衛星)による衛星通信研究施設の整備に努めている。このほか,建設省においては,国土地理院が人工衛星による測地業務を行なつている。

第1-6表 宇宙開発関係予算の推移

第1-7表 主要国の宇宙開発関係政府支出

第1-8表 国のがん関係予算

第1-9表原子力関係予算

しかしながら, 第1-7表 にみられるとおり,わが国の宇宙科学技術の開発は,その規模において欧米先進諸国にはるかに及ばず,今後の課題が大きい。

次に,最近急速に関心が払われ,その対策が急がれているがん対策に関してみると,研究費に関係行政費を加えた国のがん関係予算の総額は, 第1-8表 のとおりである。がん対策については,厚生省が中心となり,昭和41年度から総合的な対策を推進することになつているが,大学等における基礎的研究に対しても,昭和41年度から文部省の交付する補助金について「がん特別研究費」を特に区分し,重点的な研究促進を図つている。なお,実験動物の改良のように.,研究基盤の強化に関するもの,医療科学技術および生物科学等の分野にまたがるものについては科学技術庁において推進することとされている。このほか,関係省庁で構成するがん懇談会の協議を通じて,これらの研究を有機的な関連をもつて有効に推進することに努めている。

わが国の原子力開発利用は,本格的な研究開発に着手して以来10年を経過したが,最近における内外諸情勢の変化に対応して,現在一つの転換期を迎えようとしている。幸いにして,わが国原子力行政は,昭和30年の原子力委員会発足以来,常にこれを中心として一貫した体制のもとに運営され,大学関係を除いて基礎研究から開発に至るまで一元的に運営されてきた。昭和40年度は,この10年間における開発利用の過程における経験の積みかさねと最近における内外の原子力開発利用の進展に対応して,原子力委員会が昭和36年に策定した原子力開発利用長期計画の再検討が進められている。特に原子力発電の分野については,近年諸外国において動力炉開発が急速な進展をみせ,また,わが国では原子力発電計画が次々と具体化しつつある情勢にあることを考え,原子力発電の,経済性と,わが国エネルギー源の安定的供給の観点から開発利用方針の検討がはじめられた。すなわち,原子力委員会は,動力炉開発懇談今の開催,動力炉開発調査団の派遣等を通じて検討を重ね,昭和41年3月その基本的な考え方を示し,引き続き審議を行なつて昭和41年5月動力炉一発の基本方針を内定した。

上記の作業と並行して,昭和40年度原子力関係予算では,材料試験炉の建設,国産動力炉開発,アイソトープセンターの整備,プルトニウム燃料の研究開発等の重要継続事業に力が注がれた。なお,原子力第1船の建造は,国内造船業者との価格面での調停が成らず,その着手は延期された。


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