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2部   科学技術人材
第7章  人材需給の推移
4  科学技術者供給の推移
(2)  高等教育における科学技術者の養成


高等教育における科学技術者養成の状況を時系列的に眺めてみよう。


1 高等教育在学者数

わが国で本格的に高等教育が拡充され,学生の増加が顕著になつてきたのは,明治中期以後で,急速に発展した第二次産業の進歩に大きく影響された。その後は,明治36年専門学校制度の確立等もあり,年とともに学生数は増加の一途をたどつた。

第二次大戦後の第二,三次産業の発展は,この傾向にさらに拍車をかけ,高等教育卒業者に対する需要は増加する一方であつた。昭和39年度における高等教育機関在学者は98万5,077人(文部統計速報)で,昭和38年における高等教育機関への進学者の該当年令人口に対する割合は,15.7%と過去の最高を示すようになつた。

次に,在学者を専門別にみると,どの分野においてもかなりの増加を示している。昭和39年度在学生を30年度と比較すれば,理科系では工学部2.3倍,理学部2.2倍,農学部1.4倍,医学部1.4倍となり,これに対して法文経学部1.6倍,家政学部4.3倍となる。(工学部には,昭和37年設立の工業高等専門学校,および国立工業教員養成所を含まず,これをいれると,その倍率はそれぞれ2.5倍,12.9倍となる。)

第7-10 表高等教育機関在学者数


工学部の伸びは,需要の増大にともない,その拡充が意欲的に行なわれたことによるものであり,家政学部の伸びは女子高等教育の普及が大きな要因であると思われる。

第7-10表 により各学部別にみた場合,法文経学部の伸びは絶対数においては圧倒的で,とくに第二次大戦後,大学の新増設が盛んになつてからの伸びはめざましいものがある。すなわち,昭和20年には13万6,000人であつたのが,39年には51万8,000人と,38万2,000人の増加となり,戦後の増加は,昭和10年以降39年までの増加数42万人の実に93%を占めている。

これに対して,理科系(理,工,農,医)は昭和11年以降39年までの増加は23万7,000人で,そのうち20年以降の増は11万6,000人と,その率は50%にも及ばず,理科系の拡充は法文経の伸びに比較すれば遅れていたことを示している。

そこで,昭和25年以降の学生数の増加をみると,全学生数の伸びは約53万7,000人,そのうち法文経学部の増加は25万1,000人で,約半分を占めている。これに対して理科系は16万6,000人の増加で,全増加数の29%と,文科系に比べ低い数値となつている。なお,残りの増加数12万人は,主として,教育,家政学部の増加である。

しかし,その伸び率においては,昭和25年の学生数を100とすれば,法文経学部194理科系228とやや理科系の方が高い値を示している。さらにこれを年次別にみると,文科系理科系両者とも35年以降の増加が激しいことがめだち,とくに理科系はその傾向が著しい。すなわち35〜39年で,法文経は13万人の増,25〜39年の52%を占めているが,一方理科系はそれぞれ10万人,67%を占めて,拡充が近年になつて促進されていることがわかる。次に,各期の増加数をみると,文科系の100に対して理科系は25〜30年で僅か21にすぎなかつたが,その後5年毎に58および89と急激に文科系にせまり,拡充の重点が理科系に移つたことを示している。

なお,理科系学部に属する女子学生をみると, 第7-8図 のように,ここ10年程で急増している。理学部,工学部については,昭和39年にそれぞれ3,356人,1,028人と10年前に比べ,2.2倍,1.9倍とほぼ倍増しており,新しい人材の開発分野として今後の伸びが期待される。

なお,設置者別に,大学生数構成比をみると,昭和39年には国立25%,公立4%,私立71%と圧倒的に私立が多い。さらに,理科系についてみれば,国立36%,公立5%,私立59%と私立は文科系の学生比率が高い。26年以降の増員数では,国立の5万1,541名に対し,私立は11万4,988名と総増員数のうち67%を占めている。

第7-8図 理科系女子学生高等教育 機関在学生数

次に,昭和37年に設立された工業高等専門学校は,国立については毎年6校ずつ設置となり,39年には国立36校,さらに公立4校私立6校,計46校となり,在学生も1万5,398名にのぼり,入学定員も6,000人を越すようになつた。学科別には,機械工学科44%,電気工学科30%,工業化学科9%等が中心をなし,以下,土木,建築,航空機体等全部で10学科に分かれている。

まだ本格的に卒業生を出すに至つていないので,将来の予想は困難であるが,急速に進歩する科学技術を,現場において支えるべき中堅技術者の養成が目的であるだけに,産業界における活躍が期待されている。


2 高等教育機関卒業者数

専門科目別の卒業者数から,科学技術人材供給の傾向をみると,やはり工学部の伸びが顕著である。

第7-11表 によれば,工学部卒業者は,大正から昭和初期にかけて漸増はしているが,本格的な増加を示したのは戦後である。(戦時中には一時異常に増加したことがあつたがこれは除く。)昭和25年を基準年度とした場合(以下いずれも同じ)38年は工学部卒業者216,理学部162,農学部114,医学部69である。絶対数では,工学部1万4,500人,理学部1,700人,農学部900人の増加となり,医学部だけ3,500人の減となつている。

