ここからサイトの主なメニューです
前(節)へ  次(節)へ
  各論
§13  エネルギー
III  石炭
2.  生産性向上を可能とした技術進歩


図13-9 面長別長壁式出炭比率

採炭,掘進,坑道維持,運搬,選炭の各工程別に最近5年間の進歩を概観する。

(1)採炭…… 図13-9 が示すごとく,切羽集約の進行を反映して,面長150m以上の超大型切羽の伸びが顕著である。(昭和30年3月の8切羽,長壁式出炭の2.8%に対し,昭和36年3月には68切羽,18.7%)100m以上を取れば,すでに長壁式出炭の49%を占めている。これらの大型切羽には,保炭と積込を同時に行なうホーベル,ドラムカツタ,ストリツピング,スクレーパー等の連続採炭機が活発に導入され,威力を発揮している。昭和36年3月現在,連統採炭機導入切羽は,61切羽,全出炭の10%に達し,切羽能率は,3.94トン/日/人,薄層用に主として使用している中小(平均山丈67cm)を除けば4.24トンで,平均を25%上回つている。ホーベルは,昭和31年の1号機導入を皮切りに,36年3月末には,24台が稼動している。 表13-3 で日本と西独のホーベル切羽の成績を比較すると,原炭切羽能率では,西独9.30トンに対し,日本8.07トンとかなりの程度まで使いこなせるようになつてきている。

またドラムカツター切羽は,37年度内に8切羽が予定されダブルドラムカツターの出現もあつてホーベルでは稼行困難な硬い炭層や厚層用として,今後かなり普及することが予定される。

連結採炭機を使用すれば,炭壁の切削速度が従来の1m/分程度から2〜3m/分と大巾にスピードアツプされ,鉄柱カツペの操作の急速化をはからねばならなくなる。 表13-4 によるように,ホーベル切羽では,支保関係の工数割合がいちじるしく増加する。したがつて,抜柱,立柱操作の急速な水圧支保,さらには前柱,後柱およびカツぺが一体となつて移動する水圧自走支保の採用が,能率向上の決め手となつてくる。

表13-3 日本・西独ホーベル切羽成績

水圧支保は,英国のダウテイ型と西独のフエロマテイツク型が,技術提携した国内メーカーによつて製作され,試用段階からそろそろ本格的に使用される段階にさしかかつている。連続採炭機や水圧鉄柱の導入による経済効果を 図13-10 に示す。

新しい採炭機械としては,イギリスで開発されたトレバナーが注目されている。

表13-4 採炭作業工数配分

大口径ボーリング機械を横にしたようなもので,炭層を円筒状にくり抜き,さらに内側の刃で削り落して,コンベアに自動的に積込む。本体上部に取り付けた小さいカツタが天井をきれいに切取つて行くので,これが通過した後,コンベアと水圧自走支保を直ちに移動させることができる。イギリスでは,昭和31年頃から使用され始め,昭和34年には100台を越え,非常なスピードで伸びている。最も成績のよい切羽では,切羽能率15〜20トンをあげており,日本でも昭和35年から北海道の炭鉱で使用されている。

図13-10 連続採炭機および水圧鉄柱導入による採炭切羽における経済効果

(2)掘進……完全機械化によつて,切羽進行を早めようとすれば,掘進速度もこれに応じて早めねばならない。また立坑方式の新鉱開発の場合には立坑掘下,水平坑道掘進の能率如何が,資本の懐妊期間,ひいては経済性を大きく左右する。岩石坑道掘進に対しては硬い岩石を機械的に掘さくする有効な掘進機械がまだ現われていないので,積込機械の使用が能率向上の有力な武器となる。岩石掘進の機械化率(機械積込の比率)は,昭和31年度の9.3%から33年度15.7%,35年度26.5%と順調に伸びてきたが,100%近い西ドイツ,フランスにはまだ遠くおよばない。機械積による掘進能率は,昭和31年3月の2.02m3から31年3月2.54m3と毎年着実に5%程度上昇している。フランスでは,昭和25年の1.90m3 から31年の4.70m3と2.5倍に飛躍している。

使用する機械は,日本でも普通に使われているロツカーショベルであるが,サイクルの作業の配分が非常に合理的に行なわれ,ほとんど遊び時間がなく,各作業間の連絡がうまくいつている。

月間掘進長の日本最高記録は,北海道赤平炭鉱が昭和34年に出した242mであるが,世界的には1,000mを越えるものがある。中共の実績は,昭和32年頃には日本と大差なかつたが,その後毎月のように記録を更新し,現在では500mを越えるものも出ている。記録的成績をあげた事例を徹底的に分析し,これを自分の所で応用するという技術交流の効果が大きい。

沿層や一部の軟い岩石に対しては,刃で削り取り積込む連続掘進機械が登場している。昭和32〜33年に太平洋炭鉱に導入されたコンテイニアス・マイナー,ドスコ・マイナーもこの一種といえる。ソ連では,PKシリーズの全断面掘さく機械を用いて,月間1,670mの好記録を出している。水力掘進では,もう一まわり大きく,2本坑道で月間2,328m,1日200mの記録を中共が保持している。

