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2部   科学技術人材
第7章  人材需給の推移
2  科学技術者の就業構造
(2)  科学技術者の配置


近年,わが国産業の附加価値の伸びの中で技術進歩の果たしている役割は非常に大きいといわれている。

これらの技術進歩を支えている科学技術者の配置について眺めてみる。


1 学部別就業状況

文部省調査によれば,昭和38年におけるわが国高等教育卒業者のうちで学部別に就業している産業をみると,理科系でサービス業に就業している者が多いことがめだつ。とくに理学部卒業者は,絶対数はないにしても,サービス,公務等に従事しているものが,64%と過半数,を占めている。このサービス業の中には,学校および試験所,研究所が含まれるために,そのほとんどはこの分野に就業しているものと考えられる。

工学部卒業者は,建設,金属機械,その他の製造業等第二次産業に従事しているものが64%を占めている。なかでも建設業は,高等教育卒就業者の中に占めるその割合が,60%と高い数値を示している。また,金属機械も同じく45%と半数に近いものは工学部卒業者で占められている。

農学部卒業者は,農林漁業20%,サービス業30%,公務20%とこの三分野で70%を占めているが,このうちのサービス業は,前記理学部卒業者と同じく,試験所,研究所関係従事者が主なるものであると思われる。医,薬,歯学部では,サービス業の67%がめだつが,これは医療保健業が含まれているためである。次いで卸小売業の17%がある。( 第7-1図 および 付表4-5参照 )

第7-1図 昭和38年高等教育卒学部別産業就業者構成比

次に,各学部卒業者を職種別にみると理,工,農,医各学部では,技術者および研究的職務従事者は,それぞれ,81,74,48,84%と高い率を示している。

また,工学部卒業者は,昭和34年と比較した場合,技術が47%から54%へと増加しているのがめだつ。

農学部卒業者は,とくに一職種にしている傾向は示していない。

研究的職務従事者は,34年と比較した場合,その絶対数においては増加を示しているが,構成比率においては減少の傾向にある。しかし,この分野に従事する者は,高い資質,独創的な能力を必要とするだけに,量的な面からのみ眺めて,研究活動の減退・停滞を云々できないものと思われる。

次に各職種に従事している者の学部別卒業生の割合をみると,事務系は法文経の学部が圧倒的多く77%となついる。これに対して,技術および研究部門については,理,工,農,医学部でそれぞれ94%,84%と圧倒的な高率を示している。技術部門が自然科学系卒業者でそのほとんどを占めるのは当然として,研究部門についても高い率を示していることは,研究活動の大部分が自然科学関係であり,しかもその研究には豊富な人材を必要とすることのあらわれであると考えられる。

昭和34年と比較すると,工学部卒の技術系就業者率の7%増がとくに顕著である。これは技術革新の進行にともない,技術者が大幅に必要になつたことを示している。( 付表4-6参照 )


2 産業別就業状況

昭和30年以降の大学卒業者の産業別就職状況を 第7-2図 および 付表4-8 でみると,大学を卒業して産業界へ就職する人数は,昭和30年を100をすれば38年は170となり,かなりの増加を示す。また,その伸び方も,ほぼ一定のペースとなつている。これは,大学卒業者に対する需要が着実に増加していることを示すとともに,人材の供給が一定のペースで伸びたことをも示している。

一方,理科系卒業者(理,工,農学部〔医学部は際く〕)の就職人員は,昭和30年の100から38年は206へとその伸びが高い。

理科系卒就職者の全就職者に対する割合も,昭和30年の21%から38年には26%へと進み,その間毎年着実に増加している。

第7-2図 産業別,学部別大学卒 業就職者数指数

このことは,科学技術者に対する産業界の需要が,近年増大していることの一つのあらわれであるとみられるが,同時に理科系の人材の供給もこれにみあうよう増大したことを意味している。

次に,この就職状況を産業別にみると産業構造の高度化にともない,その就職の流れも大きく変化している。

まず,製造業をみると,理科系卒業者が就職者(高等教育卒)の中に占める割合は,昭和38年で43%と率の高いことが注目される。また理科系の伸びは286(昭和30年100)となり,建設業の280とともに高い数値となつている。

