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1部  研究活動と研究投資
第5章  技術の交流

第二次大戦後わが国産業界は,経済の封鎖体制に保護され,世界的な技術革新の時期に旺盛な設備投資を行ない,内需を中心として高度の経済発展を遂げてきた。

近時IMF8条国移行,GATT12条国から11条国への移行,OECD加盟等により,わが国は本格的開放経済の時代を迎えた。したがつて,今後自由化のわが国企業に与える影響に留意し,企業の国際競争力を一層高めることに努力しなければならない。

このような国際環境において,わが国の今後の経済発展には輸出を盛んにすることが何よりも重要である。それは自由化による完成品,消費材等の輸入の増加に対して国際収支を均衡に導びくこと,および設備投資の増大により高まつた生産能力に対する需要を確保すること,等のためである。

世界貿易における最近の傾向としては,工業品貿易の伸びが著しく,1953年から'61年までの一次産品貿易の伸びが35%であつたのに対して,同期間の工業品貿易の伸びは94%となつており,また世界貿易に占める工業品貿易の比重は,1953年の46%から'61年の55%へ上昇し,一次産品貿易との比率は逆転した。さらに先進国間工業品貿易の世界工業品貿易に占める割合は,1953年の59%から'61年の66%へと上昇し,世界貿易は先進国間工業品交流を中心に拡大した。また工業品貿易の拡大の内容として戦後の世界貿易の特徴である貿易構造の重化学工業化に一層の進展がみられる。

また一方,戦前よりわが国輸出の重要な位置を占めていた軽工業製品は,先進諸国における対日差別,低開発国における軽工業等の発展等の事情を反映して,その伸びは鈍化している。このようなことからも,今後わが国輸出構造の重化学工業化が一層進められることが重要となつてきている。

わが国の産業構造には戦後大きな変革が行なわれた。すなわち国民総生産の構成比でみれば,昭和29年から昭和36年の間に,農業は21.9%,から14.4%へ,製造業は24%から30.6%へと変化し,製造業の比重が高まつてきた。

製造業内部についても,昭和35年を100とする生産指数でみれば,昭和38年において,機械の168を筆頭に石油石炭製品の167,化学の161,鉄鋼の151等,これを食品の126,繊維の127,と対比すれば重化学工業部門の進展はめざましく,産業構造の変化は,重化学工業の発展により起されたものである。

このように産業構造の高度化をもたらした,大きな要因の一つとして技術革新があることは周知のとおりである。すなわち新しい生産方法や生産技術の開発,新資源の利用,新規製品の開発等である。例えば,鉄鋼業における純酸素上吹転炉法,ストリップミルの開発,化学工業における有機化学の発展,弱電部門におけるエレクトロニクスの発展,さらにまた機械部門における建設機械,自動車,航空機産業の発達,重電部門における発電設備の大容量化等がみられる。

一方,このように製造工業,しかも大企業を中心として発展してきた技術革新の波は非製造業や中小企業にも及びつつある。すなわち,非製造業部門においても労働生産性,資本生産性の向上は必須の要請となり,これに呼応した新技術,新製品も科学技術の発展により次々と実用化をみた。例えば,農林水産業においても灌排水技術,化学肥料の品質及び施肥技術,早・抑生栽培技術,耕運収穫用の農業機械類,集運材用の大型機械類,林木早期育成技術,沿岸における養殖技術,大型はいうに及ばず小型漁船におけるレーダー,各種通信信号機,魚群探知機,各種操業機械等の進歩はめざましいものがある。この他運輸通信および公益事業における,東海道新幹線の建設等陸上運輸のスピード化,鉱石・石油輸送船の大型化,マイクロ波利用による大都市間即時通話化,通信衛星の実用化,新鋭火力発電所・揚水式発電所・超高圧送電線等による電力需給の円滑化,等であり,鉱業,建設業においては水力採炭機・各種コンベヤー等による機械化,高層ビルや,高速道路・大ダム等の大規模工事を可能にした各種建設機械,住宅のマスプロ化を図るプレハブ建築等それぞれの部門において急速な発展をみている。

