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2部   科学技術人材
第8章  需給における課題
3  環境と処遇
(1)  組織の職務環境


最近科学技術者数の著しく大きい事業所や研究所が現われてきたが,そこでは種々の異なる専門領域の科学技術者が組織的かつ計画的に共同研究する機会が多くなり,いきおい科学技術者の人的職務環境にかなりの変化をきたしている。

例えば職員数の多い研究所として,日本電信電話公社電気通信研究所の約1,500名,日本国有鉄道技術研究所の約1,000名,日本原子力研究所の約1,500名などがあり,民間企業においても,職員数1,000名を越える研究所が,かなりでてきている。これらの研究所において,職員数の約40%程度は科学技術者で占められている。

また,研究組織の大規模化と多様化にともない,研究者の専門領域別構成にも変化がみられる。例えば,  「科学技術研究調査」によつて,資本金10億円以上の化学工業における研究者の専門領域別の構成をみると,専門領域が化学のものが,昭和35年には70.1%を占めていたが,昭和39年には63.8%となり,そのかわりに数学,物理専攻者が3.0倍,機械専攻者が3.4倍,生物専攻者が2.5倍と著しい増加をみせている。同様な傾向は電気機械工業の研究組織についてもあらわれている。

また,企業の規模別にみても,中小企業の研究組織よりも大企業の研究組織の方が専門領域別に,より多様性に富んでいる。例えば化学工業においては,資本金5,000万〜1億円の企業では,化学を専攻した研究者が研究者総数の76.4%を占めているのに対し,資本金10億円以上の企業においては,その比率は,63.1%と低くなり,化学以外の各種専門領域の研究者を多く雇用している。

次に最近の科学技術者の雇用の増大にともない,年令別の人員構成にもかなり変動があることが予想されるが,昭和38年の調査によるこの状況は事業所別,業種別にかなり相違している。全体的には 第8-13表 にみられるように,20才台が約40%を占め,30才台も39%で,両者で約8割強を占めており,若年層の厚い構成となつている。

これを業種別にみると,鉱業では20才台は16%と少く,30才台が53%,40才台が26%と高年令層も多い。同様な傾向は繊維,電力,ガス,鉄道にもみられるが,石油石炭製品では,20才台が55%と過半を占めている。精密機械,電気機械についても20才台がそれぞれ60%,47%と多く,業種別の伸長または技術競争の程度の差を表わしているものと思われる。

第8-13表 科学技術者の年令別構成比(%)

企業の本社,工場,研究所等の組織形態別には,管理的業務の比較的多い本社においては,20歳台は28%と少ないのに対し,工場では20歳台は,42%,さらに研究所では52%と若年層が多くなつてきている。

このように専門領域別,あるいは年令別にみた科学技術者の構成が,業種あるいは組織部門別によつて,かなり変化していることが,組織管理上種々の問題を提起している。

最近の組織の大規模化にともない,組織管理体制も充実されつつあるが,その一つとして,企画,調査,研究,技術管理などの業務における科学技術者の管理の問題がある。一般的には科学技術者の活動は,その業務機能あるいは専門領域別にライン組織に分割されるが,組織機能の高度化にともなつてスタッフ組織が生む傾向にある。ことに最近のように科学技術の総合化傾向が高まるにつれ,多くの専門領域の科学技術者のグループ活動ないし共同的活動が必要となつてくる。この場合各機能別組織に,各専門領域の科学技術者を揃えることは無駄を生ずることが多く,ライン組織とスタッフ組織の組合せによつて,科学技術者を有効に活用することが必要である。

最近の企業における科学技術者のスタッフ組織(課長相当以上)の設置状況は 第8-14表 にみられる通りであつて,本社組織あるいは大企業においてはスタッフ制度のある場合の比率が高くなつている。これらのスタッフの役職名としては,技師長,技師,調査役,参与等があり,多くは会社,部,研究所等の組織の長に直属して,独立した活動を行なつているが,最近ではスタッフ組織自体の拡大により,スタッフ内部でグループないしライン組織をとるところもある。

第8-14表 企業におけるスタッフ(課長相当以上)制度の 有無別割合               (%)

また科学技術者の密度の高い研究所においては,従来研究業務を学問領域別の小研究室に分割し,ピラミッド組織をとる場合が多かつたが,最近では大研究室制度をとつて,管理上の組織単位はおくけれども,活動組織としては全体を平面的なスタッフ制度に近い形をとるところがでてきている。

さらに最近は研究所内においても研究者がグループ活動を行なう必要が高まつてきており,とくに大きな開発活動を行なう場合には,プロジェクトチームを適宜編成することが行なわれている。現在のところ, 1) 開発研究の場合新たにプロジェクトチームを編成している会社は58%あるが,その多くは既存の研究組織を利用する形で行なわれている。

このように科学技術者の組織的活動の増大とともに,活動自体が計画的に行なわれることが多くなつているが,科学技術の進歩が個人の創造的能力や知識に大きく依存するものであるだけに,組織化,計画化にあたつては,総合化の有利性が十分発揮されるよう留意する必要があり,とくにこういつたグループ組織のリーダーが非常に重要となつている。


注 1)科学技術庁「企業の研究活動に関する調査」(昭和38年)


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