もちろん,就職者の増加は理科系だけでなく,全就職者数においても274と増加しており,このなかで理科系の就職者率は40%から43%へと漸増の傾向にある。したがつて,とくに科学技術者にだけ,需要が集中しているとはいいがたいが,近年製造業の全産業の中に占める比重が増大の傾向にあり,例えば就職者数においては,製造業は全産業の中で昭和30年の22%から38年の36%へ,うち理科系についてみれば,44%から63%へとその構成比が伸びており,増加寄与率においては76%を示しているだけに,この部門の伸びが全理科系卒就職者数の伸びに与える影響は大きい。この傾向は今後も持続することが予想され,製造業が今後の科学技術者の需要の中心をなすものと考えられる。

この製造業を,さらに中分類別にみると,各産業とも理科系人材の全就職者に対する割合は,昭和30年以降大きく変化していない。その原因としては,供給側,すなわち大学卒業生が毎年大きく変動することもなく,また採用側の企業も毎年ほぼ一定の割合で,文科系,理科系の学生を採用しているためと考えられる。

しかし,長期的にみた場合は,理科系人材の需要が高いだけに,徐々にではあるが,理科系の比重が増加して行くものと予想される。

これらの産業の中で,とくに大きく変化しているものとして,鉄鋼業がある。すなわち,工学部卒の採用割合が昭和30年に26%であつたのが,38年には47%と8割に近い増加となつている。この伸びは,生産規模の拡大等鉄鋼生産の増大にともなう科学技術者の需要増大のためと思われるが,他産業と比較した場合,昭和30年の26%(工学部卒)は,あまりにも低きにすぎ,製造業の平均34%にも及んでいなかつた。これでは,進歩の激しい鉄鋼部門の技術革新に対処するには人材不足であつたと思われ,それが近年になつてようやく他産業なみの線に充実してきたものと考えられる。

次に,建設業では総数で昭和30年の1,669人が38年には5,219人となり,312%となつている。また理科系の就職者数の伸びも296%(30〜38年)と高い値を示している。この産業の特徴は,理科系の就職者が毎年全就職者数のうち70%前後と非常に高い数値を示していることである。これは全産業の26%と比べると3倍に近い数値となる。

建設業のこのような高水準の人材需要は,政府および民間の活発な投資による事業量の増加によるものと思われる。

農林漁業は特殊な就職の状況を示している。わが国の第一次産業の経営規模が他産業に比べて零細であるというその構造的特性から,高等教育卒業の就職者数は,その従事者数に比べて著しく低く,毎年700人前後であり,近年は逆に減少の傾向にある。

その中で,理科系は昭和38年には86%と高い率を示してはいるが,30年に比べて14%,70人の増加にすぎず,理科系就職者数の増加に対する寄与率は,僅か0.4%である。

また,文科系はわずか100人程度で,この部門に対する需要は皆無に近い。

その他,卸小売業,金融保険業等,第3次産業における理科系人材の需要が,たとえ絶対数は少いにしても,かなりの伸びを示していることは注目に値する。これはやはり,今後の企業経営が,その分野の如何を問わず,科学技術者の協力なくしては発展が望み得ないことを示しているものと思われる。セールスエンジニア,ブログラマー等販売・事務部門においても,科学技術者に対する需要は拡大の一途をたどり,将来はさらに新しい分野に科学技術者の需要が発生するものと考えられる。

第7-1表 大学卒業者,産業別就職者数

以上のように,今後,理科系卒業者の需要は増大の方向をたどるものと思われるが,これは文科系卒業者が減少することは意味せず,両者とも増大するであろうと予想される。ただし,いままで理科系の人材が不足しており,人材養成の面でその跛行性が問題とされていただけに,今後の理科系の伸びは,文科系に比べてやや高い数値を示すものと思われる。


3 就職率

高等教育卒業者の就職率の,戦前からのすう勢を 第7-3図 でみると,第2次大戦および戦後の一時期を除き,上昇の一途をたどつている。

日本経済の発展拡大にともない,高等教育卒業者の需要が増大してきたことは容易に想像できるが,全卒業者の増加に加えて,就職率が上昇していることから,その需要増大が加速度的なものであつたことがうかがわれる。

