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  各論
§13  エネルギー
II  電力
2.  発送電技術の進歩


図13-6 電気事業用火力発電所の熱効率の推移


(1) 火力発電所

火力発電の経済性を高める最も重要な要素は,蒸気条件の上昇とユニツト容量の増大である。この10年間の進歩は, 図13-6 にみるごとくいちじるしいが,その飛躍の時期を次の3段階に区分できる。第1段階は,昭和28年におけるユニツト容量6.6〜7.5万kW,気圧88〜102kg/cm2,気温510〜538°C,設計熱効率30.5〜32.6%の採用(三重,多奈川,苅田各1),第2段階は,30〜31年における15.6〜17.5万kw,169kg/cm2,566/538°C,38.8〜39.5%の採用(大阪I,干葉II),第3段階は,35年暮〜36年5月における32.5〜37.5万kW,169kglcm2,566/538〜566/566°C,38.4〜40.27%の採用(姫路第二,尾鷲,知多各I,横須賀II)である。各段階では,いずれも米国のG.E社およびウエスチングハウス社からの設備輸入により始まつているが,両者と技術提携を行なつている国内メーカーにより,1,2年で同型機が国産化されている。現在26,5万kWの設備まで国産可能となり,22万kWのタービンが運転中,26.5万kWが建設中である。

このような高能率大容量化の実現には,ボイラのドラム,過熱器,タービン翼等に用いられている耐熱合金の進歩,イオン交換樹脂膜の利用による高純度ボイラ用水の製造とならんで,次の技術の果す役割が大きい。

(a)発電機の最終段長翼:最終段翼を長くし,環帯面積を大きくする程,タービン翼列中を次第に膨張し,いちじるしく大きな蒸気容積となつて最終段に到達した蒸気量を有効に通過させ,排気損失を小さくすることができ,タービン全長の減少,効率の向上が可能となる。現在60サイクル系(3,600rpm)では,翼長26チインのものが運転中,米国では29インチを製作中である。
(b)発電機の水素冷却:空気とくらべて水素は熱伝導率がよく,軽いから流体力学的損失がずつと小さくなり,冷却効果があがるために,発電機効率および容量の増大が可能になる。容量増大とともに内部冷却方式が開発され,水素圧60PSig,冷却媒体として油または水を用いた方式が採用されている。
(c)クロスコンパウンド型タービン:従来の1軸のタンデムコンパウンド型より,長さを非常に短縮でき大容量機の製作が容易になる(横須賀I,26.5万kWで初めて採用,昭和35年10月運転開始)
(d)蒸気再熱方式:タービンから蒸気をとり出し,ボイラに戻し,再熱して再びタービンに入れる方式で,最初の蒸気条件をあげなくても熱効率が向上する(苅田I,7.5万kwで初めて採用,昭和31年3月運転開始)
(e)強制循環方式および強制貫流方式ボイラ:蒸気が高温高圧化するにしたがい水管内の循環が次第に困難となるので,循環ポンプにより強制的に循環させるのが前者,給水をポンプで水管の一端から押し込み,循環させずに水管中を貫流させ他端から蒸気として取り出すのが後者である。強制貫流ボイラは,蒸気温度の調整範囲が広く,軽負荷時の熱効率も良好等多くの利点を持つ。今後の蒸気条件向上は,圧力上昇に向けられ,臨界圧力225.5kg/cm2を超えることが技術的課題となつている。この場合には,蒸気は水と同一比重となり,水はそのまま液体状の蒸気に変り,強制貫流ボイラでなければ使えなくなる。しかし,この場合,負荷変動に応じて蒸気発生量を調節しなければ効率が低下することになるので制御条件がきびしくなり,解決すべき問題点が残されている。米国では,超臨界圧発電所がすでに数箇所稼動しており,運転,保守,修理の面で経験を重ねている。わが国でも五井ほか数発電所で亜臨界圧ながら強制貫流ボイラーの採用を決定した意義は大きい。

