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1部  研究活動と研究投資
第2章  総合分野における研究

近年,科学技術はますます拡大深化し,急速な進歩と変革をみせている。

例えば,物理学の分野では,核物理,素粒子等の高エネルギー物理学が世界的にますます大型の加速器により,あるいは宇宙線の観測により,物質の究極の世界を追求している。他方,磁性,半導体,超伝導,超流動,高分子物質等をはじめますますその対象が拡散しつつある固体物理,あるいはプラズマ物理といつた数多くの分野で盛んに研究が行なわれている。しかもこのような基礎分野は他の科学や技術の分野の基盤に広く浸透しており,例えばいわゆる物性論は,いまや物理というよりも化学,生物学,あるいは材料の研究と密接に関連し,現代科学技術のーつの重要な基盤となつているし,核融合の実現はプラズマの物理的解明がその鍵となつているともいわれている。近年のメーザー・レーザー・超伝導等に関する技術はこの基盤から生まれている。またロケット,人工衛星,エレクトロニクス技術の発達は,宇宙物理学・地球に関する科学の研究に画期的な手段を提供し,地球を含めた宇宙に関する知識に新生面をもたらすとともに,人類に新しい可能性の世界を開いた。この分野の研究が今後人類に何をもたらすかは大いに期待されるところである。地球に関する科学も,近年の観測機器の性能の向上等により大幅にかきかえられつつあり,汎世界的な国際共同研究もIGYを契機に次々と行なわれ,豊富な成果があがつている。基礎科学の分野で近年とくに目ざましい発展をとげているのは生物学であり,DNA,酵素,蛋白質のアミノ酸・染色体等の分子生物学の研究はこれからますます盛んになるであろう。

現代の技術革新はさまざまの捉え方ができるが,動力源における革命,情報処理および変換技術の展開,材料の変革という三つの流れをみることができる。人類のエネルギー消費量は指数函数的に増大しているが,今後の原子力の開発,あるいは従来のエネルギーを一層効率よく変換しようという直接変換方式の研究は,エネルギー問題を解決して行く鍵となろう。固体エレクトロニクスを中心とするエレクトロニクスの発展は,信号の伝達処理,エネルギー変換の手段を画期的に変革し,広い意味の電子計算機の発達は,生産技術,事務処理におけるオートメーシヨン化を可能にした。これらの技術の発展の一つの鍵を握るものは,この新しい技術体系を可能にする材料技術であろう。他方,我々の消費生活からみるならば,合成繊維,食品の貯臓,輸送,加工手段の発達,各種新建材の出現等により,われわれの衣食住も現代の技術により激しく変化している。

このような生産技術の発達とともに,今日大きな問題になつてきたのは,防災,生活環境,医療等の技術である。これらは,国民生活の上からも,産業の発展からも,国全体として考えなければならない大切な問題であり,生産技術におけるのと少し違つた意味で,各分野の協力による総合的な研究を必要とする場である。従つて,国としても国立防災科学技術センターの設置を行ない,またこれらの課題を重要総合研究として取り上げるなど,種々の対策をたてている。

以上のように,現代の科学技術は各分野が深化するとともに,新しい分野,境界領域,各分野の協力を必要とする総合的領域等にみられるように,横への広がりがみられ,かつ各分野相互の連関がきわめて複雑になつてきている。

そして研究の面から眺めるならば,今日の技術は,従来不可能であつた研究を可能にする手段を与え,機器設備の性能向上は,研究の進展の度合を早めており,また今日の技術の研究には,昔日の経験主義的な方法にもまして,科学の方法が深く広く浸透しつつあり,従来に比べてより広い基礎的な学問的背景が要求されている。

今日のぼう大な科学技術の全分野を客観的に適切な比重をおいて展望することはきわめて困難であるので,以下いくつかの分野について,今日の課題と研究の概要を述べる。


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