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2部   科学技術人材
第8章  需給における課題

最近の急速な科学技術の進歩と社会・経済の発展にともない,国民の教育水準の向上,産業構造からみた労働力の変化,科学技術者数の増大などについて顕著な傾向がみられることは前章において述べた。今後の科学技術の進展とともに,このような傾向は基本的に維持されて行くものと考えられ,科学技術推進の中心となる科学技術者は,産業,経済,行政,教育等多くの分野に一層幅広く進出することが要請されている。

このような科学技術者の活動の範囲の拡大にともなつて注目されることは,科学技術者の専門領域,職務,組織形態などを含めた活動の態様に新しい変化を生じていることである。例えば専門領域の変化は,科学技術自体の専門化,多様化が進む一方,各専門分野間の有機的な連関が高まり,境界領域とか総合領域といつた新しい分野を生み出して行く,最近の科学技術の進展の特長からくるものであるが,このために専門領域別に新しい資格,能力をもつ科学技術者が要請されている。

また,専門領域間の相互依存性が高まつたことによつて,種々の専門領域の科学技術者によるグループ活動が増加しており,その場合の共同的,組織的活動のあり方に一つの問題が提起されている。さらに科学技術の重要性が,経済,行政等の経営的活動に浸透するにつれて,これらの活動の組織に参加する科学技術者も一層増加し,組織のライン的活動のほかに,専門的職務をもつたスタッフ組織を形成するなどの傾向が顕著となつてきている。

科学技術の進展,とともに,このような科学技術者の活動態様の変化を含めて,産業,教育,研究などの諸機関が,それぞれの特長ある科学技術者の活動の場を形成し,多種多様な科学技術者の職務を生み出しており,科学技術者の需給の問題を考えるにあたつても,需給の内容の変化を十分考慮してその対策を講ずる必要が生じている。

前節にも述べたように,科学技術者の定義または範囲の定め方については,学歴,経歴,専攻領域,職務内容,資格能力など多くの要素が介入し,さらに科学技術者が有効な活動の場を得ているか否かについても,個々の科学技術者の職務環境,意欲,処遇等が適正か否かが大きな影響を及ぼすものである。

とくに科学技術の進展が,個々の科学技術者の高度な創造的活動に大きく依存するものであり,需給関係に上述のような複雑な要因が介入するものであるだけに,科学技術者の需給を考えるにあたつては,原材料等の物的な需給と本質的に異なる側面をもつことに留意しなければならない。

さらに科学技術者の需給の背景をなす国民の年齢別人口構成,進学率,雇用状況等の社会的条件は最近大きな転換期にきており,このような点からみても科学技術者の需給対策,さらには将来の科学技術の発展に関して一層きめ細かな検討がなされる必要が生じているといえよう。そこで本節では,最近の科学技術者の活動態様の変化に焦点を合わせて,需給におけるいくつかの課題をとりあげることとする。


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