また中小企業に及ぼした技術革新の影響を概観すれば,経営面においで労働生産性および企業収益の向上が問題とされると同時に,技術面においても新技術・新製品の出現により,例えば日用品雑貨における高分子材料,サービス流通部門におけるマスプロ・マスセールを可能にした真空包装技術,手工業から機械工業への進展を助長した各種作業機械類の進歩,また大企業の下請及び系列下にある中小企業にあつては材料加工,部品生産等の面において新材料の出現や部品精度の向上要求等を通じて技術革新の影響を直接的にうけるようになつた。

しかしながら,これら新製品,新技術のほとんどが外国技術の導入によつてもたらされたことからみても,わが国における技術革新が外国技術の導入を背景として行なわれてきたことがうかがわれる。

このような産業構造の高度化は輸出面への影響としても現われ,わが国輸出品中の重化学工業品の伸び率が大幅に増加している。しかし他の先進工業国に比較すると,その構造かい離係数(輸出構造の重化学工業化率/産業構造の重化学工業化率)では,アメリカ1.49,西ドイツ1.4,イギリス1.35,フランス1.21,イタリー1.12,オランダ1.24,といずれも1を越しているのに対し,わが国は0.84となつており,このことは外国技術導入に依存して発展してきた重化学工業部門における国際競争力の不足を物語つている。

戦後世界の一般的傾向として技術の交流が盛んになつてきたこと,およびわが国が戦中戦後の技術的空白をとりもどすためには,外国技術の導入が必要であつた。

このため技術援助全般を規制する一般法である「外国為替および外国貿易管理法」とは別個に,契約期間および対価支払期間が1年以上に亘る重要な技術について,昭和25年6月「外資に関する法律」を制定しその対価の対外送金を長期に亘つて保証することによつて優良技術の導入を促進する措置を講じた。

このような措置によつて,一方において産業発展に寄与する新技術の導入を保護奨励するとともに,他方においては国内既存産業の保護を目的とする規制的役割をも行なうようにした。

しかし,最近におけるわが国産業の発展や,国際環境の変化にともない,技術導入についての規制緩和は徐々に進められ,昭和38年度には貿易為替自由化促進計画の一環として技術導入部門の審査の緩和ならびに審査期間の短縮等,自由化に対処して必要な政・省令が改正されるとともに,乙種技術導入については日銀限りの自動的認可の範囲が1件3万ドルまで引上げられた。

このような緩和措置にともない,最近の技術導入は活発化し,38年度には甲種技術導入 1 )564件,乙種技術導入 2 )573件,39年度には甲種500件乙種541件に達した。

一方技術輸出についてみると,昭和25年から38年12月までの技術輸出件数は同期間における導入件数の甲種,乙種合計約5,000件に対し291件と極めて少なく,その対価受取りも導入の支払対価2,500億円に対し120億円であつた。またその内容をみても,相手地域では最近において先進諸国向が増加しているとはいえ東南アジアを中心とする低開発国が主であり,輸出された技術も高度の技術内容を示すものはあまり多くない。しかしながら最近における先進諸国に対する技術輸出の伸びはめざましく,わが国の技術水準は先進諸国の技術水準に接近しつつあるといえよう。さらに特許出願における外国特許の増勢をみてもわかるように,わが国技術水準に対する諸外国の評価も一段と高まつてきたことが推察される。

以上のような観点から,わが国における技術水準を概観すると,その生産技術においてある種の部門では先進諸国に匹敵し,一部それを上まわるまでに成長しているといえるが,その新技術新製品の開発能力においてなお一層の努力を必要としているといえよう。

したがつて今後,わが国の経済成長を持続するには新技術,新製品の開発に努めるとともに,このような新技術の交流によつて国全体の技術水準の向上を図ることが必要である。


注 1)  「外資に関する法律」により認可されたもの


2)  「外国為替および外国貿易管理法」により認可されたもの


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