ここからサイトの主なメニューです
前(節)へ  次(節)へ
1部  研究活動と研究投資
第2章  総合分野における研究
5  材料
(2)  高分子材料


有機特に高分子の分野における研究は,ますますさかんになりつつあるが,最近では,かつてのように大きな影響力を持つ新らしい高分子材料の出現はやや困難になつて来たようにみえる。

それは,一つには,新らしい種類の高分子構造の開発がひとわたり終了し,研究がより高次な方向にむかわねばならぬためであり,さらには,既存樹脂による市場支配が確立し,今後出現すべき高分子材料は,価格の上でこれらと競争しなければならず,性質の優秀さだけでは,広範囲な進出が望めない状況になつているためであると考えられる。一般的な用途のための高分子材料では,コストの低下がその発展を左右するといつて過言ではない。

このような事情から,最近の研究の主流は,既存材料の性質の改善,製造コスト引下げのための新らしい反応,工程の研究および特殊な用途のための材料,例えば,耐熱性プラスチックス,有機半導体,感光性プラスチックス,弾性糸,軽量体プラスチックスなどの分野にむかつている。.


1 既存材料の改良と新しい合成法

塩化ビニール樹脂では,その欠点である低い軟化点を上昇させる目的で,結晶性のよいものを得る重合方法の研究が行なわれており,逆に,さらに軟化点を下げて一そう加工性をよくするための検討もなされている。合成法では,塩酸の副成を避けるために,オキシクロリネーション法あるいは混合ガス法などの工業化が進展するであろう。

ポリエチレンの重合法でも進歩が続いており,共重合物としては,酢酸ビニールとの共重合物のほか,なお多くの組合せが試みられ,ゴムとの混合物による新らしい需要分野の開拓にも興味がもたれている。

ポリスチレンの最近の発展は,主としてその耐衝撃性の向上によるものといわれ,とくにABS樹脂はその用途を確立しつつある。また,軽量体としても,スチレンペーパーなどの広い用途が期待され,欠点である燃えやすさを克服する研究が進められている。

そのほかのプラスチックスの分野でも,研究は活発に行なわれており,例えば,エポキシ樹脂の耐熱性向上,メラミン樹脂の尿素からの直接合成,PdC12 法によるエチレンからの酢酸ビニールの合成などがあり,アセタール樹脂も機械用としての需要が確立してきた。

合成センイの分野では,わが国で開発された新しいナイロン原料合成法(PNC法)が注目される。


2 新しい種類のプラスチックス,合成センイ

耐熱性プラスチックスとしては,既存のポリカーボネートのほか,フェノールフタレインとフタル酸とからのポリエステルで,融点400°C前後のものが開発されたといわれる。工業化されてはいないが,ポリベンズイミダゾールなど,数種の高融点化合物は将来有望な材料とされている。

耐熱性センイとして開発されたものには,(上記各樹脂もセンイにも加工可能と思われるが)ポリアミドの一種で350゜Cでも強度低下の小さいものや,アクリルセンイを高温処理して作られる黒鉛センイなどが知られている。

高分子半導体は,実用化のためにはなお多くの物性的研究が必要であるが,この種材料の示す光電導性を利用して,電子写真にはすでに利用されはじめた。

感光性プラスチックスは,多くの種類が知られているが,実用の写真材料としては感光波長域が重要な問題で,感光域を長波長側に拡大する努力がなされている。

ポリウレタン系の弾性糸はわが国でも生産の計画があり,この方面の研究も,合成ゴムと関連を保ちながら推進されるものと思われる。

軽量体プラスチックスの用途は大いに拡大されつつあり,包装材,弾性材,断熱吸音材などのほか,合成皮革においても,重要な役割を演ずるものと考えられる。合成皮革としてはすでにナイロン系あるいはウレタン系の相当数の種類が発表されているが,さらに新しい需要の開拓をめざして,改良競争が続けられよう。


前(節)へ  次(節)へ

ページの先頭へ   文部科学省ホームページのトップへ