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1部  研究活動と研究投資
第4章  研究投資
1  研究費の推移と構成


科学技術を経済活動との結びつきでみると,19世紀以降の発展は,それ以前と比較してめざましく,一般には,ほぼ50〜60年の周期で,世界的に経済を拡大せしめてきたと考えられる。科学技術自体の進歩は,継続的なものとみられるが,それが経済活動と結びつく場合に,周期的に大きく開花しているといつてよいであろう。

1810年を一つの頂点とする英国を中心とした産業革命,1870年代前半の,ドイツ,アメリカを中心にした鉄道の発達を中核とする発展,1910年代後半の重化学工業,なかんずく化学工業,自動車工業の発展を中心とする産業の拡大,これらを,開花の現われとみることができる。

その後は,1930年頃の世界的な経済恐慌と,1939年から1945年に至る第二次世界大戦を含み,科学技術にとつては,着実な蓄積の期間であつたといえよう。そして,主として軍事目的のために発達してきた電子工学とか原子力等についての技術,あるいはオペレーションズ・リサーチにみられるような考え方が,第二次大戦後一層発展し,民需産業にも適用されて,現在の技術革新のもとをなしたと考えられる。

最近の技術の特徴は,総合化,大規模化,高度化の傾向をもつているが,わが国は戦後の急速な経済成長と科学技術の進展により,これらを消化する実力をつけ,初めてアジアの一角で,世界的な技術革新の一翼を担うことができたと考えることができる。

一方,このような技術革新の周期からみて,現在を一つの開花期と考えると,今後は科学技術の蓄積期に移行するものとも考えられる。また,ひるがえつて現在の技術革新の進展状態をみると,たとえば合成繊維における新製品とか,鉄鋼,石油,電力等における大規模化などにみられるごとく,大部分の産業分野では現在の科学技術を使つた技術革新は,すでにかなり進行した段階にあると考えられる。この意味から,現在は,新技術の開発の基盤となる基礎研究の蓄積が不足してきたと考えられ,その充実が必要とされている。

このような状況下に技術開発競争は,一層きびしく行なわれており,しかも今後の研究には,例えば超高圧とか超高純度のように,あるいは分子生物学のように,新しい領域のもの,または境界領域のものが多く,非常な努力が必要とされている。

以上に述べたような情勢から,わが国の現状をふりかえつてみると,研究費の面からだけでもいくつかの問題点が見出される。

その一つは過去の研究投資額の累計値が主要諸国のそれと比べて小さく,自主技術の輩出が早急にはそれほど期待できない状態にあり,現在なお大きく技術導入に頼つていることである。

研究費の増加率鈍化の傾向は,世界的な傾向ともみられるが,すでに研究費の絶対額が大きく,その国民所得に対する比率も2〜3%に達している先進諸国に比べ,わが国は絶対額も少く,国民所得比率も1.7%台で3年間も足踏みしている状態である。これからの研究は,たゆみない基礎研究の蓄積と大規模な開発研究との両者を並行的に進めて行かねばならず,そのため一層多額の費用を要することからみて,この状態にあることは好ましいとはいえない。


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