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1部  研究活動と研究投資
第6章  諸外国の動向
4  西ドイツ
(1)  科学技術行政体制


西ドイツにおける科学技術行政の特色は,連邦制という国家体制から,州の権限が強いことであり,このため連邦政府と各州政府の二本立てで行なうことを強いられている。現行の行政機構は 第6-4図 のとおりであるが,連邦政府にあつては,科学研究省が,従来分散されていた科学技術行政を総合的統一的に行なうことを狙いとして1963年に設立されている。それまで原子力,宇宙の分野は原子力省が所管し,一般科学技術振興は内務省において行なわれていたが,これらを統合して旧原子力省を母体とする科学研究省(Bund-esministerium fiir Wissenschaft1iche Forschung)が誕生したわけである。このほか各省間科学技術振興方策の調整機関として,科学研究各省委員会が1962年に設立されている。

一方州においては,各州文部省が大学を主体とする研究・教育行政を所掌しているが,各州の領界を超える事項については,各州文部大臣定例会議が審議している。またマックス・プランク研究協会(Max-planck-Gese11schaft zur Forderung der Wissenscheften)やドイツ研究協会(Deutsche Fors chungsgemeinschaft)等の国家的研究機関への財政負担を決定する州間協定として,ケーニヒシュタイン協定が結ばれている。

この両ラインを結ぶものとして,1957年設立の科学会議(Wissenschaft-srat)があり,最高の科学政策審議機関として,科学技術振興プログラムの国家的規模での策定と,連邦・州間調整の機能を与えられている。さらに1964年には科学および研究の促進に関する連邦・州間行政協定が締結されるに至つた。

しかし,全国家的な科学研究促進総合計画はまだ打出されていない。

ドイツの研究は,大学を主体として推進されるところに最も著しい特色がある。大学はすべて州立であるから,研究費の大部分は州から支出されるが,近来拡張・増設等施設・設備の強化のために,連邦政府支出の増大していることがめだつている。大学がドイツ社会において占める地位は,西ヨーロツパ諸国の中でもとくに高いものがあり,研究の自由が確立されている。

大学に次いで重要な研究機関はマックス・プランク協会所属の研究所であるが,これは大学の教授たちが「教育活動の義務から免がれて」研究を行なうことを狙いとして設立されており,いわば大学の附置研究所に類比きれるものである。財政は州,連邦,その他の公共機関のほか,学術振興機関を通ずる産業界からの寄附金に主としてよるが,国家にも産業界にも所属しない完全な独立自治機関である。

ドイツの研究の主体となるこれらの機関は,研究の自由を侵すことのできない理念とし,すぐれた個人を中心に組織されており,長い歴史の中で数多くの卓越した業績をあげてきた。しかし,一方では,その制度もしだいに硬化したものとなり,近年の新しい研究分野の拾頭にともなう研究の大規模化,組織化の大勢の中で,若手研究者の意欲を阻む面が強くなり始めており,これが近年における研究者の海外流出の主因とみられるに至つている。

科学研究省の設置等にみられる最近の科学技術行政の改革は,このような動きの中で進められたものである。大学にたいする連邦支出の増大からも考えられるように,伝統的な分野における大学を中心とする研究のあり方に対し,新しい分野との間で,どのような調整の方途を講ずべきかが,今後の政策の基本的な問題として提起されている。

しかしながら,近年原子力,宇宙等の分野の推進が国家として必要にせまられるにともない,これらの大規模な研究のために,政府から独立した法人形態の研究機関が設立されており,これらにおいては各専門分野の共同研究体制がすでに確立されている。政府はその財政を大幅に負担することにより,大学では行なえないような大型プロジェクトを実施し,リスクを大幅に分担することで産業界の技術開発に貢献することを意図しているわけである。

産業技術の研究は,連邦物理工学研究所をはじめ,多数の連邦,州立試験研究機関においても行なわれているが,産業界における研究の促進方策は,業界共同研究団体を援助する形で実施される。個々の企業が所有する研究所は約200あるが,そのほかにこのような共同研究機関は約100をかぞえ,その3分の2を会員とする工業研究団体連合会が連邦経済省の指導で1954年に設立されている。連邦は同連合会にたいして一括補助金を交付し,このほか各州から個々の研究機関へ支出される補助金を合わせると,同会傘下機関の財政は3分の1が連邦,州政府の負担となる。

これらの機関はイギリスの研究組合に類比されるが,中に州政府,産業界の折半負担による工科大学附置研究所の設立が,近年の新しい動向としてめだつている。

産業界はまた,大学等で行なわれる基礎研究にたいしても,フォルクスワーゲン財団等を通じて多額の寄附金を支出しているが,これに対しては10%を課税控除する税制措置をとつている。なお寄附金の集収に関してはドイツ学術後援財団が主要な役割を持ち,ドイツ研究協会が政府資金と合わせて主たる配分機関となつている。連邦政府はさらに同協会にたいして特別資金を支出し,重点計画の指定・援助が行なわれている。


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