さらに,これを学科別にみると,旺盛な需要に支えられた土木・建築が326,電気通信,266といずれも著増している。これに対して鉱山冶金,繊維はそれぞれ113,110とその増え方はあまり大きくない。この原因としては,エネルギー資源の転換,および合成繊維の進出による天然繊維の需要減退等が考えられる。

理学部は,工学部よりかなり伸びが遅れているが,昭和33年以降ようやく卒業生数の伸びも本格的になつてきた。学科別にみると,数学,物理,化学等の技術革新と密接な関係をもつ部門の伸びが著しい。

農学部は,工,理学部に比べ漸増はしているものの,その伸びは著しく低い。

医,歯,薬学部は,昭和30年以降は平均して7,000人前後の卒業生となつており,最も変動の少ない学部といえよう。( 付表4-10参照 )

次に,理科系卒業生の全卒業生に対する割合をみると,昭和38年までは顕著な増加は認められないが,学生数の項で説明したように,近年その伸びが著しいために,卒業生に対する割合も急激に増していることが予想される。

これを諸外国と比較した場合,とくに注目される点は,諸外国では理学部卒業生の割合の高いことである。すなわち,アメリカ12%(′62年)イギリス13%(′61年)西ドイツ8%(′59年)イタリア12%(′59年)で(以上いずれも「科学技術要覧」昭和39年),理学部の構成がわが国とは相当異なるために,そのままの比較は困難であるにしても,日本の2,5%(′63年)と比べると,相当のへだたりがあると考えられる。

次に,理工農医の学部合計の割合を比較すると,アメリカ29%(′62年),イギリス52%(′61年),フランス36%(′60年),西ドイツ29%(′59年)イタリア27%(′59年),ソ連56%ぐ62年)となり(西ドイツ,イタリアは医学部を含まない),日本の26%(′63年)は,先の理学部ほどの差異はないにしても,これらの先進国の中では最も低位にある。


3 科学技術人材養成計画

科学技術者の需要増加が叫ばれていながら,供給がこれに追いつかないのは,色々の理由が考えられるが,その一因として,学校教育に要する費用が,文科系に比べて,多額になることをあげえよう。

第7-11表高等教育卒業者数

すなわち,養成経費の一指標として教官あたりの積算校費をみると,昭和38年では,非実験講座の65万3,700円に対し,実験講座は257万9,400円と,理科系は文科系の約4倍を必要としている。

また,学生あたりの積算校費をみても,昭和38年には,理科1万2,500円,医科1万3,600円に対して文科は5,500円と理科は文科に対し,約2.3倍の経費を必要とすることがわかる。

これを戦前と比較すれば,理:文の比は2.4:1となり,現在よりも高水準にあり,さらに絶対額においても,物価指数および科学技術の進歩を考慮に入れれば,決して満足すべき状態ではないと思われる。

次に,科学技術者養成のための,理工系学生の増募は,新学制実施以来逐年行なわれ,とくに昭和32年には将来の需要予測にもとづき,8,000人の増募計画をたてた。この計画は昭和32年度より実施に移され,35年度までに,大学は,国立3,996人,公立5人,私立2,970人,短大は,国立460人,公立120人,私立410人,総計7,961人の定員増をもつてほぼ達成された。

しかし,この増員をもつてしても,増加する需要に対処しえず,昭和35年12月の科学技術会議の答申においても,昭和35〜45年間に約17万人の理工学系科学技術者の供給不足を見込むところとなり,昭和36年度から,新しく2万人増募を開始した。この実施は,38年に大学1万4,523人,短大1,990人,高専4,150人,計2万0,663人をもつて完遂されたが,その後の入学志望者の激増もあり,第1章で述べたように引き続き増員は進められている。この状況を39年5月1日現在の学生数を年次別に 第7-12表 に示す。

第7-12表 年次別学生数 (昭和39年度)

しかし, 一方この増募の結果,施設がこれにともなわない面もでてきて,今後増員にともなつた施設の拡充が強く望まれている。

また私立大学に対しては,科学技術者養成の一環として,昭和31年度から私立大学理科特別助成金制度が実施され,私立大学の医,歯,薬,農,理,工等の理科系学部学科の学生が実験,実習に使用する設備に対して,2分の1の補助金が交付されるようになり,さらに昭和33年度からは,理工系科学技術者養成にともなう学校新設,学部・学科新増設,定員増のための補助金が補助率3分の2で新たに加えられた。

次に,大学学部数の推移をみると,昭和30年には588であつた学部数は,38年には705になり,20%の増加となつている。理科系の中で最も増加の多かつたのは,工学部の22で,32%の増,次いで医・薬・歯学部の6で9%,理学部4で45%の増加となつている。理科系全体では,昭和30年に222であつたのが263となり,学部数では41,率では18%の増を示している。これを,文科系(法,商,経,文)の増加の学部数56,比率17%と比較した場合,理科系全体との間にとくに差異は認められないが,理,工学部のみをとつた場合は,31%の増となり,拡充の中心が理工学部にあることを示している。

第7-9図 私立大学等理科特別 助成補助金(昭和31〜38年)


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