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1部  研究活動と研究投資
第2章  総合分野における研究
1  宇宙
(2)  わが国の宇宙開発



1 沿革

わが国における宇宙空間研究着手の発端は,昭和29年(1954年),IGY(国際地球観測年,昭和32年〜33年1957〜58年)のロケット観測計画に参加することを決めたときである。わが国がロケット製作に着手したのは昭和30年(1955年)で,これが東京大学生産技術研究所のペンシルロケットである。同研究所は高層観測ロケットの研究開発を始め,昭和33年(1958)にはカッパ型(固体燃料,二段)が60kmの高度まで達し,温度,風,宇宙線強度,気圧の測定に成功した。IGY終了後,ロケット人工衛星による宇宙空間科学の研究に関する国際機構として,国際学術連合(ICSU)の中に宇宙空間研究委員会(COSPAR)が設けられ(1959年),これに対応してわが国でも日本学術会議に宇宙空間研究特別委員会が設けられた。

このようにIGYを契機としてはじまつたロケット観測は,ロケット製作と打上げを東大生産技術研究所が担当し,観測の具体的計画は,生産技術研究所におかれたロケット観測協議会で審議樹立されることになつた。カッパ6型による観測は主として,気温,風であつたが,昭和35年カッパ8型が50kgのペイロードで200kmの高度に達してから観測の対象は電離層が主体となつた。

電離層の電子,イオン密度,電子温度等の観測は郵政省電波研究所,電々公社電気通信研究所が担当し,信頼できるイオン密度測定の世界最初のものが得られた。

これらのほか,宇宙線の測定(理化学研究所),大気光の測定(東京天文台),電離層の中での低周波電波の伝播および電波雑音の測定(京都大学・東京天文台),地磁気の測定(東北大学理学部)など,いろいろの観測が行なわれ,それぞれ興味深い結果が得られている。

前述の生産技術研究所のロケット観測が軌道にのりかけた頃,昭和35年5月総理大臣の諮問機関として,総理府に宇宙開発審議会が設置された。審議会に対しては同年6月諮問第1号「宇宙開発推進の基本方策」諮問第2号「昭和36年度における宇宙科学技術推進方策」を経て,昭和38年1月諮問第3号「宇宙開発における重要開発目標とこれを達成するための具体方策いかん」が出され,昭和39年2月にその答申が行なわれた。この答申は,わが国における宇宙開発の方向と重点目標を設定し,今後5ヵ年程度の重点開発目標として,次の6,項目をあげている。

1) 人工衛星を国内で開発製作し,場合によつては,外国のロケットを使つて短期間内に打ち上げること。
2) 気象等実用化ロケットの早期開発を促進すること。
3) ロケット能力のかん養を図り,総合的長期計画を樹立すること。
4) 他国の衛星による宇宙の利用技術を開発促進すること。
5) 観測ロケットを用いて宇宙科学の研究を発展せしめること。
6) 各種観測,計測機器等の開発を促進すること。

開発体制については,たとえば近い将来に自力で人工衛星を打上げるなどの大目標をかかげて,わが国の有する科学,技術,資金等を総合的,効率的に活用しうる一元的機構を設けることが理想であるが,それに進む第一段階として,取敢えず現状に即して二本立ての体制を答申している。すなわち,実用化の開発である重点目標1,2,3,6を達成するためには,各省庁が分担している現状を前提として,それに必要なロケット,人工衛星の試作,打ち上げの実施ならびにこれに直結する研究などを推進するために宇宙開発推進本部を科学技術庁に設置すべきことを要望した。

これよりさき,科学技術庁は,宇宙開発審議会の設置と同時に宇宙科学技術の開発に着手し,昭和35年度には,民間会社に気象観測ロケットの研究委託を行い,36年度には,,これに加えて「人工衛星のインストルメンテーションの研究」のテーマのもとに,人工衛星システムについて,本格的研究を開始した。また昭和37年には研究調整局航空宇宙課が新設され,航空宇宙政策に関する基本政策の企画,立案を所掌し,研究機関相互の連絡と予算の調整を行うことになつた。

