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  各論
§14  コンビナート
II  コンビナートの諸形態
2.  化学コンビナート



(1) コンビナート形成の要因

本来化学工業は,コンビナートを形成しやすい性格を持つており,コンビナートといえばすぐに化学コンビナートが頭に浮かぶ程である。コンビナート化がなぜ必然性を持つているかを初めに考察してみよう。
(a) 多角化

化学工業では,原料から最終製品に至るまで多数の製造工程を経るが,その各工程においては,中間製品とともに各種の副産物を発生する。この副産物の種類は,一つの最終製品の製造について,相当多くなる。そして化学工業では,この副産物を一つの製品として売るか,または別の生産系列に補助原料として投入するか,あるいはその副産物を原料としてその上に新たな生産系列を発展させて新らたな製品を産出するようになる。このような多角化が化学工業の大きな経営上の特黴であり,その多角化も,新たな生産系列において多種副産物が産出されるのでさらに広く展開する可能性をもつている。そしてその技術の進歩によつて生産の屑物・廃物が副産物として利用,されるに至り,副産物が次第に重要性を増して,主産物と副産物の区別が明らかでなくなる。化学工業は,原料および生産物の技術的関連において多種の生産を含み,主として生産工程の技術的連関を基礎とする垂直的,水平的,多角的,総合的な総合(コンビナート)がとくに多い。

図14-2 は,戦後新たに登場した石油化学工業の石油化学と主要関連産業との関係を示したものである。ナフサ分解の際に発生するオレフインの量は,分解方式によつて常に一定の比率で取出される。したがつて石油化学工業では,ナフサ分解により発生する各種オレフインを総合的に利用することが経済的に必要である。またナフサを中心に放射状にナフサからオレフイン,オレフインから誘導品と一連の縦の系列が数多くあるほかに,その縦の系列相互間に横の関連が生じてくる。たとえばスチレンモノマは,エチレンと芳香族のベンゾールの化合物であるエチルベンゼンから生産され,これは結合して合成ゴムの一種であるSBRを創り出す。アルキルベンゾール(合成洗剤の原料)も,ブロピレンの重合体とベンゾールより生産される。ポリエステル繊維はエチレングリコール(エチレンを原料とする)とパラキシロール(芳香族のキシロールの一種)から生産されるテレフタール酸の結合物である。このように,縦横に網の目のような連関のある生産工程を内包しているので,多くの工場が緊密な結合関係を持たざるをえないのである。 表14-1 は,ナフサを熱分解してえられる石油化学基礎製品の百分率を示しているが,エチレンのみを利用した場合と,エチレン,ブロピレンおよび分解油を有効利用した場合とではエチレンの原価はkg当り約20円の差を生ずる。これでわかるように,総合利用を考慮した生産体系が経済的に必要である。

図14-2 石油化学と関連産業

表14-1 ナフサの熱分解による石油化学基礎製品の収率


(b) 大量生産

化学工業は代表的な装置工業であり,資本集約的産業であるから,固定費ないし資本費が大きいため生産規模が大きい程有利である。したがつて,生産単位は拡大する傾向にある。

表14-2 生産規模Q工場原価におよぼす影響

エチレンを例にとると( 表14-2参照 )40,000トンプラントの工場原価は,20,000トンプラントの工場原価の約70%に過ぎない。国際的な競争力を考慮すれば,さらに大型となりぼう大な設備投資を必要とする。

このような投資規模になると,資本蓄積の貧弱な戦後の企業では単独でよくなしうるところではない。それで個々の部門を専門化し,それぞれを別個の企業が担当し,相互に結合して,工業技術的に一つの生産体系を形成するようになる。
(c) 技術の進歩

化学工業の多角化,大量処理は,その生産体系を非常に大きくしているが,技術の進歩は,さらにそれを拡大する傾向をもつている。また技術の進歩は,原料加工の面でも革命をもたらし,新規な工業を創りだす(たとえば石油精製の廃ガスから合成繊維,合成ゴムができるようになつた)。化学会社は,常に技術の進歩に追いついてゆく必要に迫られているが,その技術の進歩はプラントの近代化,大型化という点でますます大規模な設備投資を必要とする。技術の進歩はコンビナート形成の大きな要因である。

以上が化学工業において,コンビナート形成を促がす要因と考えられる。つぎに代表的なコンビナートである石油化学コンビナートをあげてみよう。
(2) 川崎地区石油化学コンビナートの場合

図14-3 は川崎地区の日本石油化学を中心とするコンビナートを形成する各社とその技術的関係を示している。このコンビナートは,構成会社が技術的な関連を通じて有機的に結合し,一つのまとまつた生産体系をなしている。コンビナート形成が,このコンビナートの構成メンバーにとつて有利な条件であるというよりも,むしろ不可欠の条件となつている。そして,各企業は相互に資本的なつながりがなく,日石化学を中心に原料の授受のみを目的として結合している。コンビナート形成の主因は,ナフサ分解部門を大規模かつ多角的にした方が有利であるから,2次製品部門も大規模,多角的になることが必要であり,そのような生産体系の建設には1社の資金負担力の限界を越える大規模の設備資金額となるので,その投資を各社が分担して生産体系を作りあげたからである。このコンビナートでは技術的な合理性が貫かれているが,経営の面では問題を残している。すなわち,多角的生産体系の各部門の経営にあたる資本は,相互にほとんど独立しているので,資本が一つにまとまつているか,または複数であつてみてもその間に密接な賂力がある場合にくらべて,完全な運営計画を樹立するのにかなりの努力が必要とされる。さらにつぎのような問題点がある。1)不況時や故障のある時に好況部門の増産などで収益低下を防止したり,非常に好況な部門がある時にその部門を積極的に強化して収益の向上をはかるという機動的運営が困難である。2)グルーブの総利潤がナフサ分解部門か,最終製品部門に偏在する可能性がある。たとえばオレフインガスの価格に相当の利益を取れば,総利潤は日石化学側により多く配分され,逆の場合には総利潤は最終製品側により多く分配される。この問題は,利潤の共同計算まで行なわなければ解決できない。したがつて多角経営の効果を十分発揮するには,構成企業の資本関係の緊密化等によつて,コンビナート全体の総合的な運営体制を確立することが前提条件となる。

図14-3 川崎地区石油化学コンビナート

石油化学コンビナートは,このほかに,四日市地区,岩国,大竹地区,新居浜地区などに形成されており,さらに,建設計画中のものとして,川崎地区(前掲と別系統),千葉地区,堺地区,徳山地区などがある。

これらの中には,形成各社が同一系統の資本のものや,株式の持合をしているものなどが目立つている。


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