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2部   科学技術人材
第8章  需給における課題
1  職務と配置
(1)  専門領域別の需給


最近の科学技術の進展は,科学技術者の職域を大幅に拡大し,多くの新しい専門領域を生み出した。なかでも技術革新の中心をなすといわれる合成化学,エレクトロニクス,オートメーション,原子力などの発展は,多くの産業において基本的な技術の改革をもたらし,多くの新製品の創出,生産規模の拡大,連続大量生産方式の採用,経営の多角化などの現象をもたらしている。

このような技術革新は,科学技術の領域全般にわたつて人材需要の拡大をうながしたのであるが,とくにどのような点に新しい特長がみられるであろうか。 第8-1表 は,科学技術庁の行なつた「科学技術者の配置と職務に関する調査」(昭和38年)の結果から最近新たに必要となつた職務と,それに従事する科学技術者の専攻領域との関係を示したものである。この調査は企業を対象としたものであるため,なかには企業の多角化にともないその企業として新たに必要となつた職務をも含んでいるが,多くは最近の技術革新の特長を表わすものといえる。

第8-1表 最近新たに必要となつた科学技術者


とくに産業全般にわたつて顕著なものは,オートメーション,大量生産化にともなう自動制御機器やシステムの運転,管理,保全あるいはインダストリアル・エンジニアリング,オペレーションズ・リサーチ等の生産管理面の職務が増大していることである。これらの職務に従事するため必要とされる専攻学科には,計測工学,応用物理学,電子工学,数理工学,経営工学等の学科があげられている。

これを化学工業関係についてみると,最近の石油化学の進出を大きな要因として,合成繊維,合成樹脂関係の研究,開発,製造のため有機合成化学を専攻した科学技術者の需要増があり,とくに化学工学,応用物理学,計測工学等の専攻者の職務が拡大していることがめだつている。このことは,石油化学の進展によつて,従来の固体原料による回分式生産方式の化学工業技術が,流体原料による大量,連続オートメーション方式に進み,装置工業としての化学工業技術の特性を生かす方向に大きく変化してきたことを示している。

また食糧品,化学工業関係における食品の研究,開発や電気機械,電力関係における電子工学,応用物理学,放射線化学,原子力関係の物理学等の専攻者の需要も最近の技術革新の特質を表わしている。

このような技術進歩と事業規模の拡大を合わせて,最近における科学技術者の需給はどのように推移しているであろうか。 第8-2表 は,日本経営者団体連盟の調査による大学理工学部新卒者についての,需要に対する充足率を示したものである。これによれば全般的に充足率は向上してきているが,上述した計測工学,応用物理学,機械工学,精密機械工学,電気通信工学,電子工学,工業化学,化学工学,繊維工学,工業経営学等の充足率はなお低い年が多く,また最近の公共投資の増大を反映して,土木,建築関係においても充足率は上昇していない。とくに計測工学,機械工学,工業化学,化学工学,経営学等は,ほとんど全産業分野に分布して必要とされる専攻領域であるだけに,影響するところは大きいといえよう。

科学技術者の専門領域は必ずしも固定したものではなく,また,大学における専攻学科がその後の専門領域を規定するものではないから,科学技術の進展の規模と速度がゆるやかである場合は,従来の専門領域を漸次拡大することによつてこれに対処しうるが,最近のように科学技術が急速に進歩する場合には,こういつた専門領域別の需給の不均衡が需給全般に大きな影響を及ぼすこととなる。

第8-2表 大学卒業生の採用充足率



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