このような一連の動きの中で,前述の第3号答申が出され,宇宙の総合的・効率的利用を推進する中核的開発実施機関として昭和39年度に宇宙開発推進本部が設置された。

宇宙開発推進本部の任務は,国としてとくに開発の必要があるロケットおよび人工衛星について,その装備機器を含め,関係省庁が重複して開発することが不適当と認められるものを開発することにあり,当面,実用人工衛星,大型液体ロケット,気象等実用ロケットなどの開発を骨子として努力をつづけている。また科学技術庁航空宇宙技術研究所は,これと関連して開発のバックアップに必要な,ロケットの基本設計,燃焼に関する研究,機体の機構,空気力学的性能,ロケットモーター等に関する研究を行なつている。

他方,宇宙科学研究に関しては,昭和37年日本学術会議がわが国の宇宙科学振興の具体策を政府に勧告したが,その中でロケットその他を利用する研究を組織化するため,宇宙工学的研究と宇宙科学のための観測を行なうほか,理学的研究部門をも包含した性格の,宇宙科学研究所の設置を勧告した。また諮問3号の答申においても,宇宙科学研究のため新たに大学の共同利用研究所として宇宙航空研究所の設置が要望され,この答申に従つて昭和39年東京大学宇宙航空研究所が設置された。この研究所は3ヵ年計画で完成予定である。


2 わが国の宇宙開発

わが国の宇宙開発の状況について述べれば,次の如くである。


1) 人工衛星の開発製作

この方向の研究は主として宇宙開発推進本部で行なわれており,その内容は,航海衛星測定方式の検討,気象衛星撮影・送画装置,通信衛星の通信方式の検討,人工衛星の方位制御,誘導装置検討などである。


2) 気象等実用化ロケットの早期開発

国連の世界気象機関(WMO)の勧告に基き,気象庁,気象研究所は超高層の気象条件観測のため,小型ロケットに搭載できる測定機器や送信機の開発をすすめてきた。東大宇宙航空研究所は鹿児島宇宙空間観測所でロケットを打上げ,超高層大気の風,温度,大気密度等の観測を行なつている。いつぽう気象等実用化ロケットの開発は,宇宙開発推進本部で行なわれており,昭和38,39年には,防衛庁新島試射場において,これまでの研究成果を実証すべく飛しよう試験が実施されたが,とくに昭和39年には,わが国初の気象観測プラスチックロケットS-B型が高度60kmに達し,観測に成功した。また,液固体燃料2段ロケットLS-A型も正常に飛しようし,所期の成果を収めた。また2重推力方式のS-C型ロケットが試作されつつある。


3) ロケット能力のかん養

わが国においても,衛星の打上げが可能な大型ロケットの生産を目標とし,液体燃料ロケット,誘導機器等の開発研究が宇宙開発推進本部で行なわれている。


4) 他国の衛星による宇宙の利用技術の研究

郵政省電波研究所では人工衛星からの電波を受信し,東京天文台では衛星の軌道の究明を行なつている。

通信衛星によるテレビ,電話等の遠距離通信に関する研究は電波研究所で行なわれており,昭和39年10月,アメリカのシンコム3号により東京オリンピックのテレビ中継に見事に成功したことは耳目に新しいところである。

気象庁は,アメリカの気象衛星タイロスによつて撮影された雲の写真による気象解析を行なつている。現在その資料はアメリカ気象局から受信しているが,衛星から送られる画信号を直接受信する受信機および解析装置の開発を行なうべく準備をすすめている。

国土地理院は海上保安庁水路部,東京天文台と協力して,アメリカの測地衛星ANNAを用い,八丈島,鳥島の位置決定を行ない成功した。また,この観測のために,新型シュミット・カメラや,高速で飛しようする衛星のタイムと位置を同時に正確に観測できる装置が開発された。


5) 観測ロケットによる宇宙科学研究

IGY以来東大生産技研の観測ロケット(現在は東大宇宙航空研のロケット)の開発と,それによる超高層の観測により,高層気象,電離層,放射線,地磁気等の研究が行なわれてきた。カッパ8型以後カッパ9L(昭和36年)カッパ9M(昭和38年)と開発され,昭和39年にはL型ロケットが,高度1.040kmに達した。40年には大型ロケット,M型により,地球から13,000km〜30,000kmの外側ヴァン・アレン帯の観測を行うことを予定している。昭和39〜40年(1964〜65年)はIQSY(太陽黒点極小期国際観測年)なので,気温,風,電子密度,酸素分子等についてのロケット観測が行なわれている。


6) 各種観測,計測機器の開発

この分野では種々のものがあるが,特長的なのは電離層観測のために開発されたレゾナンス・プローブなどである。


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