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2部   科学技術人材
第9章  諸外国の動向
3  フランス


フランスで,科学技術者の不足が叫ばれるようになつたのは,1952年から′53年にかけてである。1957年のランデュッシ報告では,フランスの必要とする科学技術者数を推計し,その不足について政府へ警告を発した。

フランスにおける科学技術者の養成で最も重要なのは,グランゼコール(grandes ecoles) 1) の存在であり,これは大学よりも科学技術教育に果たす役割が大きい。


注1)工業技術教育を目的とした高等教育機関,大学よりは程度が高く入学も難しい。

ふつう,大学およびグランゼコールに入るには,バカロレア(大学入学資格試験)にパスすることが必要であるが,これは政府のベルトワン改革等による教育の機会均等推進政策等により,近年は激増し,1964年には7万7,000名と,1950年の2倍となり,さらに,′70年には12万5,000名にのぼることが予測されている。

現在,工業専門学校のうち,20校がグランゼコールの名で呼ばれているが,この設立目的は,18世紀末の大学教育に失望した人々が,新しい形の科学技術教育施設の設立を望み,国および産業界における必要な,上級科学技術者を得ようとしたことにある。したがつて,その教育目的は,技術者の養成にあり,ここで養成された人材は,現在,産業界において最も不足している職種であるだけに,非常に需要が高い。

また,この卒業者の能力は,職場において出会う困難な問題を,自力で解決できるすぐれた技術者であるとみなされている。産業界においては,これらの人材はもつぱら上級科学技術者のほとんど,および上級管理者の一部の補充にあてることにしている。

このように,卒業後の将来が約束されているため,入学する者も,激しい試験をパスした優秀な者ばかりで,科学研究と教育は,大学よりもグランゼコールの方がすぐれているとまでいわれている。

また,入学定員も,増加を続けているとはいえ,質の低下をおそれてきびしい入学条件を保つており,その増加率は比較的ゆるやかである。

一方大学は,その養成の目的が,今までは主として教職員および研究員の養成にあり,グランゼコールとはその設立目的が根本的に異なる。入学定員も意識的に増大しており,有資格者は無制限に入学を認めているため,その伸びは非常に高く,現在の10万500人の在学生は1970年には50万人に達するものと見込まれている。この中でも,理科系の伸びはとくに著しい。

しかし,すでに述べたように,優秀な学生はグランゼコールに行く傾向が強く,一般に,フランスには高水準の技術者がいるが,優秀な科学者は基礎研究分野から離れて行く傾向にあるといわれている。

このような,理科系高等教育の二重構造が,フランスの科学技術者養成の特色であるが,前述のように,大学に優秀な学生を吸引する力が弱いことが,この両者の間に断層を生み,研究面の弱体化等,いろいろのへい害をひき起すに至つている。

この断層を埋めるため,志望校の選択を遅らせる等の対策が試みられており,また大学卒業者の産業界への進出も,学生数の増加にともない増大するものと考えられる。

このような,大学の理科系定員増加の動き等から,高等教育機関在学生のうち,理科系部門の比率は,1950年の22%から,′70年には49%へと著増することが予定されている。また,この間の増加率2.26%は,西欧先進諸国の中では最高の数値となつている。

しかも,この理科系のうち,工学系が11%と著しく低いのは,先のグランゼコールの学生数の増加のゆるやかなことが大きな原因と考えられ,他の国と比べて,非常に特色ある構成比となつている。

次に,科学技術者の雇用状況には,科学者の増大にともなう技術者の相対的減少,1959年以降の科学者の供給増大にともなう,研究教育部門から鉱工業部門への就職範囲の拡大,等の傾向がみられる。

また,研究者は,1963年には3万3,180人(フルタイム換算)で,このうち3分の1が高等教育機関に,6分の1が国に,約半数が産業に雇用されている。ただ大学においては,相当量の時間を教育に費しており,実際は約2倍の人数が大学で研究に従事している。

需給については,経済規模が戦前レベルにまで回復した1950年頃までは,ほぼバランスがとれていたが,′55年以降,不足基調に移り,  一時的な兵役服務者の増大がこれに拍車をかける状態となつた。この不足基調は,その後の供給の増加にもかかわらず解決しておらず,最近は,官民の間に「人間への投資」(invest in men)」の必要が叫ばれるようになつた。

しかし,現在の供給計画が順調に進めば,1975年頃にはおおむね需給の均衡がとれるものと予想されている。

第9-3図 フランス学校系統図


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