第7-3図 高等教育卒業者就職率

なかでも,とくにめだつた動きを示すものとして,工学部の就職率 注) 上昇があげられる。わが国が工業立国を目標として発展してきたため,その率は戦前から他学部に比べて高かつたが,戦後はそれがさらに一段と高まり,昭和30年以降は95%を前後する高い数値を示している。この現象はその需要が高いことを示すのはもちろんであるが,反面,需要に対して供給が追いつかないことをも意味していると思われる。


注)総卒業者に対する就職者の比率

一方,工学部において近年就職しないものをみると,そのほとんどが大学院に進学しているといえる。すなわち,昭和35年頃までは全卒業生の3%あまり,500〜600名程度の進学者であつたのが,最近は5〜6%の進学率となり,38年には1,500人を越すようになつた。

反対に,無業者は減少の一途をたどり,昭和35年以降は40名前後となつた。全卒業生に対する比率は,わずかに0.2%たらずであつて,ほとんど全員が進学または就職しており,このことは工学部関係の人材需要の旺盛なことを示している。

これを昭和39年10月の通産省調査(労働力不足の影響と対策)にみれば,採用困難な新規学卒の種類として,中学卒の次に,大企業を中心として技術系大学卒をあげている。

すなはち,大企業(従業員1,000人以上)では35%,中企業(従業員999人〜300人)では25%が技術系の大学卒の採用を困難としており,さらに,現在最も不足している労働力に技術者をあげた企業は,大企業で22%,中企業では18%となつている。

次に,理学部は,工学部ほど高い就職率は示していないが,昭和30年以降70%から80%へと増加し,近年は80%前後で頭打ちの傾向をみせている。

しかし,大学院進学者は,他の学部に比べて著しく高い率を示し,13〜18%となつている。これは工学部卒進学者の約3倍である。また絶対数においても,この10年間で約5割の増加となつている。

また,無業者は減少の一途をたどり,昭和38年には1.6%となつている。


4 職種別就職状況

第7-4図 によれば技術者の伸びが非常に高いことがわかる。全就職者の伸びが昭和38年には170(昭和30年=100以下同じ)であるのに対して,技術者は297,理工学部卒業者のみの技術者は実に325という数値を示している。次に,技術者を細分してみると,農林水産の伸びが低いのを除き,他は平均的な伸びを示している( 付表4-9参照 )。このことは,技術者の需要が一部門にとくに集中することなく,各部門にわ)たつて平均的に需要が増大してきたことを意味すると考えられる。また供給の立場からすれば,つねに各部門とも需要過剰の状態であつたために,供給が一定のペースで増加して行くかぎり,就職者数もこれに従うほかはなかつたものと考えられる。

第7-4図 大学卒職種別就職者

文科系についてみると,その需要が最も高いと思われる事務および販売では,伸び率は206で技術系に比べやや低い傾向を示している。これを年次別にみると,昭和33,34年の伸び率の低下がめだつており(全就職者数もこの年にはかなり伸び率が低下している),ある程度のタイムラグはあるにしても,相当景気の影響をうけたものとみてよいであろう。一方,技術系の就職は,図のように多少の変動はあるにしても毎年着実な上昇を示しており,その需要の伸びは昭和38年までの景気動向にはあまり左右されなかつたことがわかる。ただし,その内容に立入つてみれば,毎年の各産業部門の進展の動向により,限定された技術系卒業者が部門間で移動していることはありうることと想像される。

技術者として就職した者が全就職者の中に占める割合は,昭和30年の13%から38年には22%となり,その間毎年着実な増加を示している。

これは,事務系就職者が昭和32年以降ほとんど停滞しているのに比べて対照的である。

絶対数についてみれば,8年間でその増加数は,技術者1万8,000人,事務系3万人である。

第7-2表 就職者の中に占める専門的,技術 的職業従事者率(理,工,農学部卒)

第7-2表 によつて,理工農学部卒業者の中で専門的,技術的職業に従事した者の割合をみると,その率は年々かなり増加しており,専門分野での人的資源活用が進んでいることがわかる。

これらのことは,すべて,理工系の技術者の供給が需要の伸びに追いつかず,人材の需要を示すバロメーターの一つであるといえよう。


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