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  各論
§16  電気通信
II  通信技術の現状
2.  伝送技術

テレビの全国中継を可能にし,市外電話の即時化の要請に応えてきたのはマイクロ波伝送方式および同軸伝送方式の進歩である。

戦前からあつた無装荷ケーブル搬送方式は戦前の6通話路方式から戦後24通話路方式,そして昭和33年60通話路方式へと多重化の方向をたどり市外回線の経済性を高めてきたが,同時に欧米諸国で発達した広帯域多重化に有利な同軸ケーブル方式へと移行した。一方無線による伝送はVHF(超短波,30〜300MC/S)による6通話路方式からFM(周波数変調)12通話路方式,24通話路方式と多重化をたどり,さらにアメリカでその技術開発をみたマイクロ波方式が導入されたのである。そして同軸ケーブル伝送方式およびマイクロ波伝送方式によつて,回線の多重化と広帯域化が急速に発展して今やその技術の最盛期を迎え,トランジスタ等の新しい部品の導入により次の新段階に一歩を踏み出してきている。
(1) 有線伝送技術

市外通話に対する需要が比較的少ない地域間では搬送ケーブルによる多重化が行なわれ,F-24方式,F-60方式またはT12方式,T-12S方式等へと進歩してきている。これらの方式は中間中継所の有人局からの遠方監視制御による無人局と合わせて,あるものは一部,あるものはその全部をトランジスタ化して,電力消費の減少と小形化,障害減少による回線の安定化等,回線の経済性を高めるのに大きな効果を現わしており,次第に高い周波数の中継器に至るまでトランジスタ化が進められている。

しかし,通信需要の増大とテレビ信号伝送の要求は,広帯域にわたつて線路損失が少なく,その高い周波数における漏話特性が良好な同軸ケーブル伝送方式の採用を促進した。まず4MC帯域に960通話路を伝送するCCITTの勧告を満足しているC-4M方式が完成された。つぎに同軸ケーブルをより経済的に利用するため,4MC方式と同じく中継所間隔9kmで,真空管も同一のものを使用して4MC方式では伝送できなかつた残留測帯波(VSB変調)のテレビ伝送を可能にする6MC帯域のC-6M方式が開発された。これは電話伝送にも活用され960通話路の長距離回線の上に420通話路の中距離電話回線を積み重ねることができるもので昭和36年度より商用に供されている。さらに2.6/9.4mm標準同軸ケーブルを使用して,より広帯域多重化が推進され,0.3MCから12MCまでの帯域に電話2,700通話路または電話1,200通話路とテレビ1チヤンネルを伝送するC-12M方式が東京-横浜-靜岡間において昭和37年度より実施される予定となつている。この方式は諸外国でも新しい同軸ケーブル標準方式として検討中のものであり,わが国でも昭和30年頃より研究が進められ,1)ひずみ率,利得特性の均一性,インピーダンス特性等にすぐれた特性を有する長寿命の真空管,2)基本発振周波数の瞬時安定度が1×10-9を維持することが可能な水晶発振器,3)電力消費を減少し給電を容易にするためトランジスタを用いた自動利得制御器などその技術開発がおこなわれたものであつて,ようやく先進諸国のレベルに到達したものといえる。また線路費軽減の目的で細芯同軸ケーブルを採用し,帯域60KC〜1.3MCを用いる300通話路方式は経済的な短中距離伝送用として,研究されており,中継器の活性素子は全面的にトランジスタを使用し,AGC中継器を除く固定中継器はすべてマンホールまたは柱上に設置できる構造としたものが,昭和37年度に神戸―三木間等に設置される予定である。この方式は国際電信電話諮問委員会(CCITT)においても昭和35年頃より検討されており,今後のCCITTの勧告に対しても十分わが国の意見を述べうることとなろう。

搬送装置のトランジスタ化はトランジスタのもつ長寿命,小形軽量,小消費電力等の諸利点を活かして進められてきたが従来使用されてきたゲルマニユームの合金形または成長形のトランジスタでは,高周波高出力となるにしたがつて製造が難かしくなる欠点があつた。

しかしシリコンメサ形トランジスタの出現により従来トランジスタの欠点とされた周波数帯域幅,出力レベルに対する制限が克服され,同軸機器のトランジスタ化に大きな発展を期待しうるよう,になつた。

国際通信量の増大に対処して,世界的に大陸間通信用に海底同軸ケーブル方式が採用されている。わが国でも昭和39年を目標に日本とハワイ間に海底同軸ケーブルが布設される予定である。この方式は同軸ケーブルの中心導体に逆撚された2本の鋼索を入れて張力をほとんどこの鋼索でもたせた軽量ケーブルI条を用いて,100KCから1,100KC帯域に128通話路をとる方式で,20カイリ毎に両方向中継器をケーブルに埋設して,その中継器への電力はケーブル芯線を通して送るようになつている。
(2) 無線伝送技術

同軸ケーブル伝送方式とならんでマイクロ波伝送方式は,昭和29年東京-大阪間4,000MC帯にテレビ中継回線1回線および電話36回線を収容して実施されて以来,中間中継局の無人化のための遠隔制御方式,無停電電源方式等が採用され,また中継器の進行波管1本を局発増巾に共用しAFCを必要としないわが国独自の方式を開発してきたが,さらに周期磁界形の永久磁石を内蔵する進行波管の開発により装置の小形化と取扱保守の便を増し,その回線収容量もテレビ1回線又は電話960通話路を可能とするSF-B4方式へと進歩してきた。さらにより広帯域多重化への発展は6,000MC帯に1,200通話路を収容するSF-U1方式の開発となり,昭和36年度東京大阪間で試験的に使用された,この方式は遅延等化器の使用により1,800通話路まで伝送可能と見込まれており,昭和39年度末を目標に東京-名古屋-大阪間に従来のルートとは別に新たにSF-U1方式による新ルートの建設が始められることになつている。従来のマイクロ波方式は,中継器で受信波を中間周波に変換して増巾するヘテロダイン中継を行なつていたが,受信波を直接増巾するSF-S1方式の実用化が,2,400通話路の超多重化を目ざして進められており,昭和38年頃から登場する予定である。これによりマイクロ波伝送方式は,市外回線の経済性を高めるのに一段と寄与することとなろう。このほか,小容量の中距離区間で使用される2GC方式(GCはギガサイクルで103メガサイクルに当る)や短距離区間用の11GC方式等が経済的な回線の構成に寄与している。また非公衆通信用としての鉄道,電力等の専用通信にもマイクロ方式は盛んに利用されている。

わが国のマイクロ波伝送技術は,導入技術によつて出発したが,非常に短期間の間に上記のごとく幾多の新技術の開発を行なつたことは世界的に高く評価されうることである。すなわち,多重化については,わが国の6,000MC帯1,200通話路方式は米国のTH方式の6,OOOMC帯1,800通話路につぐもので,欧州諸国の4,000MC帯960通話路方式をしのぎ,2,400通話路収容の直接中継方式が完成すれば,世界の最高水準となる。またその開発周波数帯も2GCから13GCまでにおよんでいるが,米国以外の諸国はまだ10GC帯以下である。

鹿児島奄美大島間340KMを無中継で伝送する見通し外通信方式が昭和36年8月に開始された。さしあたり24通話路を収容し,使用周波数は2,000MCのUHF帯で25m×16mの大口径アンテナを使用し,高感度受信方式が用いられている。


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