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  各論
§18  防災科学技術
II  防災科学技術の諸問題
2.  台風

台風の生態および運動機構に関する基礎的研究と台風予報などの応急対策的な研究は気象庁を中心に行なわれており,わが国での気象学研究は世界的にも高い水準にある。ただ,気象学の研究分野があまりにも広汎であり,また人材不足も加わつて,台風に関する研究を組織的に進めることはほとんどできず,台風を気象解析の一事例としてとり上げてきた観がある。このような実情を改善するため,台風の発生,発達,進行,消滅などの生態および構造など未開拓分野を究明し,また風,雨,高潮など台風にともなう自然現象について研究するため,気象研究所内に台風研究部が設けられ,この方面の研究が進められつつある。ただ,この場合,気象学者が非常に苦労するのは,本邦を離れた南方洋上の必要な海域における気象観測,海洋観測の資料がきわめて少ないことで,理論的な考え方と実際とを一体化させるためにも,適切な飛行機観測の実施と洋上観測の強化,国際協同観測の実現をはかる必要がある( 図18-L参照 )。

しかし,台風の災害は気象現象としての台風の研究ばかりでなく,台風の正確な予報方式の確立,防災工学的研究の強化,防災を考慮に入れた地域総合開発計画の推進,警報の伝達およびその組織,避難対策などすべてを含めた総合的な災害対策を講じなければ解決は望めないが,ここでは観測を中心に現状と問題点とを述べてみよう。
(1) 気象用レーダー観測

気象用レーダーは昭和29年大阪に設置されて以来現在まで9ヵ所に設置され,その観測範囲は半径約300kmでほぼ本土を覆つており,台風の進路,降雨範囲などを正確にとらえ予報上欠くことのできない重要な役割を果している。しかしその分布からいつて西日本方向から東北進する台風については,早くから観測できるが,直接東日本に向う台風は近ずかないと観測範囲には入つてこない。有効半径を大きくしてこの問題を解決するため,富士山頂または八丈島のいずれかに計画が検討されている。
(2) 気象衛星またはロケットによる気象観測

この間にあつて,昭和36年7月アメリカで打上げられたタイロス3号気象衛星の気象観測成功によつて今後の台風観測に役立つ糸口が見出され,すでに何回かわが国天気図作製に寄与している。

わが国においてもロケットによる気象観測を実施するため昭和35年度からロケットの開発,観測機器の研究が進められている。
(3) 電子計算機による予報

気象予報の精度をあげるため気象庁では昭和34年以来IBM型電子計算機を利用しており,24時間先後の地上,高層,北半球などの各種の予想天気図を作製し,また台風などの進路予想を行なつている。
(4) 高潮対策

高潮対策については,湾内の高潮の計算は非常に複雑であり,従来は正確に計算をすることが困難であつたが,電子計算機で伊勢湾台風による高潮の計算を行なつた結果,実際とほとんど違わないことがわかつた。これをもとにして,東京湾,大阪湾,周防灘の高潮の計算が行なわれ,同地方の防災工事計画策定に大きな貢献をした。

従来の検潮記録は高潮のあつた後にその高さがわかるのが常であつた。高潮を予報するためには潮位を時々刻4に電波で通知する無人(ロボット)検潮機が必要である。

東京湾に昭和36年度設置されたものは,気象庁に親局をおき,横須賀,横浜,川崎,東京,千葉の5ヵ所の子局にロボット検潮機をおき,子局から無線で親局に送られる資料をもとにして,電子計算機によつて,育潮の貰さと時刻等を計算し,防災対策上適切な通報を出すことがでぎる。

図18-1 気象用レーダー観測網図


(5) 今後の問題点

台風の進路を予測することは,従来の統計をもとにしたものから理論的,数値的な方法による予報が緒についた段階で,今後は従来から行なわれていた台風の位置,運動を捕捉するための飛行機観測の強化,500km程度の長距離レーダーの整備,ラジオゾンデによる観測体制の確立などの諸点が差当つての問題である。とくに最近においては,大災害が地域的に集中する傾向が強く,今後は観測および予報においては情報の精密迅速化および即応化を強化する必要がある。

一方,このような台風そのものを消滅させたり,進路を変更させたりできないだろうか。この台風の調節については,気象関係者にも一応の夢がないわけでもなく,米国のハリケーン研究計画の一環として正式により上げられているような人工降雨によつて熱バランスを崩れさせ,進路の変更をはかるとか,あるいは台風を早期に発見することにより,その周辺の海面に油を流して水蒸気の補給をはばみ,台風の発達を阻止する等の可能性が検討されている。


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