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  各論
§15  建設技術
II  建設技術の発展の動向
1.  計画・設計の合理化

産業立地上の要因や,人口分散密度等に対する考慮から従来の都市計画をさらに拡大した広域都市計画樹立の努力がなされるようになつた。また,それらの計画の一環となる個々の建設工事においては,科学的な調査技術,模型または現場実験による合理的な設計が行なわれるようになつた。電子計算機の発達によつて,従来,人力に頼つていた構造計算や尨大な資料の処理が迅速にできるようになり,計画・設計の面における合理化は,めざましいものがある。
(1) 科学的な計画樹立の努力

(a)地域計画または広域都市圏の開発計画

大都市周辺や,地方の工業都市では,産業の開発や人口の集中により,建設活動がきわめて旺盛であり,住宅用地や工業用地などの造成が活発に行なわれている。市街地はその周辺地域に膨張しまたそれによつて市民の生活圏も拡大してきている。

この都市圏の拡大は,都市周辺を含め,また都市群を合わせた広域の都市計画の樹立を要請している。

この広域都市圏の決定方法や,産業分配計画を前提とする工業用地や住宅用地等の土地利用計画あるいは,道路,港湾,鉄道等の諸施設の整備計画等に指標を与える計画基準についての研究が進められている。

(b)市街地の高度利用形態と容積地域制

市街地への人口と機能の集中,地価の上昇や土地の不足にともなつて,市街地内の建築物は大規模化し,高層化する傾向がみられる。しかし,従来のままの計画規制方式では,建築密度が過大となり,発生自動車数が増大し,市街地の環境や機能が低下するおそれがある。

最近の都市の体質改善の観点からも,各都市の中心部において市街地改造や再開発事業が行なわれる機運にあるが,この場合の市街地の将来の適切な形態を提示し,合理的な土地利用を目的とする容積地域制を確立するため,市街地の街区の適正規模,周辺の道路巾,必要駐車施設の規模,街区内の建築容積,建築形態などについての研究が進められている。

(c)道路計画等

道路の計画・設計においては,道路交通の現状を把握し,経済の成長との関連を調査して,将来の交通需要に応じることができ,しかも走行しやすく効率のよい道路をつくるよう計画・設計する必要がある。このような目的を持つ交通経済の研究および,いわゆる交通工学的手法の面でも大きな進歩がみられる。すなわち,諸産業の成長と,それにともなう交通費の増加を,産業連関表を採用して推測したり,道路利用者のうる便益を最大ならしめる計画や,道路投資の経済的効果を最大ならしめるための着工優先順位の解明等について尨大な資料を電子計算機によつて解析し,科学的な計画を樹立するための努力が進められている。他方では,交通量の常時観測網を日本全国に拡大し,それを機械化する計画が進められている。
(2) 新らしい調査技術

さきにのべた都市計画の策定や,個々の工事の設計にあたつては,十分な調査がまず行なわれなければならない。そのため,各種の調査技術が駆使されている。

(a)空中写真を利用する測量調査

戦後,開発されたきわめて高性能の空中写真機と精度を増した各種の図化機のおかげで,地図の縮尺の大小を問わず,鉄道や道路等を測定する地形測量は,空中写真を抜きにしては考えられないまでになつている。

最近は,これまで精度的に不可能視されていた1,000分の1あるいは500分の1という大縮尺の測量にまで応用される傾向にある。そのため,偏位修正機などには,すでに部分的に電子管機構が利用されてきたが,最近では,ネガフィルムの明暗の調子を最善の状態で再現するために,ブラウン管を利用する自動焼付器が実用化されており,空中写真の傾きや土地の起伏によつて生ずる各種のゆがみの補正用にも電子管装置が利用され始めている。また,電子計算機による解析三角測量が実用化の段階にきており,道路設計のための土量計算までできる研究がすすめられている。

災害調査,ダム等の土地利用調査,林相や地質地形の調査など,いろいろな分野の調査資料として空中写真の価値は増大している。

(b)アイソトープ利用による調査

海浜を形成する砂礫は,波の作用により移動して海岸の浸蝕,堆積をもたらす。この現象は,港湾,航路,河口の維持,海岸防護などに関して重要な問題となつている。この海岸砂礫の移動について新しい調査技術として,漂砂と同じ粒径,粒度分布,比重をもつた物質を海中に投入してその移動を調査する方法が採用されているが,この物質として,最近アイソトープが使用されるようになり,苫小牧附近等において実施されている。

