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1部  研究活動と研究投資
第6章  諸外国の動向
3  フランス


フランスもまたアメリカ,イギリスとならんで政府による研究開発支出の大きい国である。フランス全体の研究開発費中約70%が政府支出である。

1963年では68億6,400万フラン(5,010億7,200万円,国民総生産の1.75%)のうち46億8,400万フラン(約3,419億3,200万円)が政府支出分となつている。 第6-11表 からわかるように,とくに軍事研究開発(約15億フラン,1,095億円)と,原子力関係の両者で約70%を占める支出構成もまた,米,英両国と相似するが,これらを除いた分野での国家による研究計画体制の形は,西ヨーロツパ中最も整備された国とみることができる。すなわち基礎研究を主とする科学技術研究計画が,フランスにおいては第4次社会・経済計画(1962〜'65)中に組みこまれている。

第6-3図 フランスの科学技術行政機構

第6-10表 フランスの研究開発費,財源別,1959-'63年

科学技術行政機構は 第6-3図 に示すとおりで,総理大臣を議長とする科学技術研究閣僚会議が1958年に設立され,12名の学識経験者が参加をもとめられた。この会議は各省研究予算の配分と調整を行ない,同時に諮問機関としてこれらの学識経験者から成る科学技術研究諮問委員会が設立された。この両機関はその事務局として総理府に設置された科学技術研究総務庁(D-e1egaltion Generale a la Recherche Scientifique et Technique)とともに,科学技術行政の基本ラインを形づくつている。

第6-11表 フランス政府の研究開発支出,1961年

第4次計画の一部門としての科学技術計画は,科学技術研究諮問委員会と各省代表より成る科学技術研究計画委員会が担当し,総務庁を事務局として樹立されたものである。同計画は政府,大学,産業界をカバーする全国家的科学研究計画であつて,研究設備投資,研究目標,これらにたいする政府の政策を社会経済計画との関連において策定している。しかし,これは個々の研究プロジェクトの実施面にまで立入つて規制を行ならといつたものではない。

4年間にわたる同計画には約20億フラン(約1,460億円)にのぼる財政の大枠が計上されている。計画の財政措置として特色があるのは,科学技術研究閣僚会議によつて配分が決定される科学技術研究開発基金の制度である。

これは各省研究予算の調整費の性格をもち,総合的または緊急を要する研究のための特別予算として計上されるものであつて,宇宙,ガン,白血病,エネルギー転換(原子力を含む)等10分野にあてられているが,総額の約15%という高い比率を占める。

第4次計画は1965年で終了するが,最近フランス政府は第5次計画(1966-'70)を決定している。この計画は従来4年であつた計画期間を5年とし,5%という高い経済成長率をかがげており,やはり重点事項として科学技術の振興をとりあげている。この計画では,1963年の研究投資の対国民総生産比率1.75%を1970年には2.5%とし,政府から350億フラン,民間企業から150 〜170億フランの支出を見込んでいる。また第4次計画の内容は科学研究が主体であつたが,第5次計画では応用および技術開発をも重視しているといわれる。計画の策定,実施にあたつては,文部省所管の科学研究本部(Consei1 Nationa1 de la Recherche Scientifique)が中心的な役割を果たすが,これは政府から独立した機関であり,人文系を含む約100の研究施設(研究室,研究所)を持ち,大学とならぶ基礎研究の実施主体である。運営は各省代表から成る行政会議によつて行なわれ,研究活動は32の各研究分野委員会を持つ科学研究会議の決定にもとづいて行なわれている。

なお政府研究機関としては,厚生省の国立衛生研究所,農林省農業試験場のほか,工業省所管のフランス石炭研究センター,フランスガス研究センター,フランス電気研究センター等国営の産業研究センターや地質鉱山研究所,応用化学研究所などがあり,これらは私企業からの研究委託に応じている。

産業界の研究は,1963年で31億フラン(約2,263億円)の規模に達し,国全体の研究開発の半ば近くを実施している。

産業別研究開発費の分布は,英米同様に航空・宇宙関係,エレクトロニクス・電気,化学が大部分を占めており,企業規模別にも,小数大企業への集中がアメリカに近い形でみられる。31億フランの約3分の2は民間企業の研究開発投資であるが,残余約3分の1は,政府の軍事関係研究開発を中心とする委託によるものである。これらの政府資金の約9割は航空機・宇宙関係,原子力関係,エレクトロニクスの三産業分野へ行き,これらにおける政府支出分はそれぞれ73%,36.5%,81%を占めている。このオーダーは,1960年以降ほとんど変化がない。

しかし,政府の委託は,約4分の3が10大企業にたいして行なわれるといわれ,中小企業を中心とする産業研究振興方策としては,共同研究機関の育成がある。これは業種別技術センターの設立,運営のために,業界にたいし資金醸出を義務づけるもので,現在71センターが全産業界研究開発の約5%を実施している。

比較的近年までこれが唯一の方策であつたが,1958年から経済社会開発基金による補助金,および貸付金制度が制定実施されており,また税制措置としては研究経常支出を全額控除,研究用資産は支出年度に50%償却を認めるほか,国内で収得できない輸入科学器械にたいして課税を免除している。


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