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  各論
§18  防災科学技術
I  国土保全と防災科学技術の向上

面積あたりおよび国民所得あたりのわが国の自然災害の頻度および損害額は世界で1,2を争う位大きい。

これは第1にわが国のおかれた特殊な自然条件にもとづく。すなわち,1)東南アジアのモンスーン地帯に位置しているため,台風の来襲頻度がずば抜けて大きい。2)全土を火山帯が縦断しているため,関東大震災以上の浅発大地震の日本周辺における発生回数は,世界第1位である。3)国土の3分の2が壮年期の峻嶮な山岳地帯によつて占められるため,容易に洪水を起す。

第2に,人為的な条件がこれに加わる。すなわち,産業や人口の過度集中,地下水の汲上による地盤地下等の人為的な環境条件の悪化が自然の悪条件に相乗され,災害発生の危険度および災害の規模をいちじるしく拡大している。

「災害の国,日本」これはわれわれが背負つている宿命でもある。その中でも台風は毎年のように来襲し,被害総額は,昭和21年から32年までの12年間で年間平均2,150億円の巨額に達している( 表18-1参照 )。

このことはとりもなおさず,国土の荒廃と災害対策の不備を物語るものであることは否めない。財政の貧困が災害をまねき,その災害がますます財政を悪化させていくといういわゆる災害と貧困との悪循環を一日も早く断ち切り,かつ復旧に要する経費を積極的な面にふり向けていくことはわれわれに課せられた緊急の責務である。

昭和29年以降における災害発生の漸減傾向も狩野川台風,伊勢湾台風,第2室戸台風等の事例によつて破られ,それはーたび外的条件が悪化すれば大災害を招くことを歴然と示した。とくに伊勢湾台風による災害は人口稠密な臨海工業都市の高い災害危険度を証明し,死者,行方不明5,200名,被害額2,700億円を上回ると推定されており,わが国の臨海地域における将来の発展および防災科学技術のあり方に大きな問題を投じた。

表18-1 戦後における水害統計

災害を防止して国土の保全をはかることは新たな資源の開発に劣らぬ重要な意義を持つている。また災害は単に金銭に換算される価値の損失をきたすにとどまらず,貴重な人命を奪い,生計の維持を困難にするなどその影響は広範囲に及び,対策を軽視するならば,長年蓄積した資産を一挙に破壊し,経済発展にともなつて,その被害がますます増大していく。災害対策としては,被害の発生を最小限にくいとめるための国土保全施設が必要であるが,経済成長のテンポに合わせて,産業立地の動向,都市の発達,耕地保全等背後地の状況に対応した事業が実施されるべきである。

災害は日本に負わされている運命,宿命だと古来よりいわれている。台風,地震等のごとく現在の人智を以つてしては抗しきれぬ天災に対してもその被害を最小限にすべきことはもちろんであるが,最近の臨海低地帯における高潮による被害等は低地帯における無計画な都市の発達地下水の過剰汲上げによる地盤沈下等に起因するとも考えられ,人間の力で未然に防ぎえた災害も多々あることに留意すべきである。


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