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1部  研究活動と研究投資
第2章  総合分野における研究
5  材料
(1)  最近の材料の変革


現代は材料革命の時代ともいわれている。一般機械,自動車,建築から日用雑貨品に至るまで,一昔前と違つた材料,すなわちアルミニウム等の軽金属とか,プラスチック等の新材料が著しく使用されるようになつている。給水用鉛管は硬質塩化ビニール管にとつて代られており,(昭和年37年東京都の給水管の72.4%),建築材料におけるアルミニウムの進出は著しく,アルミ電線も到る処で使用されている。また同じ材料分野の中でも,たとえば,プラスチックは1930年代はフエノール系がトップであつたのが,50年代にはビニール,スチレン・レジンが主流になり,やがてポリエチレンが主流になつているし,鉄鋼においても,わが国の鋳鍛鋼の生産量の伸びが昭和10〜35年で2.7倍であるのに対し,特殊鋼は16.9倍というように著しく変化している。このように現在は新らしい材料が旧材料にとつて代わる置換,代替が激しく進んでいると同時に,同じ材料内でも内部で代替,置換が起つている。

現代が材料革命といわれている理由は,まず第一に需要部門の質的な変革すなわち,プレハブ住宅,自動車,あるいは家庭電気製品等の耐久消費財の出現と,それに付随する材料の需要である。さらにまた,生産財部門においても,最近の技術革新の進行にともなつて,材料部門への新しい要請がみられる。原子力産業においては,天然の核燃料物質の製練,加工の問題,材料の中性子,放射線に対する特性への要請,安全性の要求からみた材料の溶接性,酸化,腐蝕等に関する問題,等々のような従来みられなかつた特異な要求に応える材料の開発が要請され,インジウム,リチウム,ビスマス,カリウム,ベリリウム,ハフニウム,ウラン,ボロン鋼,ジルコニウムといつた新材料が開発されつつある。また電子工業では,ゲルマニウム,シリコン等半導体材料の開発が問題になる。超電導現象の電気工学その他への応用は,電力のほとんどいらない強力な磁界とかいろいろの可能性をもつているが,これも超電導現象を示す材料の開発にかかつている。火力発電における高温高圧化は,ボイラー,タービン等の材料の耐熱性その他に対する条件をますます苛酷にしている。工作機械の切削速度はますます速くなり,それに耐える工具鋼が要求される。電子機器や発電機における磁性材料そのほか絶縁材料等々において,材料に対する要請は昔とは質的に異つてきている。

さて,現代が材料革命といわれる第二の所以は,このような要請をみたすための材料生産技術において製錬,重合,加工の段階を通じて画期的な変革が起つていることである。すなわち,材料の内部組織と性質との関連が明らかになつてきて,意識的に要請された性質をもつ材料を開発する方向に進みつつあることである。

近年の材料研究の特長は,研究手段の発達と,理論の発展である。例えば,鋼では現在結晶粒の高温における成長のメカニズムは高温顕微鏡で直接観察でき,また,各種の自動分析装置による微量含有物の分析,電子顕徴鏡による組織の観察,X線による結晶解析,非金属介在物の分析等々が行なわれ,核磁気共鳴吸収装置も使われている。

このような研究手段の発達とともに,近年の物性論の発達により,材料開発において理論がその指針となることがきわめて多くなつてきた。磁性材料の開発における磁性理論の役割はその顕著なものであろう。転位理論は金属の諸性質の研究にきわめて重要となり.生産技術にも深くくいこみつつある。また材料の加工部門においてもレオロジーは大きな役割を果たしている。このような材料研究手段と理論の発展は,今日の材料開発の方法を,従来の所要の性質をもつ材料を試行錯誤的に見出して行く方法から,材料の性質と物質の構造との関連に関する理論を指針として,意識的に目的とする材料を開発するという方向に変換させつつある。

さて,材料といえば,その中心は金属であるが,ここでは近年とくに注目され出して来たプラスチックスに代表される高分子材料と,プラスチックスと金属の間にあつてめだたないが,近年非常に重要な発展をしている非金属無機材料とについて,その研究の概要を次に述べることにする。


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