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  各論
§18  防災科学技術
II  防災科学技術の諸問題
1.  地震

日本は地震の多い国で,破壊性のある大地震だけでも明治以降平均1年に1回の割合で起つており,地震の被害を防止する有効な対策はますます重要視されてきている。

大地震はきわめて大きなエネルギーをもつもので,その大きさは原子爆弾の数千ないし数万倍に相当し,現在の段階ではこの現象をはばむ方法はなく,地震予知の研究の推進と構造物などに十分な耐震措置をすることが重要である。
(1) 地震予知

地震に関する研究が日本において始められてから80年近くなり,地震研究所を始めとして,各大学,気象庁,国土地理院などにおいて研究,測定,調査が行なわれ,地震研究は着実に進歩してきたが,この間地震予知に関する問題も多く取り上げられ,現在地震予知を目的とする測定の種類と方法について一致した見解がえられており,この研究を推進するために昭和36年に地震予知計画研究グループが誕生した。地震予知の方法は,その大部分が「地殻変動の調査」であり,これに付随して「地震活動の調査」「地震波速度の観測」「活断層の調査」「地磁気・地電流の調査」も必要とされるが,それらについて簡単に現状を述べてみよう。
(a) 地殻変動の調査

地殻変動調査はこれを大別して,測地的方法によるもの,地盤の隆起沈降測定によるもの,連続観測によるものがあげられる。

測地的方法によるものについては,現在まで地震にともなう地殼変動に対して多くの資料がえられ,平時においても地殻変動が緩慢に進行しつつあることが明らかになつている。しかし,測量の間隔があきすぎる場合には,地殻変動と地震発生の関係を知ることができないので,このためには少なくとも全国的な規模の反復測量の時間的間隔を現在数十年おきであつたものを少なくとも5〜10年にすることが必要である。また,特殊地域を対象とする反復測量においては,最近実用化されたジオジメーター(20kmまで2×10‐6ので測定可能)を用いることによつて,従来行なつてきた100m菱形基線よりもつと大規模な辺長10〜15hの菱形基線の設置も考慮されている。

また,海面が不動であるなら,これをもとにして地盤の沈降隆起を知ることができるので,験潮所を全国に適当な密度で分布させることによつて,気象,海流など影響を除去して地殻変動の推移を監視できることになる。現在66ヵ所の既設(気象庁34,国土地理院9,水路部13,その他10)の外に26ヵ所を追加して観測を行ない,さらにこの多数の記録は,月毎に中央局に集め,データー処理の統一とその処理の近代化,すなわち記録の自動読取りと調和分解計算を電子計算機によつて行なう計画がある。

地殻変動を連続的に観測するために,土地傾斜と土地伸縮計が研究実用化されており,全国28ヵ所で観測が行なわれているが,今後は新設を加えて100ヵ所とし中央局で整理解析することが計画されている。
(b) その他の調査

破壊地震はほぼ同じ地域に繰返して起る傾向があり,また小さい地震もその活動の状態が大きい地震の発生と関係を持つことが期待されるので,観測によつてくわしい資料を蓄積することは大きな意味を持つている。

現在まで大地震(M≧7)中地震(M≧5)についての資料は蓄積されてきたが,これを地震計の近代化によつてM≧4からM≧3の地震を観測することを目標としている。

その他,地震伝播速度の変化と地震との関係をつかむための爆破地震による地震波速度の観測地震と密接な関係を有する新らしい地質時代に活動した断層の分布や性質の調査なども平行して行なうことが計画されている。
(2) 耐震技術

1960年7月,第2回世界地震工学会議が東京で開催され,世界の地震国の耐震技術に,多くの刺激と示唆を与えた。わが国からも数多くの論文が発表された。その中の2,3について述べると,まず耐震設計の基本となる地震の強さが日本各地で定量的に推定できるような方法が発表されたことである。これは震源地における地震の大きさ,敷地地盤の卓越周期(ゆれ易い周期)がわかれば,地表の任意地点の地震の大きさが定量的に推定できる方法である。この方法は現在建築基準法で与えられている一般的な地震力をより合理的に定量化するものであり,一つの注目すべき進展といえよう。なお強い地震を測定するための地震計は全国的に次第にその数を増しつつあるが,昨年度においても数台の増加をみて,合計80台に達している。

つぎに注目すべきことは,大地震時に建物がどこまでこわれるかという理論的研究が電子計算機によつて進められたことである。建造物は大地震に際しても全く無疵のままでおくということは経済的に莫大な費用を要するので,差支えない程度の損傷を許すことにしているが,その程度を建物の高さ,構造地盤の種類と地震の性質によつて求めうる電子計算機が日本でもつくられ,さらに高性能のものが本年度中につくられようとしている。なおこれは最先端の研究の一つで,世界の地震国が開発を競つているものである。

また,世界でも有数な地震国であり,その研究の進んでいるわが国に最近,地震学や地震工学の勉強のため主として東アジア地域より来日する留学生が多く,国際地震工学研究所が設けられた。このためには国連の特別基金が支出される見通しであつて,研修事業のほか,低開発国の地震危険図,地質図の作成,構造物の耐震化法規の作成等も行なうことになつており,科学技術の国際協力に大きな役割を果している。

地震にともなう津波についても,数多くの災害の経験を生かして,最近,気象庁を中心として,津波警報組織が充実され,国内的にも国際的にも役立つている。昭和35年,三陸地方を襲つたチリ地震津波は,警報組織の上にも大いに教訓を与え,また防止対策として根本的には高潮危険地帯の建築はできるだけさけることが望ましい。


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