そのほか,アイソトープを利用して,地下水の追跡,鉄筋コンクリート中の鉄筋の腐蝕調査,地質調査,グラウトの効果測定,洪水時の河川洗掘の測定,道路,路盤の自然転圧効果の測定,地すべり地帯の調査など多方面に利用されるようになつている。

(c)地質調査およびその他の調査技術

ここ2,3年来,本州-四国連絡橋の計画にともない,今まであまり行なわれなかつた海底の地質調査が実施され,新しい調査技術が導入された。1)ボーリング孔を利用する地質,岩質の精密調査技術の開発,2)潜水球の利用,3)海底油田,海底炭田の調査技術の土木地質調査への応用などがあげられる。

ダム地質の分野では,とくに岩盤の性質をくわしく知る努力がなされており,電気検層,密度検層,弾性波伝播速度測定などによるグラウト効果の判定方法が研究されている。
(3) 模型実験および現場実験

工事の設計・施工においては,十分な調査とあいまつて,模型実験や現場実験が重視される。

(a)大規模な吊橋の模型実験

吊橋の耐風安定性については,理論的ならびに実験的研究が行なわれてきたが,その模型による風洞実験は,既設の航空機風洞を利用していた。

最近,本州-四国連絡橋の計画が検討されるようになり,吹出口寸法,巾8.0メートル,高さ1.2メートルの吊橋専門を設備した造船会社があらわれ,3次元の風洞模型実験に新らしい武器を提供している。

従来,土木関係者によつて取り扱われてきたこの分野に航空工学関係者が加わり,空気力学的見地から再検討が始められている。

(b)河川およびダムの模型実験

河川の工事設計においては,土砂の流送機構や,局部的な洗掘の問題が検討されなければならない。土砂の流送機構の問題とは,滞流土砂が運搬されるときには一様に流されるのではなく,砂連や砂帯の形態をとるが,その規模や形態などが流量や流速によつてどのように変わるかという問題である。局部的洗掘とは,河川構造物の周辺や,河道が彎曲したり,断面が急に変化している場所で起るもので,河道に生ずる渦やらせん流などの2次的な流れが原因となつている。したがつて,河川の流送機構や局部的洗掘を調べるには,それと同じような水路での流れや,その2次流によつて土砂がどのように動かされるかを調べなければならない。このため,模型実験が威力を発揮し,計画を決定している。

また,ダムの設計に際しては,予備段階での小型模型(1/1,500〜1/1,300)を石膏と珪藻土の混合物を用いてつくり,形状を修正しながら,多くのタイプについて検討し,ついで縮尺1/100〜1/80の大型模型を石膏と珪藻土の混合物または軽石コンクリート等によりつくり,最終形状に対する検討を行なう方法が採用されている。ダムの放水設備等の,高圧水理構造物の設計においても,入念な模型実験が実施されている。
(4) 電子計算機の利用

電子計算機の発達によつて,今まで手のつけられなかつたような因子分析や資料の処理が可能となつた。

(a)水文観測資料の処理等への利用

近来とみに関心のたかまつた水資源の問題に関連して,水文観測資料の整備が要請され,そのため,近年いちじるしく発達した資料処理機械が導入され,活躍している。

洪水の流量計算においては,流量が絶えず変化する不定流なので,これまで解析的に処理することが困難であつたが,最近数値計算にデジタル型電子計算機を非常に有効に使用することができるようになり,さらに,アナログ型電子計算機も利用されて計算労働をはぶき,精度の向上が可能になつた。また,多目的ダムが近年多数開発されているが,洪水調節のための余水吐の自動操作の面の研究がすすめられ,球磨川水系の市房ダムは電子計算機と余水吐ゲートの連動操作が実施された。

(b)構造計算等への利用

最近の大型アーチダムの設計応力は,従来のアーチダムよりはるかに大きく,設計もいろいろな形状に対して細部にわたり検討する必要が生じている。

アーチ片持梁法による計算過程については,ダム形状,提体および各標高の岩盤弾性係数,各種荷重などの初期条件を与えるだけで構造計算が可能となり,さらに高度の計算に対するプログラムの開発が行なわれている。また円弧スベリ,立体ラーメン等,計算に長時間を要するもののプログラムの開発も進んでいる。


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