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  各論
§19  医療および公衆衛生
III  疾病対策
2.  脳血管損傷と心臓疾患

脳血管損傷は過去10年間,国民死亡の首位を占め,昭和35年には年間約15万人の死亡数を示している。一方心臓疾患による死亡も第3位を占めており,その数は今後の診断技術の発達によつてさらに上昇線をえがくことが予想される。

これらの疾患に対する治療の現状をみると,心臓疾患に対する外科的療法は,低体温法と人工心肺との発達によつてこの数年間に顕著な進展をとげた。わが国ではじめて心臓外科手術が行なわれてから10年,今日では,先天性,後天性の心臓疾患に対する開心手術は着々とその効果をあげている。しかし恒久的な人工代用心,人工弁,心臓移植など,今後の技術の発展に解決をまたねばならない問題も残つている。

つぎに血管に対する手術療法の発達も注目すべきものがある。血管縫合器の進歩や代用血管にテトロンなどが用いられるようになつてから,大動脈移植が可能となつた。しかし,末梢動脈に対する移植遠隔成績は現在必ずしも満足すべきものではない。比較的細い動脈に合成代用血管を移植した場合に移植成績が不良になるのは,血栓性閉塞が生ずるからであつて,合成代用血管の改善または新たな形態の合成代用血管の開発が必要である。以上のような外科療法のほかに,血管損傷のもととなる直管老化に対する薬剤や血栓防止のための抗凝固剤の開発によつて脳卒中や心筋梗塞を予防する研究もすすめられているが,まだその適用については問題がある。

なお,高血圧,心臓疾患に対する公衆衛生的な対策については,近年その必要性が強調され,色々な方式で集団的な検診が行なわれているが,その検診方式および判定を基準化するためには,なお幾多の問題がのこされている。たとえば,集団検診の場合は,重篤な所見のみられる例よりもむしろ軽度の異常所見を認める例が多い。そして集団検診は,その重点を疾患の早期発見におくべきであり,そのためにも軽度の変化の意義づけを急がねばならず,さらに継続調査が必要である。また本疾患に対する社会復帰の問題も考慮さるべきである。


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