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1部  研究活動と研究投資
第6章  諸外国の動向
5  ソ連


ソ連の科学技術の最もすぐれた成果は,原子力および宇宙研究の分野にあるといつてよいであろう。世界最初の人工衛星打上げ,同じく原子力発電所の創設をはじめ,これらの先端的分野におけるソ連は最も先進的な国とみられる。

さらにソ連はあらゆる研究分野での指導的地位の獲得を大きな課題としており,全連邦科学活動の効率化のために近来研究体制の大きな改革を行なつている。すなわち,1961年4月に設置された研究開発活動調整国家委員会と,これにもとづく強力な総合的科学技術行政体制の整備である。連邦政府および各共和国の170の各省各部局に分散配置されていた研究機関ならびに教育機関の研究活動が,この改革によりはじめて一元的に調整されることになつたといわれる。

同委員会は,連邦科学アカデミー総裁,高等・中等教育省長官,各国家委員会(オートメーション,機械製作,化学,発明・発見,航空技術,兵器技術,エレクトロニクス,ラジオエレクトロニクス,'原子力,造船)の委員長,中型機械製作相(原子力兵器,その他の兵器開発ならびに生産担当)のほか,国家計画委員会(ゴスプラン)の代表各1名から成り,閣僚会議に所属して,科学技術の国民経済への導入を目的とする全国家的な研究開発計画の策定にあたり,閣僚会議の了解を求めることになつている。

現在のソ連科学技術行政は 第6-5図 のような構成となり,国家調整委員会を頂点として,従来の科学アカデミー,高等教育機関,各省による三本立ての研究活動路線を統轄し,それぞれの委員会,科学会議による調整機能を統合している。こうした強力な中央集権体制確立の背景には,近年いちじるしい研究組織の拡大と専門分化の動向にともない,プロジェクトごとに研究系列を組織しうる態勢を確保し,国家資源の投下を有効ならしめる要請がある。

第6-5図 ソ連の科学技術行政機構

しかし,この改革の目的には,前述のように科学技術の国民経済への導入が大きく謳い上げられており,その背後には例えば合成繊維や重合成ゴムでの工業化の立遅れなどの経験を見落せないであろう。このため研究成果の実用化促進,研究活動と生産との直結が具体的政策として打出されている。すなわち,研究機関-構造設計機関-生産施設の系列強化であり,設計および実験機関の工場移管が実施されている。

また,関僚会議に所属する連邦科学アカデミーは,1959年フルシチョフの提案により,傘下の技術研究部門を工業関係各省,各国家委員会へ一部移管を行なつていたが,この改革により,さらに技術研究部門の大半が移管され,したがつて科学アカデミーは科学の領域に活動を結集させることになつた。

こうした技術研究の統合の動きは,この後1962年11月の党中央委員会によりさらに強化されている。同委員会は,この改革をより有効ならしめるための管理指導体制の強化を決定しており,工業研究および技術活動の一元的指導を狙いとして,工場付設の科学機関,設計機関,実験,試験施設を工業関係の各国家委員会の管理下に置くこととした。

これに呼応して,連邦科学アカデミーは「新しい歴史的段階では,ソ連技術が重工業の発展よりも速かに成長すること,さらに技術進歩の原理上の基礎であり,技術アイディアの主要源泉である科学が,技術の発展速度を追いこすことが不可欠の条件である」との観点から,各部門の理論面における課題を確認し,とくにエネルギー,材料,測定の三分野を工業生産との関連から重視するとともに,1963年7月から指導力強化のために組織の再編成を行なつている。この結果,アカデミーは,現在,数学,一般および応用物理,核物理,エネルギーエ学における物理学的・技術的諸問題,地球科学,機械工学とプロセスの問題,一般および工業化学,無機物の物理化学と工学,生物学的化合物に関係のある化学と生物物理学および生物化学,生理学,一般生物学のほか,人文系の4部門(史学,哲学および法学,経済学,文学および言語学)と合わせて15部門に拡大されている。

なお,本年9月行政機構改革が行なわれ,工業関係各国家委員会はそれぞれ省となり,また研究開発調整国家委員会は科学技術委員会として強化されたとつたえられる。

このほか,新しい動きとしては,1962年9月のライセンス貿易公団新設がある。これは工業,とくに化学工業の振興を目的とする技術貿易の専門機関で,万国工業所有権条約への参加の動きに見合うものとされている。また連邦アカデミーによる,東方地域における大規模な科学センターの設立があげられる。これは同アカデミーシベリヤ支部を母体として発展させたもので,現在ノボシビルスク,イルクーツク等のシベリヤおよび極東諸都市に約40の研究機関が集められている。

ソ連には4,597の科学組織があり(1963年末現在),うち1,976が研究機関であるが,これらの科学活動に必要な財政は,アカデミーおよび全連邦的機関については連邦予算,共和国各省および共和国国民経済会議(ソブナルホーズ)所属の機関にたいしては共和国予算により賄われている。

国家予算は, 第6-14表 に示すとおりであり,1964年,'65年の2ヵ年予算はそれぞれ52億ルーブル(2兆800億円),54億ルーブル(2兆1,600億円)で,1956年以降約4倍の規模に増大している。

第6-14表 ソ連国家予算における科学研究費の推移

このうち,国防研究の占める比率はかなり大きく,とくに開発に属するものについては,他の費目に計上される額が少くないと推測される。


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