(2) 水力発電技術

有利な発電地点が減少し,次第に奥地化して工事の困難が増加したにかかわらず,多数の大ダムが築造された。ダムの築造技術進歩によつて,ダム地点の地質,地形等の条件を考慮した上で,在来のコンクリート重力ダムに比較して,大巾にコンクリート材の節減と工期の短縮を可能とする各種の特殊ダムが建設されたことが目立つている。すなわち,アーチダム,中空重力ダム,ロツクフイルムダムでは,36年末までに完成したもの各8,4,2,工事中のもの各11,3,2となつている。なかでもアーチダムの黒部川第四(37年11月完成予定,高さ186n),ロツクフイルダムの御母衣(36年5月,131m)は,各ダム型式においては世界屈指のもので,ダム地点の岩盤調査,ダム設計,グラウト工法等広い範囲にわたる技術導入と外国製大型建設機械の使用等,外国技術に依存する所が大きかつたとはいえ,建設中に蓄積された技術的経験は,今後のダム建設に威力を発揮するであろう。

発電用機器の面では,立軸フランシス型可逆ポンプ水車,可動羽根ランナを持つた斜流ポンプの水車(デリア型)の発展を第1にあげねばならない。いずれも揚水式発電所の経済性を左右する鍵となる技術である。前者では,H社が開発した国産技術による設備が大森川発電所(揚程128〜92m,ポンプ最大揚水量13m3/秒,水車容量12,200kW)で34年8月に運転開始し,45,000kWの大容量機が製作中である。後者は数社が外国技術を導入してあり,S社とM社が共同で容量5万kwのデリア型水車を製作中である。揚水式発電所には,1)水車発電機と別個に,揚水用のポンプ,電動機を設ける別置型,2)ポンプ,水車,発電機を同軸上に設け,揚水時には発電機を電動機として使う直結型,3)ポンプと水車の両用機(ポンプ水車)と発電機よりなり,揚水時には発電機を逆転して電動機として使用する兼用の3型式がある。揚水式発電の普及には,設備費の最も安い兼用型の発達に期待するところが大きいが,効率の点から適用可能な落差がまだ比較的限定されている。しかし技術進歩により逐年その範囲を拡げ200〜250m程度までは採用される段階になつている。斜流ポンプ水車は,32年にカナダに建設されたものを嚆矢とするが,変落差特性がすぐれているので,貯水量が少なく,落差が急激に変化する日調整方式用として注目されている。

つぎに,チユーブラータービン技術の導入が,従来経済性が劣るとして余り開発されなかつた落差10〜20mの低落差開発の経済性を改善するものとして期待される。現在運転中3,000kW程度,計画中5,000kWであるが,とくに常願寺川第2〜第4は有効落差15.1m,かんがい用水路を共用して建設され,経済性の点から注目されている。
(3) 送配電技術

送電技術の進歩としては,第1に多導体方式高圧送電線の採用があげられる。この方式はテレビ等への誘導障害を防止し,超高圧送電を可能にした点で画期的なものであり,昭和32年度に東京電力西東京幹線で複導体方式が採用されたのを嚆矢とし,昭和35年度には東京電力東京西線に4導体体方式が採用されている。

第2は,OFケーブルの採用である。大都市では,用地難から架空送配電線用の土地調達が困難になつてきており,送配電送のケーブル化を迫られているが,OFケーブルは,従来のケーブルにくらべて絶縁レベルが格段に高く,超高圧線のケーブル化を可能にした。昭和33年度の15.4万Vケーブルから昭和35年度には27.5万Vケーブルまで出現している。

つぎに配電技術としては,都心部の負荷密集分布地帯の一部で採用された低圧ネツトワーク方式(昭和33年7月,関西電力)が特筆される。配電ロスを減少させ,事故の際にも停電区間を非常に狭い範囲に抑えることができる。また修理用の絶縁工具の発達によつて,超高圧送電線までも活線作業(通電したまま修理する)ができるようになり,保守技術が向上したことも停電防止に貢献している。


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