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  各論
§17  輸送
IV  海上輸送
2.  船舶の傾向



(1) 大型化および専用化の傾向

船舶の大型化の傾向は最近とくにいちじるしく,世界の商船隊の船型別隻数の推移をみると 表17-4 のように6,000総屯以上の船が増加し,屯数が大きくなる程増加率が大きい。戦前の巨船はクイン・エリザベス号(85,000屯)に代表される大西洋航路のみに就航する客船であつたが,航空機の出現により次第に姿を消し,とつて代つたのが,タンカーおよび鉱石専用船である。これらの大型化の傾向は輸送費の軽減という経済的要請によるもので,両専用船について船の重量屯数と輸送費の関係を示したのが 図17-11 図17-12 である。

表17-4 世界船舶の屯階別隻数表

さらに鉱石専用船については 表17-5 のように鉱石の輸送距離が逐年増加するため,輸送費の上昇を防ぐには専用船の大型化によらざるをえない。

タンカーは昭和30年には,その平均船型が14,500重量屯であつたものが,35年には22,800重量屯となつており,すでに10万重量屯級の超大型船も出現している。現在就航中の最大のものは,37年7月佐世保重工業で進水した日章丸(130,050重量トン)である。鉱石専用船についても同様で現在平均船型は約20,000重量トンで,わが国の最大のものは〃あんです丸〃(53,400重量トン),世界最大のものはOreChief(60,457重量トン)である。

図17-11 タンカー船型別運送原価比較

表17-5 鉄鉱石の距離別取得比率

図17-12 鉱石専用船型別運送


(2) 高速化の傾向

雑貨輸送を主とする定期貨物船については,大型化の傾向はそれ程顕著でなく,反面高速化の傾向が強い。これは船舶の運航能率の向上をはかるという目的のほかに,国際間の海運会社の競争により余儀なくされている面が強く,太平洋航路においては,米国がマリナー型(10,000総屯最高24ノツト巡航20ノツト)を就航させるにおよんで,この競争に拍車をかけた。わが国における年次別の計画造船の定期船の高速化傾向を 表17-6 に示す。

表17-6 計画造船の定期船の総数と速度の推移表


(8) 造船技術の進歩

造船技術は大型化,高速化の要請および造船業の合理化を目標として進歩してきた。

船体造船技術としては熔接構造の採用によつて,ブロツク建造方式が確立され,それが造船工数の減少( 図17-13参照 )および造船用鋼材の減少となつて合理化に結びつくと同時に,貨物船における縦肋骨,タンカーにおける波形隔壁の採用等により船体構造の合理化をはかり大型船の建造を可能にした。

主機関の主なものはデイーゼル機関および蒸気タービンである。

図17-13 7,000総屯級中速貨物船1総屯当り工数の推移

デイーゼル機関についてはその進歩はめまざしく,1シリンダー当りの出力は1,800〜2,300馬力に達し,1基で現在まで蒸気タービンの分野であつた25,000馬力級の機関も可能となつた。その発達過程は溶接構造および過給方式の採用による出力の増加にともなう機関重量・容積の減少,低質重油の使用による燃料費の低下等によつて表わされる。 図17-14 にディーゼル機関発達の推移の一例を示す。

図17-14 ジーゼル機関発達の一例

大型デイーゼル機関は外国メーカーとの技術提携によつて大手造船で作られているが,三菱造船K.Kは独自の技術によつてUE機関を開発している。今まで国外の主要な港に修理等をするサービス機関がほとんどないため輸出船には搭載されなかつたが,36年10月同機関搭載の初の輸出船が完成した事の意義は大きい。

蒸気タービンおよびボイラーの技術は戦前戦中を通じて,主として海軍によつて培養されてきたが,戦後欧米の技術ははるかに進み,このためメーカーは著名外国メーカーと技術提携を行ない,追い付くことに懸命に努めてきた。すなわち,蒸気条件は20kg/cm2 350°Cから30kg/cm2・400°Cを経て40kg/cm2・450°Cと高温高圧化し,ボイラーも丸ボイラーから3胴水管ボイラーを経て2胴水管ボイラーに発達し,さらに歯車についても廻転数の増加,歯切精度の向上,歯面荷重の増加等の進歩が見られた。

その他ロータリー機関,ガスタービンおよびフリーピストンガスタービン機関等は欧米諸国では実用化に成功しているが,わが国ではいずれも技術導入によつて開発されつつある段階である。

船舶の関連工業製品(補機)は,まだかなり技術的にも価格的にも国際的にも劣つているので,この方面の技術開発は急を要するものがある。

船体形状についても高速船の新しい船体形状や超大型タンカーの長さを縮めて深さを増加し,重量の節減をはかる等の試みがなされた。とくに注目すべき事は船体の造波機構に関する理論的解析が行なわれ,その結果にもとづき,造波抵抗を減少させるために船首に大型バルブを付けることが考案され,くれない丸による実験によつてそれが実証された事で,今後の飛躍的な進歩が約束されている。

運輸大臣は昭和32年1月造船技術審議会に対し「超大型船建造上の技術的問題点およびその対策」について諮問し,これに対して同審議会は同年3月に主要な問題点について,ついで,構造,建造法,鋼材,運航性能,補機,主機等に関し研究項目,研究体制,費用等の具体的事項について答申を行なつた。これに基づいて研究が進められ,まだ未解決の問題を含んでいるとはいえ,現在までにわが国の大型タンカー受注の立場を強化するのに役立ち,またすでに13万重量屯型油送船の設計,建造が可能となつた。

また34年2月同審議会は「船舶の自動操縦化の技術的問題点ならびにその対策」の諮問を受け,船体,デイーゼル,タービンの3部会に分かれて検討が続けられ翌年2月船舶自動操縦化のための研究開発の方針を示し,これを促進すべき旨の答申がなされ第16次計画造船においては,各種装置を一室に集中した遠隔操縦方式による建造が行なわれている。また36年3月竣工した国鉄宇高連絡船讃岐丸は,2,000屯級では最初のシユナイダー・プロペラの搭載による遠隔操縦方式の採用,V型ディーゼル機関の装備,機関室前部の集中監視制御室など,近代化に画期的な試みがなされた。自動操縦による乗組員数の比較は 表17-7 に示される。

表17-7 乗組員比較表

新しい型式の船としては水中翼船の開発が進み定員17名の船がすでに完成している。

また,ホーバークラフトも研究中である。


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