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2部   科学技術人材
第8章  需給における課題
2  採用と異動
(2)  企業内の異動


企業の組織や職務配置は,企業の生産,営業等の活動の拡大とか技術の変革に伴つて常に変化する。また企業の職務に配置された科学技術者自身の知識,能力あるいは年令といつたものも年月の経過とともに変化する。この両面の要因によつて,適性配置の見地から当然科学技術者についても異動の必要が生じてくる。

わが国の場合は,終身雇用制度が広く行なわれているので,科学技術者が企業間あるいは政府機関や大学等との間で異動することは少く,異動の大部分は企業内の異動として行なわれている。

このように企業内での異動ということに加えて,科学技術者の専門領域,資格等の条件が重なるため,科学技術者の異動は,科学技術者以外の人材の場合と比較してその困難なことが考えられるが,調査した結果では科学技術者の異動はかなり多く行なわれている。 第8-10表 は,1年間の異動の度合を総人員に対する異動の件数の比率によつて示したものであるが,これによれば,科学技術者以外の人員の異動が12%程度であるのに対し,科学技術者の異動は30%となつており,平均3年間に1度の割で異動することとなる。

第8-10表 異動の割合

この数字は科学技術者以外の人員については専門職あるいは管理職以外の一般の生産,事務関係の人員が含まれているため,異動件数が相対的に低くでているが,科学技術者の異動性はかなり高いことが認められる。

異動の理由は,最近の技術革新にも関係して事業の変化,機構改革などによるものが30%と最も多く,適正配置を目的とする理由のものが20%近くあげられており,また教育を目的とする異動も6%程度ある。

異動の状況を,事業所間,部門間などのように異動の範囲からみると, 第8-11表 のように,同一事業所内での異動の方が,他の事業所との間の異動よりもやや多く,また部門別には,同一部門内の異動が他の部門との間の異動よりもはるかに多い。

同一事業所内の異動の多い業種は,建設,精密機械,電気機械,輸送用機械などで,他の事業所との間の異動が多いとしているのは,繊維,食料品,窯業および電ガスなどの業種である。一般的には本社,研究所においては,他の事業所との間の異動が多く,工場組織では,同一事業所内の異動が多くあげられている。

第8-11表 企業における科学技術者の異動の範囲別割合(1位のもの)

部門別に異動状況をみると,石油石炭製品機械,木材パルプおよび電気機械などの業種については異種部門間の異動が多く行なわれているのに対し,鉱業,鉄道,輸送用機械,電力ガスなどの業種においては,同種部門間の異動が多くなつている。また研究所→工場→本社の順に異種部門間の異動が多くなる傾向にあり,科学技術者の職務の変化状況が組織のそれぞれの性格によつて異なることを示している。

異種部門間の異動の流れのうち最も大きいものについて示したのが 第8-3図 であるが,これによると,研究部門←→生産部門が最も多く,次に生産部門←→管理部門が多くなつており,全体的には研究→生産→管理の流れがかなり顕著である。

このような移動ないし配置転換に対する科学技術者側からの意見は,研究者と技術者ではかなり差があり,昭和38年度に科学技術庁が行なつた個人調査では,技術者の87%が配置転換を必要であると回答しているのに対し,研究者では必要とするものが42%,必要でないとするものが41%となつている。一方企業側では,異動を行なわない方がよいとするものは,本社,工場,研究所ともほとんどないが,計画的異動を行なう方がよいとするのは本社,工場に多く,研究所ではやや少ない。

第8-3図 企業における科学技術者の異種部門間の異動(1位のもの)

科学技術者には二様のタイプがあり,一方は管理的職務に進み,もう一方は専門的分野により深く進むタイプであり,これが異動の形態にも二様の型を生み出している。前者の場合には,管理的職務に対するよりよき能力をつけるために,広い視野と経験をもつて企画,立案,指導を行ないうる人材の養成が必要であるが,後者の場合には,とくに研究部門で,異動することがかえつて能力発揮を阻害する結果となることもありうるので,前者に比較して異動の頻度は少ないようである。

教育効果を含めた異動を行なう場合には,とくに入社後計画的に職務異動を行ない効果をあげているところもある。約50%の企業は計画的異動を行なつたほうがよいという意見を示しいてるいが,実際に行なつているところは15%であり,この比率は資本金100億円以上の企業では25%と大きくなつている。このことは,大企業ほど組織が大きく,かつ雇用する科学技術者数も多くなるために,このような管理が行なわれやすいからであるが,規模が小さく,科学技術者数にゆとりのない企業では計画的異動に困難を感じているところが多い。


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