竪坑掘下については,現在日本では,月間60m台が最高であるが,昭和34年4月樹立されたソ連の264.6mを最高として,西欧では,日本の倍位,中共でも160mの記録を生んでいる。適切な積込装置によつて,スムースなサイクル作業を行なうことが能率向上の鍵である。

(3)坑道維持……精炭100トン当りの坑道維持工数は,昭和33年12月の16.6から昭和36年6月の12.3へと,2/3になつているが,昭和35年の西ドイツの6.4にくらべれば,まだ2倍近くも要している(表13-1参照),1,000トン当りの維持坑道長が,西ドイツの2.3倍ときわめて長い上に,坑道鉄化率でも遅れていることが原因である。坑道鉄化率は,昭和36年3月現在34.6%であり,フランスの73.9%(昭和34年),ザールの81.2(昭和32年)とは大部へだたりがある。

鋼枠の種類は,日本では,86%まで剛性枠であるが,フランスではTHアーチ(トーサンハインツマン枠,2枚のU形鋼を合せ,それを滑らせて可縮性を与えている)が普及し,34年には,60.3%に達し,維持工数の減少に役立つている。日本の場合,坑内構造の単純化によつて,維持坑道長を縮小することが先決問題であり,昭和38年までにフランス並に持つて行く計画である。

(4)運搬……100トン当り坑内運搬工数は,昭和33年12月の15.6%から,昭和36年6月には12.8と,西ドイツの10.3(昭和35)年に大分接近してきた。さらに工数を減少させるには,ロコと立坑巻との組合せやベルト斜坑を中心とするベルト体系の実現が主役となる。

本格的な立坑システムを採用すれば,立坑1本で100万トン位の巻上能力が必要となる。500m以上の深度から,大量の石炭を運搬するための安全確実で,経済的な巻上機として多索式全自動運転巻上機がG.H.H.から輸入され昭和35年に住友鉱業奔別立坑に設置された。坑内のチップラから坑外の石炭排出まで全自動運転が可能である。1回の巻上量を12トン,巻上深度1,000m,ロープ速度12m/秒の時,ロープ直径は単索式77cm,2索式56cm,4索式40cmと,多索式ではロープ直径を大巾に縮小できるためドラム,ヘツドシーブ等の小型化により,設備費が安くなり1本切れても他のロープで支えるから保安上も有利である。

大容量ベルト斜坑用として,ケーブルベルトコンベアが,昭和34年から大島,山陽無煙両炭鉱に,英国から輸入された。1セツト2,000〜3,000m(傾斜15°),8,000m(水平)まで可能なので,1セット1,OOOm位のコース巻の代りに使用すれば2,3段の運搬段数が一段ですむことになり,当面の斜坑運搬改善法として有効である。このほかに,設備費が安い,ベルトの寿命が長い,維持費,動力費が安い等の利点をそなえている。ケーブルベルト社と技術提携したA社により現在国産されている。

(5)選炭……わが国の選炭方式は,粉炭と塊原炭とを一緒にジグで処理する混粒選炭方式が,35年度水選精炭量の79%となお王座を占めているが,最近新設される大手選炭工場をみると選炭方式の注目すべき転換が起つている。すなわち,重液選炭機と細粉専用ベツドジグあるいは重液サイクロンとを組合せた整粒選炭方式の採用である。昭和35,36の両年度に新設された大手の6選炭工場はすべて本方式を採用しており,既設工場と合わせるとすでに10以上となつて・る。しかも,前記6工場では重選機のユニツト能力が,200t/hを越え,すこぶる大型化し,中央制御室による自動化遠隔制御方式が取り入れられ,能力数百t/hの工場が僅か数人の手で操業されている。西欧では,整粒選炭方式が主流であり,数年前より重選全盛時代を迎えている。フランスをみると,昭和33年には,+10mm塊炭処理に対してはPIC社のドルーボイ型を中心に重選機が53%と,ジグの38%を凌駕し,-10mmではフエルスパジグ(細粉専用ベツドジグ)が74%を占めるに至つている。日本も漸く重選時代に足を踏み入れたといえよう。

炭層条件の悪化と機械化採炭の進展にともなつて,原炭品位の低下,粉および湿分の増加とますます悪化する選炭条件を克服するために,混粒選炭方式にくらべはるかに選別精度の高い重選を主体とする整粒選炭方式が主体となつてきたわけである。このためには,従来ネツクとなつていた重液比重の不安定と重液剤の低い回収率の改善にまたねばならなかつた。この改善に大きな役割を果したものとして,1)重液自動調節装置の完成2)ふるい分効率の高い振動スクリーンの発達による微粉炭の除去3)非常に細い重液メジウムの経済的な回収脱水装置である弧状スクリーンの発明があげられる。

わが国で最近設置されているドルーボイ型テスカ型等の重選機,細粉ジグはいずれも技術提携した国内メーカーの製品であり,重液サイクロンについては,国産技術で開発されたものである。


前(節)へ  次(節)へ

ページの先頭へ   文部科学省ホームページのトップへ